INTERPRETATION

ネイティブライクな英語力を身に付けるには?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

通訳と言う仕事柄、毎日のようにいろいろな人と会います。日本人はもちろんのこと、いろいろな国の方とお話をする中で、前々から疑問に思っていることがありました。

通訳を始めてからヨーロッパの人と接することが多くなり、彼らの英語を聞いていると“なぜヨーロッパ人はネィティブレベルで英語を運用できるのに、日本人にそこまでいける人が少ないのか?”と感じたことがたびたびありました。

もちろんヨーロッパ人全員がネィティブレベルというわけではありません。本人は英語を話しているつもりでも、ところどころフランス語やドイツ語、スペイン語に変わっていることもよくあります。ただできる人は確かにネィティブのように英語を使いこなします。日本人でもネィティブレベルの英語を話せる人がいますが、ほとんどの場合、子供の頃に海外で生活したいわゆる帰国子女です。

日本人とヨーロッパ人とのこの差は何でしょうか?英語とヨーロッパ言語との類似性も大きな要因でしょうし、日常的に英語に接する環境や義務教育での英語教育の違いもあるでしょう。でもそれだけではないように思います。ヨーロッパ人と仕事をすると、彼らは、英語は勉強するものではなく、ツールとして使いこなすものと見ていると強く感じます。例えば、日本人が英字新聞を買って読む場合、ほとんどの人が英語力をつけるためという“学習”目的で、ヨーロッパ人は“情報収集”目的で英字新聞を捉えているように思います。海外の仕事でホテルが一緒になったヨーロッパ人のクライアントと日本人のクライアントを比較すると、ヨーロッパ人のクライアントは、ほとんどの場合、ホテルが用意した英字新聞を朝食時に読み、仕入れた情報について食事をしながら又はその日の会議の中で話をします。それに対して日本人のクライアントは英字新聞には基本手を付けませんし、読んでも天気予報かスポーツ結果をさっと見るくらいで、仕事のネタを仕入れようとする人は少数派だと思います。

ネット検索にも同じことが言えると思います。日本人で英語がかなりできる人でもネット検索はほとんどが日本語で行い、特別な場合のみ英語で検索という場合が多いのではないでしょうか?それに対して英語のできるヨーロッパ人はネットの共通言語である英語を使って検索することが当然と考えています。このように“永遠の学習者”的な観点から英語を見ている限りは、本当の意味でのネィティブライクなコミュニケーターにはなれないのでは・・・とヨーロッパ人を見て思います。

また秋からのコースのための教材を探しに新宿の本屋に行ったときでした。書店には何列にも渡ってあらゆる観点から作られて教材や教本が所狭しと並んでいて、英語を勉強するためにこんなにたくさんの本が必要なのだろうか?と驚くと同時に、いつになったら英語学習者からコミュニケーターになれるだろうかと感じました。

言葉というものは常に変わっていくものです。英語は世界中で使用されているわけですから、日本語よりもはるかにたくさんのバリエーションがあるわけです。ですからいつまででも“勉強”しようとすればネタにこと欠く事はありません。初心者や中級者であれば、英語をツールとして使い始める前に、ツールについて知る必要がありますが、中級以上であれば学習者の意識からコミュニケーターとしての意識に変えていく必要があるのではないでしょうか。

いろいろな意見はあると思いますが、英語は学問ではなく、ツールだと思います。英語を中学で始めてから、正解を選ぶことを第一に考えて勉強をしてきましたが、この考えを捨て、(携帯のように)英語をツールとして使うことを日常的に行わない限り、ヨーロッパ人のようなネイティブライクな英語力を身に付けることはできないでしょう。

オーストラリアの大学院で通訳の勉強をしていた時に、“語学なんて結局いつまでも勉強。プロになりたいなら、いつまでもまだまだ勉強が足りないなんて甘えてないで、腹くくってプロになり、いろんなところで揉まれ力を付けなさい”と言われたことがあります。“プロになる”というところを“英語を使いこなす”に置き換えれば一般の方にも通用すると思います。さらに上を目指すために“勉強”モードをオフにするのも一つの手かもしれません。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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