INTERPRETATION

最強の勉強方法

上谷覚志

やりなおし!英語道場

このコラムを読んでくださっている多くの方は通訳訓練を経験された方または現在進行形で通訳訓練を受けている方が多いと思いますので、通訳訓練とはどういうものかお分かりだと思います。一般の方からすると“通訳”訓練というと通訳になるための訓練なので、高度な訓練というイメージがあるかもしれません。しかし実際にはインプットにアウトプットを組み込んだコミュニケーションの最強強化訓練方法と言えると思います。通訳がコミュニケーションのスペシャリストであるということを考えれば当然のことなのですが、どうも何か高度なことをやっているような秘密めいた感じがするのかもしれません。

一般的な英語学習はインプット重視で、例えば、「単語をひたすら覚える」、「CDをひたすら聞く」、「とにかく読む」、「問題を解く」といった練習が多く、インプットを増やしていけば、いつの日か英語でコミュニケーションができるようになるという考え方です。ただコミュニケーション力を強化していくためには、実際に使ってみるつまりアウトプットが不可欠です。インプット(知識の蓄積)だけでは、コミュニケーション力は強化されませんが、アウトプットだけでもコミュニケーションの幅や深みを増すことはできません。理想の訓練はインプットしたものを忘れてしまう前にアウトプットすることです。そういう意味では通訳訓練は理想的です。

通訳になるつもりがなくても、ディクテーション、シャドーイング、サイトラといった訓練は非常に有効で、それぞれインプットされたもの(音声または文字情報)を即座にアウトプットしていくことで、知識の定着率が大幅に向上し、単なる知識を使える英語に変換し、コミュニケーション力を強化していくことができます。

実際に私自身、英語力が付いてきたと実感したのは通訳訓練を行ってからでした。それまでは紙上での英語の知識はあると感じていても、いざ使うとなるとどう知識を使っていいのかわからず、英語でのコミュニケーションのスピードや精度に欠けるという時期がありました。通訳訓練を受けてしばらくすると、自分のできないところが嫌というほどはっきりと見せつけられ、やるべき課題もクリアになっていきました。元々通訳になろうと思って通訳訓練を始めたわけではなかったのですが、結果的には英語力を大幅に伸ばすことができました。こういったこともあり、通訳を目指さない人にも是非通訳訓練を受けていただきたいと思っています。

逐次訓練も実は通訳を目指さない人にとっても有効で、英日逐次であればできたかどうかをしっかりと確認でき、曖昧な点を残さずに弱点を集中的に学習することができます。また日英の逐次もこれまで蓄積してきた知識を使っていくので、今の自分の語彙で何が足りないのか明確にできますし、これまで自分が表現してこなかったことをあえて英語で表現することにより、表現の幅を広げることができます。また文法知識を実際の文脈で使ってみることで、英語の総合力を強化することができます。

ただ一つ難点が、一般の方でもできるような通訳訓練(通訳という名前もいけないのかもしれません)を受けられる場所がないということなのです。部分的に授業の中にディクテーションやシャドーイングを取り入れている学校はあるようですが、サイトラや英語⇔日本語への通訳訓練(厳密な通訳ではありませんが)まで提供しているところは多くはありません。通訳学校だと入学レベルが高すぎて、誰もが練習できるわけではありません。通訳訓練を一部の人たちだけにしておくのはもったいないので、小さな規模ではありますが、少しずついろいろな人に体験してもらえる環境を提供していきたいと思っています。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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