INTERPRETATION

第40回 類語をまとめて覚えよう! その1 「上がる」

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

ビジネスや経済の話では数字が欠かせません。通訳では数字が出るとまずは「ビクッ」とする通訳者も多いと思いますが(私もです!)、大切なのはその数字がどういうニュアンスで用いられているのか、その数字が「大きい」のか「小さい」のか、「増加している」のか「減少している」のかなど数字がもたらす意味を訳出すること。そこで、これから5回にわたり数字に関連して使われる用語を取り上げます。まず第1回目は「上がる」のニュアンスで使われる語を見てみましょう。

「上がる/増える」という意味の日本語だといくつ思い浮かびますか?

文脈やニュアンスにより以下のような類語があります。

• 増加

• 上昇

• 増大

• 伸びる

• 高まる

• 引き上げる

• 上向く

• 増量

• 増額

• 拡大

• 急騰

• 暴騰

では英語ではどうでしょう? 

• increase: 最も一般的。給料や価格、速度、重量など色々な場合に使える。動詞・名詞ではアクセントの位置が異なる。on the increase(増加中)もよく使われる。

• rise: ~率、料金、売り上げなどの数量が上がる。自動詞なので「(値段を)上げる」というときはraise. これもon the rise(上昇中)という表現あり。

• gain:(体重)が増える(put onとも)、(速度や価値)を上げる、というときに使う。日常会話ならI’ve put on 3 kg(3キロ増えちゃった)、ビジネスではThe company’s shares gained 12 percent(その企業の株価は12%上がった)など。

• grow: (経済)が成長する、(企業)を拡大させる、等の文脈で使われる。動詞のみ。名詞はgrowth。

• enlarge:形を大きくすること。拡大する。例:enlarge three times(3倍に拡大する)

• snowball: 日本語では「雪だるま式に増える」と言いますが、英語ではsnowmanではなくてsnowball(雪玉)で同じ意味になるのがおもしろいですね。急速に増える/拡大する。この意味では動詞のみ。ちなみに「雪合戦」はa snowball fight。

• surge: 急上昇・急増・急騰。ふつうは名詞用法のみ。数字以外にもa surge of excitement/ love のように「感情が急に高まること」やa surge of orders(注文殺到)などの文脈でも使われる。

• multiply もともと「掛け算をする」という意味なので、「急激に(ねずみ算式に)増える」。ちなみに算数の3x4はmultiply 3 by 4という。参照:quadruple(4倍に増加する), triple(3倍に増加する), double(倍増する)

• soar: (価格・温度・コストなど)が急上昇・急騰する。ふつうは動詞用法のみ。

• inflate: 利益の水増しや支出の増大など会計関連や、価格のつり上げや通貨の暴騰にも使われる。動詞のみ。名詞はinflation。(第一回参照)

• appreciate: (価値や値段、相場)が上がる。Yen appreciated 10 % against the dollar(円の価値がドルに対して10%上がった)

• mounting: 名詞を修飾して「増える一方の、かさむ、高まる」の意で使う。mounting costs/debts(かさむ費用/負債)など。

たくさんありますね! 他にもaccrue, swell, skyrocketなど色々あります。ニュアンスや用法の違いはあれ、上記の表現すべて、逐次通訳のメモなら右上がりの矢印で表せます。矢印の角度を調整することで、上昇が急なのか緩やかなのかも一瞬で記せますね。

以上、「上がる・増える」という意味の類語を紹介しました。次は、その反対語「下がる・減る」の類語を紹介します。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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