アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリはとりわけ「星の王子さま」で知られていますが、「夜間飛行」「人間の大地」等の作品の中でも、人生、愛、友情、死生観などについて多くの言葉を残しています。そのひとつひとつは時に難解ですが、良く読んでみると深く共感できるものがあります。「夢をみる言葉」はそうした彼の言葉を上記三作品から抜粋して新たに翻訳し、山口昌弘さんの写真と合わせて編集したものです。
昨年、「シルクロード紀行 いくつもの夜を越えて」という本を翻訳し、西東社から刊行することができました。この本をお世話になった方に献本したのですが、その方が出版社から企画に適した翻訳者の照会を受け、私を推薦してくれました。
翻訳という作業は言葉から言葉へ置き換えることではなく、自分の理解をどのように表現するかです。自分が理解していない文章を翻訳することはできません。前回の「シルクロード…」では行ったことのない国や見たことのない遺跡をネットで調べたり、イスラーム教のスンニ派とシーア派の教義の違いを本で読んだりしましたが、今回は抽象的なサン=テグジュペリの思想を理解することから始まりました。彼の言葉は単独では難解に思えますが、前後を良く読み込むことで、象徴的に使われている言葉(砂漠、井戸、花、星等)が何を意味しているか把握し、文章の底に流れる彼の考え方を理解することに努めました。
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