第290回 服選びに悩んだときに思い出す詩
何を着て出かけるか、服選びに悩み過ぎて困るときがありますよね。
前の晩に決めておいたのに、朝起きたら雨模様だったり、その服の気分じゃなくなっていたり。
しばらく着ていなかったからか、サイズ感や色が似合わなくなっていてがっかりしたり。
あれこれ服を引っ張り出してみたものの、着る服が決まらず茫然としているときに思い出す詩があります。
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I’d Love To Be A Fairy’s Child
Robert Graves
Children born of fairy stock
Never need for shirt or frock,
Never want for food or fire,
Always get their hearts desire:
Jingle pockets full of gold,
Marry when they’re seven years old.
Every fairy child may keep
Two ponies and ten sheep;
All have houses, each his own,
Built of brick or granite stone;
They live on cherries, they run wild—
I’d love to be a Fairy’s child.
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妖精の子どもになりたい
ロバート・グレイブス
妖精の一族に生まれた子どもは
シャツも上着もいらない
ごはんや家の心配もいらない
欲しいものは何でも手に入る
ポケットには小判がじゃらじゃら
7歳で生涯の伴侶を見つけて
妖精ならだれでも持っている
2頭のポニーと10匹のヒツジ
自分の家だって持っている
レンガか石造りの家
主食はサクランボで
そこらじゅう走り回る
妖精の子どもになりたい
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妖精に生まれれば、着るものの心配はなさそうです。妖精の暮らし、憧れますねえ。
Children born of fairy stock
Never need for shirt or frock,
Never want for food or fire,
Always get their hearts desire:
妖精の一族に生まれた子どもは
シャツも上着もいらない
ごはんや家の心配もいらない
欲しいものは何でも手に入る
衣食住すべて満ち足りている妖精の子どたちの暮らし。
「シャツも上着もいらない」と言っていますが、実際にすっ裸で走り回っているかは置いておき、着るもの、食べるもの、住むところといった生活基盤にいっさい心配がいらない生活のことを言っていますよね。
望むものは何でも手に入る。おとぎ話を絵に描いたような極楽生活。これは、「妖精の子どもになりたい」と言いたくなります。
Jingle pockets full of gold,
Marry when they’re seven years old.
Every fairy child may keep
Two ponies and ten sheep;
All have houses, each his own,
Built of brick or granite stone;
ポケットには小判がじゃらじゃら
7歳で生涯の伴侶を見つけて
妖精ならだれでも持っている
2頭のポニーと10匹のヒツジ
自分の家だって持っている
レンガか石造りの家
「欲しいものは何でも手に入る」というのは、日常の生活必需品にとどまりません。お金という富も、結婚という幸せも、家畜や頑丈な家という安心も、大人になって初めて手にできるようなものが何でも手に入るのです。
実際のイメージを想像してみると、ちょっと笑ってしまうんですよね。
妖精の子どもがいるとして、ポケットが小判でパンパンになっていて、自分の家族と頑丈な家に住んでいて、家畜がうろうろしているという様子。
もちろん実際にそうであるかどうかは問題ではなく、富と幸福と安心のすべてを手にしている状態を妄想できれば十分ですよね。
They live on cherries, they run wild—
I’d love to be a Fairy’s child.
主食はサクランボで
そこらじゅう走り回る
妖精の子どもになりたい
妖精の子どもたちなので、主食は、まさかのサクランボ!
「あーお腹すいたー」
「ごはんですよー」
「わーい、いただきまーす」
と言って、ボウルいっぱいのサクランボをほおばる暮らしって、どんな感じなのでしょう。
もちろん、学術的に妖精の主食は何かという話をしているのではありません。
ここでの食べものは、サクランボでも、イチゴでも、子どもが好きな食べものなら何でも良く、好きなものをいつでもいくらでも食べられるということの象徴になっています。
そして、叱られることなく自由に走り回れるという、子どもにとって夢のような生活!砂だらけ泥だらけになってそこらじゅうを走り回っても叱られないというのは、子どもとしては最高の特権ですよね。
どうですか!「妖精の子どもになりたい」と言いたくなりませんか。
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今回の訳のポイント
モノに満たされ、生活の基盤に困ることもない、妖精の子どもの夢のような生活を妄想しているこの詩。
とある基本単語が、訳す上でのポイントになっています。
Children born of fairy stock
Never need for shirt or frock,
Never want for food or fire,
Always get their hearts desire:
妖精の一族に生まれた子どもは
シャツも上着もいらない
ごはんや家の心配もいらない
欲しいものは何でも手に入る
Want という単語は、want to do「~したい」という形で知られていますが、ここでは、want for となっています。Want の後ろに名詞があれば「~を欲する、~が欲しい」となりますが、ここでは後ろにあるのは for です。ということは、文法的には、自動詞となります。自動詞としては「欠いている」という意味になり、for の後ろに何を欠いているかを置くことになります。
そういうわけで、「したい」「欲しい」という訳語の出番はなく、Never want for food or fire 「ごはんや暖かい火のある家を欠くことは決してない」という意味になるわけです。
英語を学ぶ日本人が陥りがちなミスのひとつに、文法ベースでなく単語の意味ベースで英語を訳してしまうというのがあります。
今回のwant という基本単語を見ても分かるように、英単語の意味は、雰囲気や文脈というより、文法的なかたちによって決まっていることも多いので、文法的な構造を見ずに、たまたま知っている訳をあてがうと、意味を取り違えてしまうことがあるのです。
文法的なかたちを知っていることで、的確にニュアンスを理解できるということを証明している箇所が、この詩にはもうひとつあります。
They live on cherries, they run wild—
I’d love to be a Fairy’s child.
主食はサクランボで
そこらじゅう走り回る
妖精の子どもになりたい
この箇所を「主食」という堅い日本語であえて訳したのですが、理由があります。それは on という、これまた基本単語にあります。
前置詞の on は、depend on~「~に頼る」というフレーズに代表されるように、「~に頼って」というニュアンスがあります。この詩の中の live on は「~に頼って生きる」となり、つまり「~を主食とする」という意味合いになるのです。
このように、単語には様々な意味があり訳があるというよりも、文法的なかたちによって意味が決まってくると理解したほうが、正確で的確なニュアンス理解ができるんです。
着る服が決まらなくて茫然とするところから、妖精の詩を思い出し、最終的に英文法の細かい話をすることになるとは思っていませんでしたが、そんなことを考えずに自由にのびのび暮らせる妖精の子どもになりたいです!