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素敵な出会い、素敵な縁

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通訳・翻訳者リレーブログ

昔々のその昔、都心のど真ん中に、有名なディスコがありました。今でいうクラブのようなものです。とにかく、そこでは曜日によりDJが入れ替わり、掛かるタイプの曲も異なっていました。
私の好きな音楽ジャンルは、いわゆるメインストリームではなかったので、“その手のファン”は、自分の好きな音楽を聴く機会、その魅力を仲間と享受する場に、とても飢えていました。
そんな人達(…私達)にとり、このディスコは一度は詣でたい、聖地のような場所であり、その曜日には、遠方からせっせと通う人もいた程でした。

私は南米から帰国直後の高3の春に、初めて其処を訪れ、その独特の雰囲気にすっかり魅せられ、受験シーズンを挟んだ翌春からは、月に何度も、足を運んでいました。

其処には、雑誌編集部員、音楽評論家、レコード会社ディレクターなど、音楽業界で働く錚々たるメンバーの集う一角がありました。日本人のミュージシャンもよく来ていましたし、来日中のアーティストが、フラッと顔を出すこともありました。
私達一般人は、そんな彼等を、遠巻きにウットリ眺めていたものです。

そんな中に、とても目を引く、とても素敵な女性がいました。
私が10代の頃から愛読していた、某音楽雑誌の編集部員であり、私が夢中で聴いていたミュージシャンにインタビューし、素敵な記事を書かれていた人でした。“あそこにOOOさんがいるよ! うわぁ〜、キ・レ・イ〜! カッコいい〜!”…と、仲間内で、遠くからキャーキャーやっていたものです。
そう、みんなの憧れの女性でした。

その数年後、私は縁あって、彼女の働く雑誌社の編集部員になりました。
一方、みんなの憧れだったその彼女は、既に東京のオフィスを辞められ、“音楽のメッカ”に活動拠点を移し、そこで取材をこなし、原稿を送る現地特派員になっていました。

その彼女が、私が入社した直後に一時帰国し、いきなり会社へ顔を出したのです。
そうして社員にひと通り挨拶して廻った後に、編集部へササーッとやって来て、“彼女、今年入った子? ちょっと貸してくれない?”…と、いきなり編集長(=彼女の元上司であり、かつ私に入社の機会を与えてくれた変人…もとい…恩人)に向かって言い、そうして私に、“ねぇ、これから一緒に、レコード会社を廻ろうっ!”…と誘ってきてくれたのです。

それが彼女との初対面の瞬間、初めて交わした会話でした。

そうして道中、色々な業界話を聞かせてくれながら、その日1日、一緒にレコード会社巡りをし、色々なディレクター達に紹介して貰い(その後とてもお世話になった彼等の多くは、いまや重役クラス!)、サンプル盤一杯の紙袋を両手に(当時はまだあの重く巨大なLP!)、充実した思いを胸に抱きながら、夕刻、会社へ戻ったのでした。
学生時代の友達何人もが、会社の人間関係で悩んでいた時期。おまけに血気盛んで少々尖った感があり、集団生活の苦手な、可愛げのない新人の私に対し、彼女はとても温かく接してくれたのです。

その日を境に、“こんなにたくさんのアルバムを、タダで貰えるなんて、夢のような世界だ!”…と、私はこの仕事が一気に好きになりました(笑)。
そうして、“私も周囲や、後から入って来る人達に、優しくしなければなぁ”…とも思いました。心底。実際、そうしてきました(…してきた…つもりです)。

とにかく、
あの日、あの瞬間のことは、ついこの間のことのように、鮮明に覚えています。思い出すたび、なんだかジーンときます。
いまの私にとり、とても大切な、とても想い出深い、私の原点、私の出発点のようなものなのです。

その約8年後、私も雑誌社を離れてフリーになりましたが、あの頃に出会った多くの方々にお世話になりながら、今でもこうして同じ業界で働くことが出来ています。
そうして数年に一度、一時帰国する度にお会いしている彼女は、ひとりだったのが、ふたりになり、3人になり、そうして現在では御家族4人と、彼の地に根を下ろし、とても幸せに暮らしています。

この間、パーソナル・コンピューターなる物が普及し、遠く離れた地に住む私達は、メール交換しては、頻繁に近況報告が出来るようになりました。
モダン・テクノロジーに感謝です。

先日、その彼女の住む街を、両親が旅行で訪れました。
ファミリー宛てに何か日本の物を、ふたりに託したいと思った私は、メールで訊ねたところ、食料品や書物やCD(あの当時はLPだったのが…ね!)と共に、旦那さんには、ある洋楽バンドの日本限定グッズを、リクエストされました。
それが、な…な…なーんと、そのバンド・ファンクラブの会長とは、仕事を通して知り合った、20年来の友達だったのです!
これまた、なんて嬉しい偶然なのでしょう。

そうして彼女は、御家族を伴い、両親の宿泊先へ訪ねて来てくださり、荷物も無事に受け取ったとのこと。その喜びの声が、数日前にメールで入ってきました。

昔々、あるディスコで遠巻きに眺め、そうして憧れていた彼女。
その彼女と御家族の為に、私はせっせと日本のものを集め、そうしてそれを私の両親が、彼女に直接届けたわけです!
とても素敵な縁。とても不思議でなりません。考えるたび、こころ躍ります。

哀しいことに、みんなが楽しく集っていた件のディスコは、私が社会人となり、雑誌に携わるようになって間もなく、閉鎖されました。
その何年かの後には、ふたりの雑誌もなくなりました。
洋楽業界、時代(とき)は確実に流れています。
それでも其処で、愛する音楽を通して巡り会った人達とは、20年以上経ったいまでも、強くしっかりと繋がっています。
こんな嬉しいことはありません。

それにしても、
振り返るたび、人との出会いの不思議を、強く感じてなりません。
その素敵な縁に、感謝の気持ちで一杯です。
そうして、思います。
人生、此処まで歩んで来られたのは、自分の努力や才能や意志などによるものでは、けっしてないということ。そんなことは、ほんの微々たるもの。恐らくは、100の内の5%といった程度に過ぎないでしょう。
それよりも、もっと、他の何かによるもの。力まず流れに身を任せてきた結果、魅力的な人達と巡り会い、ひとつの道を歩むようになり、そうしていま此処にいる。そう思えてなりません。

そう、何かこう、見えない力によって、導かれているのだ……と。

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記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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