INTERPRETATION

落ち込んだときにどうする?

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 春は出会いと別れの季節。新しい生活にワクワクしていることもあれば、慣れ親しんだ境遇に別れを告げるさみしさや不安感に直面している方もいらっしゃるでしょう。理想を言えば、どのような状況でも気分ははつらつとして前向きな思考を抱けることです。けれども人間ですので、体調の波もあれば、ふとしたきっかけで落ち込むこともあります。常にハッピーで楽観的にいる方が、むしろ無理なことなのです。

 では落ち込んだときにどうするか?大切なのは、そうした気分の波に見舞われた際、各自が打開策の選択肢をいくつか持っていることだと思います。私自身、絶好調のときもあれば、絶不調のときもあります。そこで今回は落ち込んだ気分を払しょくするためのヒントをご紹介しましょう。

1.太陽をあびる

 私の場合、気分がすぐれなくなる前兆として「疲労」が挙げられます。睡眠不足が続いたり、栄養のバランスが崩れたりしたときです。体調のサイクルがおかしくなったな、と思い始めたら、なるべく早く寝て、翌朝早起きします。そして朝一番で太陽をあびるのです。こうこうと輝く朝日を拝むだけでも、なんだか元気が湧いてきます。

2.体を動かす

なんとなくだるいときというのは、自分でも体の中に毒素が蔓延しているような気分になります。そのようなときは早歩きやジョギング、スポーツクラブのスタジオレッスンに参加するなどして、汗を流します。体を動かすと体重も軽くなり、身も心もスッキリ。毒素も流れ出ていくようです。

3.片付けをする

 気分が滅入るときに限って、部屋の中も荒れているケースが私の場合はよく見られます。雑然とした机周りや戸棚などを見て、余計落ち込んでしまうのです。そこで少しずつでもよいので片付けをしてみると、気分もスッキリします。今年西武に入団した菊池雄星選手も、落ち込んだ時はロッカーの中を片付けることで、前向きになれると述べています。

4.ノートに書き出してみる

 何が原因で落ち込んでいるのか、自分の今の感情はどういうものかなどをノートにとにかく書き出してみます。頭の中でグジャグジャになっていた考えも、一度しっかりと手で書いてみると、冷静に状況を見つめられるようになります。

5.得意なことをやる

 たとえば私の場合、気分的にものすごく落ち込んでいた日に子どもの学校関連で電話連絡をしなければなりませんでした。けれどもいざ連絡をしたり事務処理をやったりしたところ、どんどん元気になっていったのです。私の場合、事務処理や電話連絡など好きで得意な作業だったので、まさに行動療法だったのでしょう。

6.おいしいものを食べる

 以前からチェックしていたレストランや、食べたかったスイーツなど、落ち込んだときにトライしてみます。料理が得意な人でも、あえて外食したり、自分では作らないものを食べたりすることで気分転換ができます。

7.マッサージや鍼治療などを受けてみる

 気分が落ち込んでいるときというのは体も疲れているもの。この際、マッサージなどを受けて思いっきり体のメンテナンスをしてみましょう。「一番安いコースで」などと考えず、あえて120分ぐらいのコースを受けてみることをお勧めします。

8.美容院・ネイルサロン・カラーコンサルタントなど

 ヘアスタイルを変えたり、ネイルサロンで素敵な色を塗ってもらったりするだけでも、気持ちが前向きになります。以前私は自分に似合う色を見つけるべく、カラーコンサルタントにプライベートレッスンを受けたことがあります。メイクのハウツーなども教えていただき、とても勉強になりました。

9.映画・演劇を観に行く

 上演・上映時間は長くても2〜3時間。その間、自分とはまったく異なる世界に浸ることができるのですから、これほど素晴らしい投資はないと思います。新たな人生観や世界を知ることで、自分の悩みも客観的に見られるようになるはずです。

10.カウンセリング

 それでもどうしても気持ちが上向かないときは、思い切ってプロの力を借りましょう。心理学の専門教育を受けたカウンセラーのアドバイスを受けることにより、自分ひとりで悶々としていた問題も、少しずつ解決の糸口が見えてきます。「自力で解決できるはず」と必要以上に頑張りすぎてしまうと、余計長引いてしまいます。カウンセリングを受けることは敗北ではありませんので、勇気を持って早めの治療をすることが大切です。

 以上、10点をご紹介しましたが、いかがでしたか?上記の1から5は実際に体を動かすタイプ、6から10は感情面で刺激を加えるものです。特に通訳業の場合、左脳が酷使されますので、感情をつかさどる右脳に心地よい刺激を与えてあげることもバランスを保つ上で大事になってきます。 

 

(2010年3月29日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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