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Waitangi Day

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 夏休みが終わり、今週から新学期が始まりました。ニュージーランドは4学期制で、この学期が新学年の始まりです。娘は日本では小学校4年生ですが、こちらでは小学校最終学年のYear6です。
 と思っていたら今日、2月6日はワイタンギ・デーで祝日です。1840年のこの日、英国側とマオリ首長たちとの間で、ワイタンギ条約が締結されました。ワイタンギは、この条約が締結された地名で、北島の一番北の方にある小さな町です。
 それまで入植者と先住民マオリとの間で紛争が絶えなかったこの地域の沈静化のために、さらにニュージーランドとの貿易を保護するために、ワイタンギ条約が締結されました。
 「ニュージーランドの主権を英国女王に譲渡する代わりに、土地や漁業権などは引き続きマオリが所有する」というものですが、「マオリ人は英国民としての権利を与えられる」という点が、オーストラリアのアボリジニへの処遇と大きく異なるとされています。ただ、この日を境に、ニュージーランドが実質的に英国の植民地となったのは事実です。
 この条約は今でも生きていて、ニュージーランドの国としての在り方のよりどころとなっています。しかし、ワイタンギ条約は英語版とマオリ語版で意味が異なる部分があり、この解釈の違いはいまだに物議をかもしています。
 毎年ワイタンギ・デーには、ワイタンギ条約に抗議するマオリの人たちのパレードやセレモニーでの揉め事が報道されます。
 こちらに移住する前に読んだガイドブックに、「NZでは、マオリ文化が大変に尊重されている。その証拠に公式語も英語とマオリ語である。オーストラリアと違って、白人との関係もうまく行っている」という趣旨のことが書いてありました。
 確かに、ニュージーランドではマオリ文化や美術の素晴らしさは、あちこちで目にすることができます。観光地でもマオリの伝統的な建築や美術品、それからマオリの踊りなどを楽しむことができます。
 でも、マオリと白人の間の格差はちょっと住むとすぐ分かります。まず、住む地域の環境が違い、明確に分断されています。マオリは高等教育に進む割合が低いので、結果的に収入が低く、肉体労働に携わる人が多いです。金銭的な問題も大きいでしょうが、労働観、価値観がいわゆる西洋式のものとは異なることも、進学率の低さの原因の一つです。こういう地域は犯罪率も高く、マオリの若者によるギャング団は社会問題の1つです。
 マオリはもともと、それぞれの地元で一族が団結して住むことが多かったため、数十年前にはオークランドの都市部で見かけることはほとんどなかったようです。今でも、部族としてのつながりは大変に強く、昔の日本の村社会と共通するものがあります。
 そういえばちょっと前に、「クジラに乗った少女」というニュージーランド映画がありました。マオリとしての誇りを持って生きる人々の姿を、少女の目を通して描いたものです。かなり評判になった映画ですが、マオリの伝統にしばりつけられた(ように私には見える)人々に、私は見ていてなんだかイライラしました。
 また、かなり古い映画ですが、「ワンス・ウォリアーズ」は、貧困と暴力にあえぐマオリの人々の話です。見終わると、ずーんと暗くなりますが、こういう世界もニュージーランドには現実として、まだあるのです。
 

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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