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第214回 「プ」で始まる言葉を聞いたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

「プ」で始まる言葉、いろいろありますよね。

プール、プロペラ、プリン、プレゼント。

ロマンチックな詩の世界では、神話に登場する神の名前が出てくることが多くて、「プ」と聞くと、「プ」で始まる神を思い浮かべてしまします。

プシュケー、プロメテウス。

そういえば春の女神も「プ」で始まるんだったなと思い出しました。

春の暖かい日に瑞々しい若葉を見たら、春の女神「プロセルピナ」の詩を読まないわけにはいきません!

*****

Song Of Proserpine While Gathering Flowers On The Plain Of Enna
Percy Bysshe Shelley

I.
Sacred Goddess, Mother Earth,
Thou from whose immortal bosom
Gods, and men, and beasts have birth,
Leaf and blade, and bud and blossom,
Breathe thine influence most divine
On thine own child, Proserpine.

II.
If with mists of evening dew
Thou dost nourish these young flowers
Till they grow, in scent and hue,
Fairest children of the Hours,
Breathe thine influence most divine
On thine own child, Proserpine.

*****

プロセルピナの歌(エンナの野に花を摘みつつ)
パーシー・ビッシュ・シェリー

一、
聖なる女神よ 母なる大地よ
あなたの不滅の胸から生まれる
神も 人も 獣も
木の葉も 草の葉も つぼみも 花も
あなたの神聖で霊妙なる力を吹きこみたまえ
あなたの子らに プロセルピナ

二、
露に潤む夕暮れの霧で
あなたは若き花々を育む
香りや彩りを纏う
もっとも美しい歳月の子となるまで
あなたの神聖で霊妙なる力を吹きこみたまえ
あなたの子らに プロセルピナ

*****

読んでいるだけで、春の野山のまぶしいくらい新緑、その若い緑が目に浮かびませんか。

まずもって、タイトルがカッコよすぎます。

Song Of Proserpine While Gathering Flowers On The Plain Of Enna
プロセルピナの歌(エンナの野に花を摘みつつ)

「野に花を摘みつつ」って、そもそも、野に花を摘んだことありますか。

ごめんなさい。私はあります!

燦燦と照るお日さまと、風に揺れる緑の草、そこかしこに咲く野の花。

そんな完璧なシチュエーションで、花を摘まないわけにはいかないでしょう!

*****

生命を育む春は、明るい光だけではありません。

If with mists of evening dew
Thou dost nourish these young flowers
露に潤む夕暮れの霧で
あなたは若き花々を育む

「露に潤む夕暮れの霧」って、カッコよすぎじゃありませんか!

明から暗へ、燦燦とした春光から夕暮れの白露へ。こうしたギャップとコントラストが、情景をドラマチックにして、映画のシーンに惹きつけられるかのように、言葉が響いてきます。

春の女神であるプロセルピナをめぐるお話はどうなっているかと言うと、同じように明と暗のコントラストがあります。プロセルピナはそもそも神によって冥土に連れ去られてしまった娘で、一年の半分を冥土と地上で暮らすことになり、プロセルピナが地上に戻るときに春となると言われています。

う~ん、ギリシャ・ローマ神話には、理不尽に神に連れ去られる系の話が多くて、ときどき呆れてしまうのですが、この詩のカッコよさに貢献しているので、今は許す!

*****

今回の訳のポイント

瑞々しい春の新緑を描いたこの詩。

神話の女神が登場するだけで、かなりカッコいいのですが、何がカッコいいかって、何よりも、木と草の葉を区別しているところ!

Leaf and blade, and bud and blossom,
木の葉も 草の葉も つぼみも 花も

木の葉は leaf ですが、草は刃のように真っすぐ細いので blade となります。

このディテールだけで、山の緑も野の緑も、つまり野山の緑、野山の春、その全体の情景がイメージできますよね。

詩人の目は、形や色のわずかな違いというディテールを見やる感覚が鋭敏です。

花咲く春の野に出かけて行ったら、花も草も、露も霧も、香りも彩りも、すべてが溢れていて、詩人にとっては情報量過剰なのではないかと思えてしまいます。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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