INTERPRETATION

「日米文化比較」

木内 裕也

Written from the mitten

 このブログで何度か日本とアメリカの文化的違いや、アメリカの不思議について書く機会がありました。随分と前に書いた、日本人の車だけ駐車場でバック駐車をしていて、アメリカ人は常に前向き駐車をするということなど、気にすれば気にするほど日本人とアメリカ人の差が見えてくるようなものもあります。今週も日本とアメリカとそんな違いを3つ紹介したいと思います。

 1つ目は服装について。アメリカの大学生の大半はよほど地元の学校に通っていない限り、大学キャンパス内の寮や、キャンパス近くのアパートに住んでいます。寮は独立した建物としても建っていますが、低層階が教室や食堂で、3階や4階以上を寮とするような建物もあります。後者のような建物に入ると、授業を受けるためにそのビルにいる学生と、生活空間としてそのビルにいる学生が混在していることになります。するとパジャマや室内着の学生を多く目にします。例え同じビルであっても、部屋から出て数階下にある食堂に向かうとき、多くの日本人学生なら着替えるのではないかと思いますが、アメリカの学生はパジャマにスリッパ姿でエレベーターから降りてきます。上にトレーナーを羽織っていても、下にパジャマが見えることも。

 そして驚くべきは、自分の部屋と同じビルで授業が行われている場合、授業にパジャマ姿で登場する学生がいることです。私は今まで早朝の授業を教えたことはありませんが、先日夜8時に期末テストを行いました。すると、いかにもついさっきまで部屋でテレビを見ていたような姿の学生が、パジャマで数名登場しました。期末試験にパジャマ姿とは初めて目にする光景で、しかも数名の学生がそんな服装でしたから、とても驚きました。

 この服装の点は日本的考えでいう「内」と「外」や、アメリカでいうPrivateとPublicの概念に影響されているのかもしれません。同じように、誰かの家に行くということに対する考えが日米では違います。日本で誰かの家に行く場合は、よほど親しい仲でない限り、きちんとした格好をして、お土産を持って、失礼のないように家の中でも色々と気を使うもの。逆に招待するほうも、色々と気を使います。しかしアメリカの家庭に呼ばれた場合はその限りではない場合が多いです。だからこそ日本よりハウスパーティーが多いのかもしれません。招待側は場所を提供し、呼ばれた人達が食べ物や飲み物を持ち寄り、場合によってはその家のキッチンを借りて料理することもあります。「台所には入ってほしくない」と感じることの多い日本人とは大きな違いです。

 人付き合いという点では、友人と家族に対する時間の使い方に日米差があります。日本では仕事が終わった後に友人と食事に行ったり、飲み会にいったりします。それは仕事上の付き合いであることも多いようですが、家に帰るかわりに友人と時間を過ごすわけですから、家族との時間が犠牲になります。逆にアメリカでは(若年層は違いますが)、仕事時間を犠牲にする場合が多いです。ですから、友達とは昼食の時や途中の休憩時間にコーヒー屋で会い、仕事が終わると家に直行です。家族ぐるみの付き合いをしている友人でないと、家に戻るのを遅くして、夜10時まで外で友達と会う、ということはめったにありません。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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