TRANSLATION

Vol.10 好きなことを仕事に

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

[プロフィール]
オーエン・オースティン・クーニーさん
Owen Austin Cooney
Williams College(米国、マサチューセッツ州)日本語、アートスタジオ専攻卒業。在学中、ギャラリーにて、日本明治時代の芸術/工芸に関する翻訳を経験。卒業後、JETプログラムにて来日、京都の役場に翻訳者として勤務。2年間の勤務を経て、フリーランス翻訳者として独立、現在に至る。

Q. お母さんが日本人、お父さんがアメリカ人ということで、昔からバイリンガルな環境で育ったんでしょうか?

生まれは東京なんですが、1才半でアメリカに渡り、それ以来日本とアメリカを行ったり来たりしています。教育はほとんどアメリカで受けました。自宅では日本語も話していましたが、主に母が日本語で話して僕が英語で答える形だったので、周りから見たら不思議な感じだったかもしれませんね(笑)。

Q. 大学ではダブルメジャーだったそうですが。

日本語とアートを専攻しました。アートスクールに行きたかったんですが、幅広く知識を身につけたいという思いから、日本語も専攻することにしました。小さい頃から日本のマンガなど読んでいましたし、日本語の授業を取っていたので、読んだり聞いたりするのは問題ありませんでした。話すのは苦手でしたが。敬語や漢字で、とまどうことも多かったことを覚えています。
Japanese-English Character Dictionary

Q. 学生時代に翻訳を経験されたと伺いましたが。

大学3年の夏です。何か芸術に関わる仕事がしたいなと思っていたところ、ひょんなことからギャラリーで翻訳者として働くことになったんです。日本の工芸についての翻訳でしたが、最初は非常に難しかったです。集中力を要する仕事ですし、今まで翻訳を専門に勉強したことがなかったので。この仕事を経験したことで、もっと翻訳を突き詰めてみたいと思うようになったんです。

Q. 大学卒業後、日本にいらっしゃったんですか?

そうなんです。日本語力も中途半端だし、また日本に住んでみたいなと思っていたんです。JETプログラムに参加しました。通常このプログラムでは、日本の中学校などで英語を教える仕事に就くんですが、僕の場合は国際交流関係の仕事をすることになりました。京都という場所柄、外国人が非常に多く、外国人登録や税金など日本のシステムが分からなくて困っている人たちへの通訳、ニュースレター作成、広報誌の翻訳など、幅広くいろんな仕事を経験させて頂きました。

Q. その後、フリーランス翻訳者に転身されたんですね。

役場での契約満了後、何をしようかと考えていた時に、翻訳が向いているのではないかと思ったんです。通訳にも興味はありましたが、当時JETプログラムに参加している外国人と日本人の間で通訳を頼まれることが多く、毎回やっていると疲れてきてしまって(笑)。大学の同級生は皆企業で働いていますが、今は自分の時間をもっと大事にしたいと思っています。そういう意味では、フリーランスの方が合っているのかもしれません。

Q. お得意な分野は?

ビデオゲームの翻訳から実務的なものまで様々なお仕事を頂いていますが、最初は「次は何が来るんだろう?」と不安でした。どういうものが来るのか全く分かりませんでしたから。仕事をこなしていくうちに、だんだんと慣れてきました。好きなのはアートや歴史、音楽です。実際はビジネス関係が多いので、なかなかアート関係の翻訳をすることはないのですが。

Q. マンガがお好きだと伺いましたが、小さい頃はどんなマンガを読んでいらっしゃったんですか?

恥ずかしいですね(笑)。小さい時は、『ドラゴンボール』を読んでいました。アメリカのヤオハンというお店で、日本のマンガを買うことができたんです。最近では、『三国志』なども読んでいます。全部日本語で読んでいるんですよ!

Q. ストレス発散は?

ずっと自宅で翻訳していると、気分が暗くなってしまうので、できるだけ外に出て散歩や運動をするよう心がけています。スイミングプールにも頻繁に通っています。
愛用のゴーグルと単語帳

Q. 一週間のスケジュールは?

空いている時もあれば、かなり埋まっている時もあるので、ばらばらです。できれば週末は空けておきたいんですが、そういうわけにもいきませんし。どちらかというと、夜遅くまで翻訳して朝はゆっくり起きるタイプです。がんばれば1日10枚以上翻訳できますが、じっくり取り組みたい方なので、もう少し少ない枚数に押さえるようにしています。ミスなどがあっては、困りますので。もちろん納期は絶対に守ります!

Q. オーエンさんの強みは? スキルアップの秘訣を教えて頂けますか?

小さいときから、書くことが好きでした。小説も大好きなので、英語の表現や仕上がりには自信があります。スキルアップの秘訣ですか? 新しい言葉や表現は、その都度書いて覚えます。単語帳に書き込んで、次に同じ言葉が出てきた時には使えるようにしています。

Q. 休日はどのようにお過ごしですか?

弟と友達の3人で、ロックバンドをやっているんですよ。僕はボーカルとギター担当です。歌詞はほとんど英語で、作詞作曲も自分たちで行っています。今年夏には、ライブもやる予定なので、日にちが決まったらご招待します! 是非来てください。

Q. 今後はずっと日本に?

まだ決めていません。今までは行ったり来たりで、アメリカに「帰る」とか、日本に「滞在する」といった意識はありませんでした。どちらにも住めるなと思いますし。しばらく日本にいる予定ですが、刺激が無くなってきたらアメリカへ行くかもしれません。最近感じるんですが、日本は急激に国際化が進んでいると思います。京都にいたときは、日本の歴史や文化の重みをひしひしと感じましたが、東京はまた違った面白さがあります。すごくオープンな雰囲気がありますね。英語が話せる人も増えて来ましたし、外国人も多いので、そういう意味でも今は日本がとっても面白いです!

Q. もし翻訳者になっていなかったら?

ロックスターになっていたと思います! 恥ずかしいですが(笑)。音楽や書くこと、何かアートに関係するようなことができれば最高です。仕事としては、翻訳者が向いているかなと思いますが、好きなことを仕事にできれば幸せだと思います。

<編集後記>
オーエンさんも私もシャイなので、最初はちょっぴり緊張したんですが、年齢も同じということで、すぐにうち解けて楽しくお話ができました。ライブの際は是非ご一報下さい!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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