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第284回 ケーキを食べているときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

ケーキと言えば、誕生日ケーキに、クリスマスケーキ。モンブランからフルーツのタルトまで。

お店に並んでいるケーキを見ていると、どれも食べたくなってしまいます。

スポンジケーキに載ったふわっふわのクリームとフルーツを前にして、牛の詩を思い出しました。

牛とケーキに何の関係があるのか。この詩を読んでみてください。

*****

The Cow
Robert Louis Stevenson

The friendly cow all red and white,
I love with all my heart:
She gives me cream with all her might,
To eat with apple-tart.

*****

牛さん
ロバート・ルイス・スティーブンソン

赤白の牛さんはね 友だちなんだ
大好きなんだ
一生懸命クリームを作ってくれるんだ
りんごのタルトと一緒に食べるんだ

*****

牛=クリーム=ケーキ。

子どもならではの強烈な連想力が4行に凝縮されていますよね。

The friendly cow all red and white,
I love with all my heart:
赤白の牛さんはね 友だちなんだ
大好きなんだ

まず、子どもにとって、牛は牛でなく、「牛さん」ですよね。

親しみある存在として、牛さんを見ているわけですが、そんな牛さんは赤白。

乳牛と言えば、白黒が一般的ですが、赤っぽい茶と白の牛も存在しますよね。

白黒の牛の中に、赤白の牛がいたら、子どもが特に注目するのも頷けます。

She gives me cream with all her might,
To eat with apple-tart.
一生懸命クリームを作ってくれるんだ
りんごのタルトと一緒に食べるんだ

そんなお友だちとしての牛さんと、どのような物語が展開されるのかと思ったら、まさかのクリーム!

せめて、牛→牛乳→クリームという連想であってほしいところ、牛→クリームというものすごく直接的な連想。

確かに、子どもにとっては、牛から搾乳した牛乳を加工してクリームにするという製造工程をイメージできなければ、牛からクリームができるというぐらいの結びつきになるのも頷けます。

そして、そのクリームがどうなるかと言えば、りんごのタルトと一緒になって出てくるということに!

考えてみてください。クリームたっぷりのりんごのタルトを食べるときの幸福感を!自分にとって身近な存在の牛さんと、目の前のりんごのタルトが、子どもの中では一直線につながっている。

今度ケーキを食べるときは、モーモー言っている牛さんをイメージして食べてみようと思います。

*****

今回の訳のポイント

牛=クリーム=ケーキという子どもらしい発想力の詩。

詩人ロバート・ルイス・スティーブンソンは、こうした子ども向けの詩を多く残しています。

子どもっぽさが表れた詩の特徴の一つに、動物などの擬人化があります。

The friendly cow all red and white,
I love with all my heart:
赤白の牛さんはね 友だちなんだ
大好きなんだ

この詩でも、牛はただの家畜でなく、 friendly 「フレンドリー・親しみやすい」という人間のような性格をちゃんと与えられています。

ここで、訳す上での大問題が発生します。 friendly という単語をどう訳せばいいのでしょうか。

子どもに、「そっかあ、牛さんが好きなんだ!どんな牛さん?」と聞いたとして、「う~ん、親しみやすくてフレンドリー」と子どもに言われたら腰を抜かしますよね。

大人の会話であれば、 friendly は「フレンドリー」か「いい人」くらいに訳す場合もあるかと思いますが、ここは子ども。

仲が良いクラスメイトがいるらしいと分かって、「そっかあ、ロバートくんはどんな子?」と子どもに聞いたら、何と答えるか。

きっといい言葉が見つからず、「う~ん、友だち」と言うのではないかと!

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記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOでの経理・人事やプロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーションにて英語・日本語学習プログラムの開発・管理に従事。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学したり、2500冊の蔵書をもとに読書会を主宰したり、言葉が大好き。
現在は、NPOで障害や難病を抱える当事者やその家族とともに「誰でもビーチ」という活動を運営しつつ、フォトグラファーとしても活動し、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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