HOME > 翻訳 > 翻訳者インタビュー > Vol.44 アフリカの本当の姿を多くの人に知ってもらいたい

翻訳者インタビュー 第一線でご活躍されている翻訳者の「仕事」「自分らしい生き方」
「プライベート」など、生の声をご紹介します。

Vol.44 アフリカの本当の姿を多くの人に知ってもらいたい

宇野みどり Midori Uno

11.12.12_interview_1.jpg

スワヒリ語翻訳・通訳者、法廷通訳、大学講師
青年海外協力隊タンザニア初代隊員として任地に赴任。
その後NHKラジオジャパン・スワヒリ語、翻訳・アナウンスに長年従事
日本初の日本語―スワヒリ語の辞書を作成、スワヒリ語―日本語辞書と共に出版。
「タンザニアのママたち」など著書多数。

大使館でご紹介いただいたことがきっかけで弊社からもお仕事を依頼するようになったスワヒリ語の第一人者、宇野みどりさん。
いつもご多忙な方でメールでしかやりとりをしたことがなかったのですが「スワヒリ語のことしか話せませんがそれでもよければ」とインタビューを快諾していただきました。こんな機会は滅多にないので「なんでスワヒリ語???」「スワヒリ語って何???」とストレートな質問をたくさんぶつけてみました!

Q. 宇野さんがスワヒリ語と深くかかわるようになった時期ときっかけを教えてください。

1967年,青年海外協力隊に参加したことがきっかけです。
小学生の時から両親の影響でボランティアに興味がありました。ガールスカウト隊員やボーイスカウト年少隊リーダーとして、在日アメリカのスカウトとの交流を持ったりしていた頃、時のJ.F. ケネデ・アメリカ大統領が平和部隊を始め、「日本にもそんなのができたらいいな」と思っていた時に新聞で、青年海外協力隊がタンザニア派遣の洋裁隊員を募集していることを知り、洋裁を教えていた私はすぐに応募しました。
採用後の派遣前訓練では、英語のほかタンザニアの国語・スワヒリ語をNHKラジオジャパンのスワヒリ語放送担当者から1週間教えていただきました。
それが私とスワヒリ語との最初の出会いでした。でも出発時期が予定より3ヶ月も延びてしまい、その期間独学でスワヒリ語の勉強を続けました。今振り返るとそのときの独学がすごく役に立ったのかもしれません。
タンザニアは英国植民地だったので、授業は英語でよいと言われていたのですが、生徒は一般家庭の主婦たちだったので,英語があまり分らず通訳の助手がついてくれました(笑)
でも現地の人たちと親しくコミュニケーションが取りたいという気持ちが強くなり、昼間は仕事なので、夜に2年間、大学の外国人向けスワヒリ語コースに通い勉強しました。

帰国後はNHKラジオジャパンでスワヒリ語の翻訳、アナウンス、DJなど何役もこなす職に就き、結局それを20年以上続けました。ニュースを始め、色々な番組ではあらゆる分野の内容を扱いましたので、本当にたくさんのボキャブラリーが身につきました。
そんな時、大学のスワヒリ語のスピーチコンテスト審査員を頼まれ、NHKのケニアやタンザニア人招聘アナウンサーと一緒に審査員を務め、そんなことから大学で教鞭をとることになったのです。
こうやって話してみるとずっとスワヒリ語と関わってきていますね(笑)


Q.スワヒリ語翻訳通訳の仕事の面白さについて教えてください。

"あなたにしかできない"、と私を頼ってこられる人や現場との出逢いでしょうか。
昨年の3月、皇太子殿下ケニア御訪問の際、"スピーチをスワヒリ語で"との殿下のご要望で外務省からご連絡頂き、東宮御所で御進講させていただきました。歓迎会での殿下の御立派なスピーチは大好評だった、との現地の新聞報道や日本のTVニュースを見て、大変うれしく思いました。
また、これは翻訳通訳の仕事とは直接関係ないのですが、BBCやドイツ連邦国際放送局のような海外メディアからスワヒリ語での電話でインタビューされることがあります。時差があるので夜中に電話がかかってきて(苦笑)例えば日本の地震やオバマ大統領の選挙戦時代と当選後に、彼のルーツのこともあり私のコメントがほしい、というようなことです(笑)夜中にたたき起こされてすぐに頭が働くわけがないのに、ね! 今年の地震の時など、アメリカ在住の地震学者、日本在住のケニア人タンザニア人、そして私の4人とアナウンサーで一時間も電話回線を使ったパネルディスカッションもやり、それに東アフリカの聴取者からの質問も入り、面白かったです。でもその番組を聴いたという、海外の友達からの連絡もあり、こんな経験ができるのはスワヒリ語ならではの醍醐味でしょうか。

11.12.12_interview_2.jpg

Q. これまでに一番印象に残ったお仕事をお聞かせいただけますか?

たくさんあり過ぎて何を話そうか迷いますね(笑)
2006年のことですが、タンザニアのキクウェテ大統領ご夫妻が来日の折、ご夫人の通訳をしました。動物園その他一日中あちこち回り、最後に非公式ディナーに同行しました。主催者はある財団だったのですが、当時の扇千景衆議院議長やNHK局長その他、そうそうたる顔ぶれの中で、大統領夫人の自国での女性のための活動の話になったとき、主催者が感激し、その場でポンッ!!!と寄付金を下さるとおっしゃり(笑)横で通訳をしていた私は思わずゼロの数を数え直しましたね(笑)まぁそれはそれはものすごい額でした。あの時は本当に驚きましたし、すごくインパクトがあった現場でした(笑)

他にもノーベル賞や「MOTTAINAI」で一躍有名になられた故マータイ博士の通訳を大パーティでした時のことです。ケニア人は公の席では英語を話す方が多いので、原稿を頂いたわけでもないので、当日お会いするなりスワヒリ語でとお願いしたら、キクユ語で話し ましょうか?などと冗談を言われていたのですが、ケニア大使が開会スピーチを英語でなさった!(苦笑)続いたマータイ博士も英語で長い長いスピーチを始め、結局私は英語の通訳をする羽目になってしまいました(笑)その時は「あー嫌だ、やりたくない」、と思ってもその場から逃げられない。仕方がない。やりましたよ。
ま、そういうことはよくあるのですが(笑)その後の来賓、日本人のスピーチはスワヒリ語に訳せばよかったので本当に気楽でした。

(これ以外にも本当にびっくりするような面白い話、逆に悲しい辛い話など本当にたくさんたくさんお話いただいたのです!!全部書きたいのですがオフレコも多いのもまた事実でして(笑)一貫して宇野さんの懐の深さを感じるものばかりでした。)

Q. お仕事の合間のリフレッシュ方法などはありますか?

大学で教えたり、夜に語学学校で社会人を教えたり、法廷裁判、TVや映画の翻訳もあり、
いただくお仕事の内容が毎回毎回違うのでそのたびにリフレッシュできているんですよ(笑)でも、仕事がリフレッシュなんて回答にならないですね(笑)
だからやはり旅行です。世界のあちこちに親戚や親しい友人たちが沢山いますし、タイ人やタンザニア人の結婚式にも招待されたりし「いらっしゃいよ!」と誘われると「あら、楽しそう!」と思ってつい海外でも行ってしまいますね(笑)
あとは、外務省で外交官にスワヒリ語を教えているので、他言語の外国人の先生方とのお付き合いや、ホームパーティは本当に楽しくて大好きな時間です。又東アフリカ各国外交官のご自宅に招かれ御馳走になるアフリカ料理もとても美味しく、楽しいひと時です。

Q.宇野さんの今後の目標などをお聞かせください。

やっぱりアフリカのことを、アフリカの本当の姿や文化を一人でも多くの日本人にもっともっと伝えていくことです。スワヒリ語の文法書や民話の絵本なども出版していますが、アフリカの現状はまだあまり知られていないので、話すだけでなく、本も出したいです。

11.12.12_interview_7.jpg
(宇野さんの著書の数々をズラッと並べさせていただきました)

Q.長年翻訳通訳をなさっている宇野さんから翻訳通訳者を目指している方に向けてのメッセージ・アドバイスを是非お願いいたします。

仕事をやるからには、引き受けるからには「きちんとした翻訳通訳」をするべきだと思います。分らないことはごまかさず、言い訳はしないことも必要ですね。
そして、これはラジオ放送の仕事を長くしていたので特に思うことなのですが、「わかりやすい、美しい、簡単」な日本語を使うことです。
他の人の通訳を聞くこともすごく勉強になりますね。でも何より上辺だけでなく「心のこもった通訳をする」ことが一番大事だと思います。
最後はやはり・・・・翻訳通訳の両方に通じることですが、一般教養や世界情勢は常に勉強し、それに加え、その言語の国のバックグラウンドをよく勉強することが必要だと思います。それでなければ正しい翻訳はできません。そして何より美しい日本語を忘れてはいけないと思います。


翻訳者インタビュー


↑Page Top