TRANSLATION

第342回 出版したら、何をする?

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

本は出すだけで終わりではありません。出版後に読者のもとに届けるために、翻訳家にもできることはいろいろあります。そこで、今回は『認知症と性とウェルビーイング ―パーソンセンタードケアの視点から』の出版後の動きをお伝えします。

本書は出版のハードルが高かったため、雑誌連載によって読者をつくろうと試みてきました。「連載の書籍化」とすることで、出版への流れをつくったのです。それがついに書籍化されたということで、連載媒体では特集号を刊行しました。

本誌には日本語版序文に加え、帯文を寄せてくださった上野千鶴子さんによる書評が掲載されたほか、訳者インタビューも掲載していただきました。

ここまでは版元さま主導の動きなので、翻訳家としては率先して動くというより、必要な場面で協力する形になります。そんな版元さま主導の企画のひとつに、本書のオンライン打ち上げ会がありました。その様子を録画し、後日編集して公開することでPRにつなげようというものです。

その収録日の直前、著者の方とメールでやりとりしていたところ、「私も打ち上げ会に参加したい」とのお申し出が……! 急遽、著者を交えての打ち上げ会となりました。その様子がこちらです。

 

動画でご覧いただける通り、著者のダヌータさんは知性と温かさ、華やかさを備えた、とても素敵な方でした。「翻訳家だと著者と交流する機会が多いのでは?」と思われがちですが、実際には疑問点などをメールでやりとりするくらいで、直接お話しする機会は滅多にありません。そういう意味でも貴重な経験でしたし、文章を通して長年お人柄に接してきた方とお話しすることは、翻訳家ならではの醍醐味だと感じました。

各種のPRに協力させていただく一方で、個人としての献本も進めました。認知症ケアの関係者だけでなく、出版関係者やメディア関係者にお送りしました。献本の際にはお手紙を同封するのですが、そこで心がけていることが4つあります。

①直接送る
版元さまから一律に送ってもらうこともできますが、それだと受け取るほうも「ああ、出版社からの献本ね」と事務的に受け取るかもしれません。そこで直接お送りすることで、パーソナルな贈り物として捉えていただけるようにしています。可能であれば、直接お会いして手渡しします。

②直筆を添える
すべてを直筆にはできませんが、宛名やひと言メッセージなどは直筆にしています。これも①に関連しますが、パーソナルな贈り物にするためです。

③紹介しやすい形にする
本を受け取った方が他の人に説明しやすいようにお伝えします。今回の場合は、舞台裏の話ではありますが、7年かかった「執念の翻訳書」というのが興味を持っていただくきっかけにもなるので、キャッチフレーズとして入れています。

④読んでもらう工夫をする
本書は事例部分の字体が変えてあり、拾い読みしやすくなっています。本文には哲学的な内容もあるのでじっくり向き合う必要がありますが、事例部分は身近な内容で読みやすくなっています。読む時間がとれない方や、本書のようなタイプの本に苦手意識のある方もいらっしゃるため、そんな読み方のアドバイスや、お気に入りの事例の情報を載せました。

このように献本を進めながら、個人のメディアでも告知をしました。私はSNS嫌いが年々加速しているので、主にブログでの告知です。

さらに、出版記念トークショーを開催しました。こちらについては、次回詳しくお伝えします。

※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。

※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。

※雑誌『セラピスト』で「寺田真理子さんと作る セラピストの本棚」を連載しています。最新号の8月号は「怒り」をテーマに、感情との向き合い方やおすすめの本をご紹介しています。ご覧いただけたらうれしいです。

 

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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