第343回 出版記念イベントって、やったほうがいい?
出版後に翻訳家ができる販促活動について、『認知症と性とウェルビーイング ―パーソンセンタードケアの視点から』の実例をもとにお伝えしています。今回は、出版記念トークショーがテーマです。
その前に、「翻訳家も出版記念イベントをしたほうがいいの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。「そもそも人前に出るのが好きじゃない」という方も多いでしょう。
イベントに時間を使うよりも次の仕事や勉強に専念したほうがいいという考え方もありますし、苦手意識が強くて負担が大きい場合は、無理をしないほうがいいこともあります。それでも私は、やっぱりイベントをしたほうがいいと感じています。
ひとつには、イベントをすることでお会いできる方がいるからです。普段オンラインでやり取りをしている方、活動を通して知ってくださっている方、こういう機会でもなければ会えない旧知の方、知人の紹介で興味を持ってくださった方など……。さらに、会場が書店であれば、その書店のお客さまが興味を持って参加してくださることもあります。
もうひとつは、出版しても自分が思うほど周囲は認知していないからです。自分はずっと関わっているので、「さんざん告知もして、あちこちで書いてきたし、これ以上イベントで語ってもしつこいのでは?」という感覚でいますが、実際にはその100分の1も届いていないのです。しつこいくらいに何度も何度も語り倒して、ようやく「そういえばそんな本があったな」と思ってもらえる程度だと考えておくほうがいいでしょう。
そんな理由から、出版記念トークショーを開催することになりました。イベントは版元さま主導で決まることもありますが、翻訳家のほうに伝手があれば、そこから開催につながることもあります。
「伝手なんて何もない」と思う方も、普段出かける書店や、参加しているイベントがあるのではないでしょうか。その書店やイベントの主催者の方に企画を持ちかけてみてください。書店の選書や雰囲気が気に入っていたり、イベントの内容と関心が重なっていたりするならば、それをお伝えしたうえで、なぜそこで開催したいのかを丁寧にお伝えすれば、実現の見込みは十分あるはずです。
かくいう私も、今回お世話になったのは、以前に参加者として伺っていた書店さまでした。何度か同じイベントに通い、自分が出版した際に「私もこのイベントに登壇してみたい」と思い、申し出たのです。それ以来、出版の折には毎回お世話になっています。
その大盛堂書店さまで、出版記念トークショーを開催しました。本書の内容や原書との出逢い、なぜ翻訳したいと思ったのか、お気に入りの事例や著者のこと、翻訳するうえで大変だったことなどなど……1時間たっぷりお話しさせていただきました。
(トークショーの様子。MC役の団長さんと)
そんな中、前列でずっとノートPCを使って熱心に何かを打ち込んでいる参加者が目に留まりました。気軽なトークショーですので、メモを取る方はいても、ほとんどの方はリラックスして聞いています。それだけに不思議に思い、「ブロガーさんかな?」と想像していたのですが……その方は共同通信社の記者さんでした。
その場で取材のお申し出があり、後日改めて取材を受けました。その記事は各地方紙に掲載されたほか、より詳しい記事がオンラインで配信され、Yahoo!ニュースにも取り上げていただきました。
イベントをしなければこういう出逢いもないですし、開催することで広がりが出ることを実感しました。出版記念イベントは、そんなご縁をもたらしてくれる場でもあるのです。出版の暁には、ぜひ開催してみてください。
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