第680回 フリーはつらいよ
BSテレ東で毎週土曜日に放映している映画シリーズ「男はつらいよ」。確か数年前も一気に放映していたので、今回は2ラウンド目のようです。寅さんはほぼ全作が国内ロケですが、唯一の例外があります。1989年の第41作「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」はウィーンが舞台。実はこの時に協賛をしたのが私のかつての職場KLMオランダ航空です。映画の中で寅さんがスキポール空港から妹のさくらに電話をかけているシーンがあるのですが、そこの公衆電話に小銭をひたすら入れ続けているのは私の元上司です(笑)。
さて、本日のタイトルはその寅さん風の「フリーはつらいよ」。寅さん同様、身軽で自由なフリー通訳者ではありますが、ツライ部分もあります。今回は日誌風で。
3月某日
ずっと観たいと思っていたアーティストの来日公演まであと1カ月!そろそろ曲の予習をしないとね。歌詞の意味調べからアーティストのプロフィールまでウィキペディアで調べたくなるのも、通訳という仕事柄かも。
4月某日(ライブ前日)
さあ、いよいよ明日がライブ本番!楽しみだなあ・・・って、あれ?明後日って早朝シフト?うわ、見落としてた。ってことは夜にライブから戻ってきたら睡眠時間わずか。ほとんど「仮眠」の世界だけど、まあ何とかなるわよね、大丈夫!唯一の注意点はライブ中に声を出し過ぎないこと。ノドが商売道具だから気を付けないと。
4月某日(ライブ当日)
「とにかく熱唱するのは避けよう」と言い聞かせながら会場へ。ところが、いざ始まるや一曲目からファン待望の曲が流れ始めて全員で大盛り上がり。「いけない、これでは喉を傷める」と思いつつ、休憩まで通しで歌ってしまう。休憩中はお隣のファンの方とアーティスト談議で盛り上がってひたすらお喋り。休憩後は終演まで「控えめに歌っているつもり」の自分を客観視するも、帰路、心配になりマスクの中でこっそり発声練習。「よし、大丈夫、枯れてはいないから明日は通訳OK」と納得させながら家路へ。
4月某日(ライブ翌日)
無事早起きして早朝シフト。声も普通に出て問題なし。「思ったより私は喉が強いかも?」と根拠のない自信に満ち溢れる。
4月某日(ライブ2日後)
今日は在宅ワーク。声も問題なし・・・と思いきや、夜になって喉に違和感。おかしい。明日は100分授業2コマ、夜は帯同通訳。治さねば。喉飴と喉薬服用して早めの就寝。なお、授業は「休講+課題or補講」の選択肢があるも、通訳の場合は「体調管理も仕事のうち」なので急なキャンセルは信用問題に。体調不良となれば早めにエージェントへの連絡が必要。その見極めをどうするかで悩む。早ければ早いほどエージェントはピンチヒッターを立てられるので、ギリギリまで悩むのはNG。と言いつつ、咳も熱も無いので様子見で行くことにする。
4月某日(授業日+通訳日)
喉の痛みも無くなり、無事授業2つ終了。発熱の時点で要ピンチヒッター要請になるのだが、今のところ平熱なので今回は頑張ることにする。とりあえず一旦午後に帰宅して休憩、夕方から帯同通訳のため現場へ。無事、業務を終えて帰宅22:30。
4月某日(翌日)
そして本日も早朝シフトで03:30起床。喉の痛みも熱もなく、何とかここまで来られた。ふー。一時は業務キャンセルをせねばならないかと焦ったが、穴をあけることもなく完了。自分でも冷や冷やしたが、これもフリーランスならでは。
・・・という感じで1週間が終わったのでした。仕事に穴をあけられないという意味で「フリーはつらいよ」。でも、こうして無事切り抜けられて安堵しております。
(2025年5月6日)
【今週の一冊】
「超速読力」齋藤孝著、ちくま新書、2019年
以前の私は書店に行っては「大人買い」をしていました。しかし、結局読み切れず、転居の際に大量処分。以来、本は「図書館で借りる」を原則としています。購入にも図書館にも長所短所ありますが、今のところ私には図書館が性に合っているようです。
今回ご紹介するのは明治大学・齋藤孝教授の「速読」に関する一冊。しかも単なる速読ではなく「超」が付く速読です。目的は「読後にコメントを言うこと」です。感想を述べるとなると、読むうえでの工夫も必要になってくるのですよね。
印象的だった点をいくつか挙げると:
*すべて読まなくて良い。巻頭から読まなくて良い。むしろ集中して拾い読みでOK
*思い切って巻末から遡る読書も良し
*同時進行で複数の本を読むのも大歓迎
なるほど、このようなとらえ方だと気軽に読めますよね。中でも私自身なるほどと思ったのが、読書を「農耕型」と「狩猟型」に分けてあったことです。「冒頭から順序通り読む」という従来の読書は農作業で言うなら、「種をまいて水をやって収穫する」というスタイル。途中でやめてしまえば収穫はゼロとなります。
一方、狩猟型読書は「狩りの時間制限がある」からこそ、短時間で狙いを定めて獲物を捕らえるというもの。何かしら射止められれば手ぶらで帰ることにはなりません。
読書に対してハードルの高さを感じている人に、ぜひ読んでいただきたい指南書です。
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