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通訳・翻訳者リレーブログ

人が人として動き出した

[2015.09.13]投稿者:アース
石川県の中でも最も田舎と言える能登町(輪島市のお隣)というところから、県庁所在地である金沢市に引っ越してから、はや5ヵ月が過ぎました。一応、人口200万人を超える某都市で生まれ育ち、しばらくは東京で暮らしたこともあるわたしですが、今回は久方ぶりの都会生活ということで、若干の不安も感じていました。年に数回は東京で何日か過ごしていたものの、旅行者と居住者ではまったく違います。それは、東京から能登に引っ越した際に、嫌というほど感じたことでした。

最初に東京に引っ越したときは、地下鉄のある程度の都会から東京への移住ということで、「おお、東京だなあ」「人が多いなあ」「空気悪いなあ」「電車が複雑だなあ」と感じる程度。柔軟な20代という要素も大きかったのでしょう。

しかし、東京から能登に移ったときのショックたるや、まさに筆舌に尽くしがたいものがありました。どっちがいいとか悪いとかではなく、「これが同じ日本なの?」という、アゴが外れそうな驚き。まさに文化衝撃。「おお、田舎だなあ」「人が少ないどころか、いないなあ」「空気いいなあ」「電車がないなあ」では済みませんでした。

でも、何年か暮らすうちに、様々な理由から「こちらが本来の日本なのだろう」と思うようになりました。・・・とまあ、まじめな話はまたいつかするとして、きょうは都会へのUターンのお話を少し。

住んで5ヵ月ともなればすっかり慣れてしまいますので、いまや最初の感動もなくなってしまいましたが、鮮明に覚えていることがひとつふたつ。

まだゴミステーションの場所もちょっと不安に感じていたころの話です。自治体によって分別方法もいろいろだなぁ〜覚えるのめんどくさいなぁ〜種類によって捨てに行く場所が違うのかぁ〜とぶつぶつ言いながらゴミステーションに向かっていたとき、ふと気がつくと、わたしの前後左右を、それはそれは大勢の中学生が歩いているではありませんか。

ななななんだ、きょうは何かのイベントでもあるのか??と思った次の瞬間、はっと気がつきました。これはただの通学風景なのだと。

能登町では、半径約10km圏内の地域に住む中学生が1つの中学校に通っていますから、3人以上の中学生が一度に見られるのは、学校のごく近い範囲だけ。そもそも歩きで通う中学生なんかほぼいない。自転車の子が少しと、あと大多数は、町の仕立てた通学用バスを利用するか、親に送ってもらっています。小学生も同じ。そして大学生という生き物はいません。能登町はおろか、いまや能登半島に大学は一つもないからです。

そんな風景のなかで長年暮らした後に、イベントでもないのに何十人もの中学生を一度に見たのですから、それはもう珍しくて。女子生徒の真っ白な靴下とスニーカーが、それはそれは目にまぶしくて。怪しいストーカーさながら、まじまじと観察してしまいました。

その後もしばらく、ただ学校の回りをランニングする中学生が珍しかったり、近くの保育園から聞こえる歌声の大きさにびっくりしたり(何十人もいるので)。窓の外をいろんな人が行き来するのが見えるのが珍しかったり、一時は完全にお上りさん状態でした。

あの感覚が強烈なうちに詳しく書き残しておけば良かったと、いま強く後悔しているのですが、これまでの周囲の状況と異なり、大勢の多様な人々が「普通の生活」をしているのを目にして、逆に「非日常感」「非現実感」を感じた、とでも言ったらいいでしょうか。

能登で暮らしていたあいだ、東京に行っても、「当機は羽田空港に着陸いたしました」とのアナウンスを聞き、「ウム、東京だ」と気持ちを切り替えて飛行機を降りれば、なんなく都会の雰囲気になじむことができました。

ですから、久方ぶりの都会生活も、基本的に問題ないだろう、と思っていたのです。いや、問題はなかったのですが、予想していたよりもずっと鮮烈な印象を受けたことが、自分でも驚きでした。旅行者と居住者では、視点がまるで異なるからでしょう。

東京にいる時、旅行者のわたしにとって、多くの人は人でありながら人でなく、ただ自分の周りを流れる水のようなもの。でもいまの自宅の周りでは、すべての人がきちんと人に見えてきます。そして当然ながら、それぞれがそれぞれの生活を持っています。

近所のおばさんはせっせと野菜を作り、男子中学生はアホな替え歌を歌いながら道一杯に広がって下校し、近くの中華料理店は量が多くておいしいけど、店員のおねえさんはひたすら愛想が悪く、そして古紙回収車のおじさんの声は相変わらずやかましい。

ほんのしばらくの間でしたが、こうしたことがいちいち新鮮で、感動的ですらありました。

もうひとつおもしろかったのは、これもほんの少しの間でしたが、そこはかとない孤独感や、取り残され感を感じる瞬間があったこと。わたし自身はもともと、一人で長時間過ごしてもまったく問題のないタイプです(だから翻訳業などやっていられます)。能登でも特に濃いご近所付き合いをしていたわけではないので、いわゆる都会の冷たさに悲しい思いをした...というわけではありませんし、そもそも地縁血縁のなかった能登から、地縁血縁のない金沢に引っ越したわけですから、条件は同じはずなのですが...。

あえていえば、自分が都会を離れていたあいだ、こんなにたくさんの人々が(当然ですが)自分とは関係のないところで、どんどん前に進んでいた、しかし自分はそれにまったく関わっていなかった......それが取り残された感じにつながった、ということでしょうか。これはいまだによくわかりません。

人付き合いと言えば、近所同士の距離の取り方は特に新鮮に感じました。いまの家はわりと郊外にあるので、近所付き合いもそこそこあるようなのですが、会話をしていると、「この線から先、あなたの世界には踏み込みませんよ」と言っている線が目に見えるようで、興味深かったです。これがいいか悪いかは別として、人によってはそれが淋しくも感じられるのでしょう。ともあれ、田舎にいたあいだ、ずっと「ご近所フィールドワーク」をテーマとしてきたわたしには、大変興味深い体験でした。

※ご近所フィールドワーク:病院の待合室や、スーパーのレジの列などでしゃべりまくるじーちゃんばーちゃんの話の内容を(難解な方言に苦しみながらも)聞き取り、人類学的・民俗学的・社会学的に分析すること。

しかしあっという間に、こうした感慨や感動は消えてしまいました。ザンネン。

また1年、2年暮らしていけば、別の感覚が出てくるかもしれません。今度こそ、リアルタイムで詳しく書き残しておこうと思います。

earth89.JPGじわじわ人気上昇中(らしい)石川県公式キャラクター「ひゃくまんさん」。あまりのキモさに当初、県議会で批判続出だったらしいのですが、奈良県の「せんとくん」の例もあり、からくも生き残りました。もともとは北陸新幹線開業のPRマスコットだったのに、着ぐるみは幅が広すぎて改札が通れないわ、新幹線にも乗れないわで、話題に事欠かないひゃくまんさんです。下の写真はひゃくまんさんの後ろ姿。県名を堂々と背負ってしまう節操のなさ、もとい、勇気には脱帽。

earth90.JPG



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すーじー

すーじー
1998年春、研究留学する夫に同行して渡米。大の苦手だった英語をイチから学びなおすことに。現在はシカゴ在住のフリーランス英日翻訳者として、マーケティングから金融・経済まで幅広い分野のビジネス案件にたずさわる。最近、興味があるのは、DIYと健康になること。[2016年1月start!]

いぬ

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幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。[2008.4.1 start!]

アース

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田舎の翻訳者。外国留学・在留経験ナシ。都会生まれの都会育ちだが、現在はド田舎暮らしで、ネットのありがたさにすがって生きる日々。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。[2015年12月終了]

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。[2007.6.1 start!]

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米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。[2013年7月終了]

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フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。[2010年10月終了]

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フレッヒ
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パンの笛

パンの笛
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幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。[2008年3月終了]

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仙人

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