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第291回 不思議な縁に恵まれたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

自分のこれまでの人生は、多くの不思議な縁に恵まれてきました。

人や仕事との出会い。それらのひとつひとつが、エピソードに次ぐエピソードによって巡り合ったもので、きっかけを説明しようとすると、どこから話せばいいのか困ってしまうことがよくあります。

そんな不思議な縁について考えていると思い出す詩があります。

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Chance
Sara Teasdale

How many times we must have met
Here on the street as strangers do,
Children of chance we were, who passed
The door of heaven and never knew.

*****

ひょっとしたら
サラ・ティーズデイル

何度もすれ違っていたんだろうね
この道で 他人同士として
わたしたちはみな偶然の産物 気づかずに
奇跡の扉を通り過ぎていたんだね

*****

たった4行の詩ですが、出会いがいかに奇跡的なことなのか、すごく伝わってきますよね。

How many times we must have met
Here on the street as strangers do,
何度もすれ違っていたんだろうね
この道で 他人同士として

ロマンチックな表現ですよね。ロマンチストなら、人生で一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。

今お互いにとって大切な存在になったけれども、ひょっとしたらこれまで何度も道ですれ違ったり、電車で隣に座ったり、カフェで背中合わせの席にいたりしたかもしれない。

How many times 「何度も」という表現が、数限りない感じがして、出会いの奇跡を盛り上げています。How many times have I told you?「いったい何度言ったら分かるの?」というお説教の表現もありますが、回数として何回かではなく、「数えきれないほど何度も」ということを強調する言い方です。

Children of chance we were, who passed
The door of heaven and never knew.
わたしたちはみな偶然の産物 気づかずに
奇跡の扉を通り過ぎていたんだね

The door of heaven 「奇跡の扉」というのが、巡り合えた不思議な縁を表しています。

Heaven という単語が「天国」を意味するだけに、あの世に近づくような雰囲気がして、「死と隣り合わせの日々を私たちは実は生きている」とこの詩に出会った当初は考えていました。それで、なんだか重たい詩だと感じて、あまり読み返してはいなかったんです。

ところが、人や仕事の面で、自分の人生に不思議な縁が続いたときに、ロマンチストらしく、もっとシンプルに「出会い」と捉えればいいかもしれないと思うようになりました。

これは、人同士の出会いだけでなく、人生の転機などについても、同じことが言えそうですよね。

今でこそ仕事や趣味になっていることが、以前は全く興味がなく見向きもしなかったということもあるかもしれません。

自分はフォトグラファーとしても活動していますが、高校生のころの自分に「将来、英語や日本語を教えたり、NPOを運営したり、フォトグラファーをしたりしているよ」と言っても、きっと信じないと思います。

それが今は、英語の本や記事を読んでいて表現や文法として面白いフレーズがあるとメモしたり、出先で時間があると思わず途中下車して、車椅子ユーザーや医療的ケアが必要な人向けの多目的トイレのプロファイルをしたり、空の色が綺麗だと慌ててカメラを手に家を飛び出したり。

昔はそのどれにも興味もなく通り過ぎていましたが、いろいろな紆余曲折と出会いがあって、今は自分にとってかけがえのないものになっている。不思議な縁ですね。

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今回の訳のポイント

出会いの奇跡をしみじみ語るこの詩。最大のポイントは、タイトルです。

Chance
ひょっとしたら

Chance と言うと、「チャンス」という日本語がすぐに思い浮かぶかもしれません。

しかし、Chance という単語には、絶好の機会を意味する「チャンス」という訳語だけでなく、「偶然」という意味があります。「機会」を意味する「チャンス」も、もともとは「偶然」の上に成り立っているわけです。Chances are …「もしかしたら~」という表現もよく使われ、Chances are で始まる男女の出会いの機微を描いた歌もあって、それも日本語に訳して紹介したいぐらいです。

そんなわけで、この詩に日本語のタイトルをつけるなら、「偶然」や「奇跡の扉」も候補ですが、やさしくやわらかな日本語にするなら、「ひょっとしたら」が一番ではないでしょうか。

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOでの経理・人事やプロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーションにて英語・日本語学習プログラムの開発・管理に従事。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学したり、2500冊の蔵書をもとに読書会を主宰したり、言葉が大好き。
現在は、NPOで障害や難病を抱える当事者やその家族とともに「誰でもビーチ」という活動を運営しつつ、フォトグラファーとしても活動し、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END