TRANSLATION

Vol.6 コーディネーターを経験したからこそ、分かること

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

[プロフィール]
フィリップ・グランベールさん
Philippe Grimbert
パリ第2大学経済学部卒業後、パリ国立東洋言語文化研究所日本語と日本文化と日本文学部修士課程修了。英語講師、長野オリンピック通訳翻訳、翻訳コーディネーターを経て、フリーランス日英・日仏翻訳者として独立。

Q. 翻訳者を目指すようになったきっかけは?

大学生の頃、偶然立ち寄った情報センターで「翻訳者」という職業があることを知ったんです。それで何となく興味を持ったのがきっかけです。もともと語学は得意だったんですが、当時は英語とスペイン語しか話せなくて。フランスでは、英語もスペイン語も話せる人が非常に多いんですよ。これでは食べていけないなと思い、以前から興味のあった日本語を勉強することにしました。

Q. 日本語は苦労しましたか?

非常に苦労しました(笑)。例えば、スペイン語やイタリア語なら、フランス語と似ているのでそれほど困難ではありません。日本語は語族が違うので、それはもう大変した。大学では翻訳の授業そのものはなかったものの、日本の小説を読んで翻訳をすることも多く、非常に勉強になりました。ちなみに卒業論文は、葉山嘉樹の小説翻訳と分析がテーマでした。

Q. 初めての翻訳は?

大学4年生の時に、会社を経営している友人に頼まれた日仏翻訳です。嬉しくてすぐに引き受けました! それから少しずつ仕事が増えていき、日仏翻訳をメインに請けました。日英をやるようになったのは、日本に来てからです。長野オリンピックの仕事が終わった頃、フリーランスとして独立しました。今から思えば未熟な「プロ」だったなぁと思いますが。日本で発注される仕事の多くは日英です。日仏の方が得意ですが、日英に比べると需要がそれほどないようですので。

Q. 通訳者として働かれた経験もあると伺いましたが。

そうなんです。長野オリンピックでは、コーディネーター兼通訳として、貴重な経験をさせて頂きました。ただ、通訳学校に通っていたわけではないので、自慢できるようなスキルは持ち合わせていません(笑)。もちろん私なりに、ベストを尽くしましたが。実際に通訳をやってみて分かったことですが、やはり自分は翻訳の方が向いていると思いました。

Q. 翻訳コーディネーターとしての経験が、役に立っていることはありますか?

大いにあります。コーディネーターの立場が分かるので、自分のことだけ考えないで、総合的に仕事がうまくいくよう努力します。例えば、納期は絶対守ること。コーディネーターは早く納品してくれる人がいいでしょうし、校正の方も時間をかけてチェックできます。在宅の場合は、電話で依頼が来るので、できるだけ具体的な情報を頂き、こちらも的確に情報を伝えるようにしています。コーディネーターの方とは、「一緒に仕事をする」という感覚があります。コーディネーターを経験したからこそ、感じることですね。それから翻訳そのものに関しての、商品感覚が身につきました。

Q. 毎日の平均的なスケジュールは?今後のキャリアプランを教えて下さい。

スケジュールは日によって違いますが、朝の8時半から夜中まで翻訳していることもあります。基本的に自宅にいることが多いです。今まで企業で働いてきましたが、在宅だと翻訳だけに集中できるので、これからもフリーでやっていきたいと考えています。世界中のコミュニケーションのために、もっと役に立ちたいと思っています。 仕事をしていて一番嬉しいのは、お客さんに「助かった」と言われることです。これが一番幸せなことです!

Q. もし、翻訳者になっていなかったら?

講師です。「ものを伝える」ことが好きです。翻訳は、他の言語で何かを伝えることですよね。例えば講師なら、知識を他の人に伝えられます。漠然としていますが、何かそういうことができればと思います。

<編集後記>
「今は仕事関係の資料に目を通すことが多いけれど、時間ができればもっと日本文学について勉強してみたい」、とフィリップさん。今度是非、葉山さんの作品についてお話ししたいです!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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