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お国柄!?

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通訳・翻訳者リレーブログ

先日、あるイタリア人ミュージシャンにインタビューしたのですが、この人がまぁ、陽気で面白くて…。
“この話はもうしたっけ?”とか、“ここだけの話だけど”…などと言いながら、もう喋りまくり、脱線しまくり、こちらは笑いっ放し。で、結局、“私の質問、何でしたっけ?”、“あっ、何だっけ? 俺も覚えてない!”…と、まるで収拾がつかず。予定の30分が過ぎ、聞きたいことの半分も聞けていないことに気づいた頃には、そうとう焦り始めましたが。でも後に予定が入っていないことを確認し、結局そのまま1時間半話し続け、やっと聞きたいことをすべて網羅。
通常1本のインタビューは、30-40分ですから、これは驚異的な喋りっぷり。編集に当たる雑誌担当者が、とても困っていましたっけ(笑)。
で、この人、“いやぁ〜、何たって俺は、話好きのイタリア人だからさ。ハハハ。楽しかったなぁ。また話そうぜ!”…と言っていまして。イタリア人はやはり、自他共に認める“そういう人達”なのですねぇ。いやはや。

私は“この国の人達は〜”とか、“あの国の人達は〜”という言い方は、あまりしたくはないのですが、でも、“あぁ、国によって、色々あるなぁ…”と痛感する場面にはよく遭遇します。もちろん、同じ国でも色々なタイプの人がいるわけですし、音楽業界という限られた世界の中の、ハードロック&ヘヴィメタルという、これまた限られたタイプの音楽をやっている人々、おまけに私の限られた経験の中での感想なのですが…。
でもこの仕事に携わるようになり、世界各国の人々と話す中で、それぞれに愛すべき特徴があるのは、確かなような気がします。

まずはアメリカ人とカナダ人。同じだと思われがちですが、はっきりいって違います。カナダ人は、“自分達の方がlaid-backだね”…と形容し、アメリカ人と一緒にされるのを嫌がります。アメリカ人の方がサービス精神旺盛で、カナダ人はどちらかと言うと、とてもマイペース。ライヴでの盛り上がり方も、その性格がそのまま出ている感じです。
ドイツ人は、ミュージシャン特有の色気は、あまりありません(笑)。でも堅実な人が多いです。1年前のインタビューの内容をちゃんと覚えていますし、約束は絶対に守ってくれますし、メールで何かを問い合わせても、即答してくれて感動したことが、1度や2度ではありません。
スウェーデン人、ノルウェイ人、フィンランド人は、素朴で穏やかな人が多いですね。“僕達はカナダ人に似ていると思う”…と言っていた人もいました。それから、全米ツアー終了直後に来日したアーティストに、開口一番、“あぁ、日本へ来るとホッとする”と溜息交じりに言われ、笑ってしまったこともあります。
余談ですが、“なんで日本人はオーロラのことで騒ぐんだ?”…と不思議がられたことが、何度かあります。自分の家や別荘から、毎日“太陽や雲のように”当たり前のように見えるのだとか。羨ましい。
そうそう、あるフィンランド人に、“僕達はスウェーデン人とノルウェイ人とは、文化も歴史も異なるんだよ”…と言われ、勉強不足の私は、びっくりしたこともあります。

さて、逆に彼等の日本及び日本人評というのが、また笑えるくらいに共通しています。
みんな必ず言うのは、“観客がじっくり音楽を聴いてくれる!”…との感想。ホテルや移動中に出会うファンの礼儀正しさにも、いつも感動しています。
“インタビュー時間もリハーサル時間も、とにかく時間どおりに進むので、とても気持ちが良い”…ということも。ラテン系の人達は、特に感動していますね。最初は戸惑っていますが、でもこれがだんだん、快感に変わっていくようです。
あるイタリア人も、言っていました。“初来日時、とにかくインタビュー・スケジュール表を見て、驚いたよ。だって3時40分から4時10分までってインタビューまであるんだぜ!”…と。はい、それは普通にあることです。でも、そんな“半端な時刻”に始まり、“半端な時刻”に終わるなんて、実際は無理だろうと思っていたら、そのとおりに進行したので、驚き&感激したのだとか。自国では、3時か4時か5時か…と、つまり、ピッタリの時刻始まりしか、絶対あり得ない。だいたい、予定どおりにことが進むことはまずない…と。
でも離日までに、そういう日本にすっかり慣れ、居心地良くなっている自分に驚き、帰国後いつもの“イタリアン・タイム”に直面し、逆カルチャー・ショックを受ける…のだとか。可笑しな話。

話変わって、同じハードロック・ヘヴィメタル界でも、その国特有の“音”というのも存在します。
アメリカには、明るくスケールの大きく、エンターテイメント色の強い“アリーナ・ホール・バンド”が存在します。それから80年代に一世風靡し、最近再び盛り上がっている“LAメタル”。クレイジーでダーティーでセンセイショナルでグラマラス。まさにザッツ・ロサンゼルス! そう、私の大好きなタイプですが、これは他の国の人々には真似の出来ない、独特のサウンド&ノリですね。
一方、ドイツや北欧には、非常に抒情的で壮大な、“様式美”追求型のバンドが多いです。
思い出しましたが、あるフィンランド人は、“俺達の国は白夜が長いから、飲むか自殺するか曲を書くか、それしかやることないんだよなぁ”と、冗談交じりに言っていましたが、彼等の曲には、憂いに満ちた物悲しい作品が多いですね。
逆に、故国ドイツからアメリカ・カリフォルニア州へ移住した、私が“神”と崇めるアーティストがいるのですが、切なくも美しい旋律を生み出していた彼が、パームツリーの下で生活するようになってからというもの、音がガラッと変わってしまいまして。“昔のような音が出せないんだ”と、御本人も認めていましたっけ。うーん、難しい。

余談ですが、パート別の性格というのも、少しあるんですよ。
バンドのヴォーカリストは通常、曲づくり担当であり、とても話上手なので、インタビュー担当の人が多いですね。ベーシストは、縁の下の力持ち。インタビュー中も寡黙、前面に出ることはないものの、時々素晴らしい一言を発したりと、良い味を出していて、なくてはならない存在。そうしてドラマーには、明るくヤンチャで、バンド内の雰囲気作り担当、盛り上げ役が多いです。

最後に、こちら以前に読んだものですが、なかなか面白かったので、ご興味おありの方は、ぜひ:
『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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