INTERPRETATION

Vol.1 汪以文さん 「 好きを仕事に 」

ハイキャリア編集部

中国語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
汪以文さん

Wang Yiwen

京語言学院(北京語言文化大学に名称変更)卒業後、来日。上智大学大学院国際関係論専攻修士課程修了。大学院在籍中より通訳学校に通い始め、北京/広東語

通訳者としての活動を開始。現在は放送通訳、会議通訳者として活躍する傍ら、週に2日通訳学校と大学にて講座を受け持つ。

日本語の勉強を始めたきっかけは?

ともと英語を勉強していたんですが、中学生の時に偶然聞いたラジオの日本語講座がきっかけで、日本語に興味を持ちました。発音がとてもきれいで、メリハリ

のある言葉だなぁと思い、少しずつですがラジオを聞いて独学で勉強しました。ちゃんと勉強を始めたのは大学に入ってからです。専攻は英語でしたが、日本人

留学生がたくさんいたので、ランゲージイクスチェンジをして日本語会話力を身につけました。来日直後に上智大学に合格したので、スピーキングは割とできた

んだと思います。文法は苦手でしたね(笑)。「てにをは」や、助詞の使い分けは今でも苦労しています。

通訳に興味を持ったのはいつ頃ですか?

さい時から憧れていましたが、当時は英語の通訳者になりたかったんです。オードリー・ヘップバーンの『シャレード』に、オードリーがブースに入って同時通

訳するシーンがあるんです。大好きで何度も観ていました。子供の頃から語学が好きだったのも、興味を持った理由かもしれません。上智大学入学後、通訳学校

にも通い始めました。もともと、文法などをあまり勉強していなかったので、かなりしごかれましたね。うっかりして「こうのとり」のことを、「かんこうど

り」と言ったり、「ひのき舞台」を「えのき舞台」と覚えていたり……。かわいいねと笑っては済まされませんね(笑)。

最初のお仕事は?

訳学校に通い始めて、割とすぐにお仕事を頂きました。実力はなかったのに、環境が恵まれていたんだと思います。初めての仕事にしてはかなり本格的で、台湾

映画監督来日時のインタビュー通訳を担当しました。右も左も分からないまま、現場に放り込まれたという感じですね。昔から、度胸があると言われるので、あ

まり緊張した覚えはありませんが、最初はやっぱりひどかったと思いますよ(笑)。その後もずっと映画のお仕事は頂いています。映画ファンの人たちは、昔か

ら私が通訳しているのを知っているので、時々「あなたの日本語もうまくなったね」といわれることもあるんです!

いろんな分野の依頼があるのでは?

国語一つ取っても広東語と北京語で分野が違うんですよ。広東語は、映画のプロモーション、ファッション、マンガといった仕事が多いんですが、北京語は会議

が中心です。午前中に北京語/日本語で、政治経済関係の通訳をした後、午後から劇場でカンフー映画の舞台挨拶通訳、という日もあります。言葉の使い方も違

うので頭の切り替えが大変ですね。最近は英語/中国語のお仕事も頂きますが、また分野が違って面白いです。いろんなお仕事をさせて頂いて感謝しています。

現在は英中通訳のスキルアップにも力を入れていらっしゃるとか。

もお仕事を頂いているんですが、中日に比べるともっとスキルを磨く必要があると思っています。実は今、英日通訳コースで勉強しているんです。学生の皆さん

と比べると暗記力が追いつきませんが、知識と経験でカバーするしかありませんね。メモ取りやまとめ方などは知っているので、その分はアドバンテージかなと

思っています。

通訳学校での授業は、仕事よりも緊張します。毎回テストがあるので、授業の前は憂鬱な時間を過ごしているんです(笑)。でも、本当にいい勉強になっていま

す。現場でいいフィードバックを頂いても、足りないところって必ずあると思うんです。常に100%はありえません。通訳学校では、間違っていたら先生が必

ず指摘してくださるので、ありがたいです。そういう意味でも、原点に帰ることは大事だなと思います。

お勧めの英語勉強方法は?

率のいい勉強法を編み出そうとしているんですが、考えているだけで終わってしまって、肝心の勉強自体がおろそかになりがちです(笑)。通訳者が書いた本を

読んで参考にする他、アメリカのTVドラマも活用しています。まずは番組を録画して、テープに落とし込むんです。その後スクリプトをインターネットからダ

ウンロードして、テープを聞きながら内容を確認します。繰り返しやらないと頭に残りませんが。それから、ICレコーダーを常に持ち歩いて、その場で覚えた

ことや気になる表現を録音しています。復習する時間が無くて、どんどんデータだけ増えていくんですよ! データを「消去」する自信もなく、気が付けばレ

コーダーは3本目です。

通訳をしていて、一番やりがいを感じるときは?

ライアントに喜んで頂いた時が一番嬉しいです。どれだけ準備が大変だったとしても、無事に終わってお礼を言われた時に全てが報われるというか。準備に関し

ては、できる限り完璧にやりたいと思っています。普段仕事をしていない時でも、常にアンテナを張って、いろんなことに関心を持つようにしています。何を

やっていても言葉に結びつけてしまうので、ちょっと無心でいたいなと思う時もあるんですが。

スキルアップの秘訣は?
仕事をやりっぱなしにしないことです。放送通訳の仕事は、毎回自分の放送をMDに落として聞きます。時間が許せば、もっと他の表現を考えたいなと思っています。昔はテレビから流れる他の通訳者の訳を聞いて勉強しました。皆さん言葉の専門家なので、非常に勉強になりますね。
プロとして心がけていることはありますか?

々勉強です。日本語も英語も、私にとってはどちらも外国語なので、苦しい時期がありました。英語だけ勉強すると、日本語に対する言葉の感覚が衰えてしまう

んです。知っているはずの表現が、すぐに口をついて出てこなくて。両方の言語がお互いに影響しあっているので、今後それをどうクリアしていくのかが私の課

題ですね。例えば、日英通訳時に、レストランで「ここは雰囲気がいいですね」と言われたとします。中国語では「環境がいい」という表現を使うので、つい

environmentと言ってしまうんです。本当はatmosphereを使うべきなのに……と考えていると、思考回路がめちゃくちゃになってしまうと

きがあります(笑)。体で覚えていくしかないんですけどね。

ご趣味は?

学の勉強かな(笑)? 一昨年から、年に2-3回アメリカに行くようにしています。生の英語に触れる必要があると思うので、毎回必ず1週間は語学学校に通

います。もちろん、通訳学校のような授業ではありませんが、現地の様子を知ることができ、新しい表現に触れられるのは嬉しいです。本当はアメリカで本格的

に勉強したいなとも思うんですが、仕事も抱えているので、なかなかうまくはいきませんね。何とか日本でマスターしたいなと思っています。

今後もずっと通訳を?
はい、子供のときから憧れていたので、通訳以外の仕事は考えられません。私自身、この仕事が大好きなので、全く苦になりません。常に勉強するこができ、いろんな人と出会える刺激のある仕事です。今の自分に甘んじず、常に上を目指してがんばっていきたいです。

編集後記
その穏やかな表情からは想像しがたいのですが、非常に自分に厳しい方なのだと思います。成功の陰には地道な努力ありですね!

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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