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第292回 「ごめんね」と言いたいときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

「ごめんね」

自分の非を認めて謝るのは、なかなか難しいものです。

悪いのは自分だと気づいて、「ごめんね」と言わなければいけないし言いたいと思ったとき、心がキュッとしながら思い出す詩があります。

「鳥」という詩なのですが、謝ることと鳥に何の関係があるのか。まあ、読んでみてください。

*****

A Minor Bird
Robert Frost

I have wished a bird would fly away,
And not sing by my house all day;

Have clapped my hands at him from the door
When it seemed as if I could bear no more.

The fault must partly have been in me.
The bird was not to blame for his key.

And of course there must be something wrong
In wanting to silence any song.

*****

鳥
ロバート・フロスト

鳥のやつ、どこかへ飛んでいってくれないかな
一日じゅう家の前でピーチクパーチク、うるさいな

玄関から手をたたいて追い払おうとした
もう勘弁してくれ、とばかりに手をたたいた

でも、悪いのはこっちだったのかもしれない
あの鳥の声は責められる理由なんてないんだから

きっと間違っているんだ
その歌が何であれ、黙らせようと思う自分が

*****

なんて素直で清々しい謝罪の気持ちなんでしょう!

イライラ→敵意→気づき→反省、という綺麗すぎる流れを、順番に見ていきましょう。

I have wished a bird would fly away,
And not sing by my house all day;
鳥のやつ、どこかへ飛んでいってくれないかな
一日じゅう家の前でピーチクパーチク、うるさいな

鳥がピーチクパーチクうるさいと思ったことありますか。

爽やかな朝にちょっとチュンチュンまではよくても、それがどんどん集まってきて、チュンチュンチュンチュンチュンチュンとずっと続くと、いい加減頭がおかしくなるかもしれないですね。

Have clapped my hands at him from the door
When it seemed as if I could bear no more.
玄関から手をたたいて追い払おうとした
もう勘弁してくれ、とばかりに手をたたいた

チュンチュンうるさいぞと思ったとして、追い払おうと思うまでって、どれだけうるさかったのでしょう。

でも、まだちょっと可愛げがあるのが、鳥に近づかずに、遠慮がちに玄関のところからパンパンと手をたたくところですよね。

こうやって垣間見える優しさがフラグとなって、詩は一気に方向転換します。

The fault must partly have been in me.
The bird was not to blame for his key.
でも、悪いのはこっちだったのかもしれない
あの鳥の声は責められる理由なんてないんだから

悪いのは自分。自分が間違っていた。

そう気づいて、素直に認められるのが素敵ですよね。自分が勝手にイラっとしただけで、相手はそもそも何も間違ったことはしていなかった。そう気づいたときの恥ずかしさと言ったら、堪らないですよね。

And of course there must be something wrong
In wanting to silence any song.
きっと間違っているんだ
その歌が何であれ、黙らせようと思う自分が

ここグッと来ませんか。

黙らせようと思う自分が間違っている。その相手は、今目の前にいる鳥だけでないんですよね。

英語では any song と言っているので、「誰のどんな歌であれ」という意味で、つまり、相手が誰でどんな声であれ、黙らせようとする魂胆そのものが間違っているのだと。

最初、鳥がピーチクパーチクうるさいと思ったところから、それを黙らせようとする自分のやましさを責めるという展開。

こんなにも素直に謝れるなら、自分もちゃんと謝ろうと思えてきます。

*****

今回の訳のポイント

最初はイラっと来ていた相手に対して、最終的に自分の方が間違っていると認めるという、爽やかなこの詩。一番難しいのは、そのタイトルです。

A Minor Bird
鳥

このタイトル、日本語にするのがすごく難しいですよね。

Minor と言っているので、「取るに足らない小さな鳥」というのが文字通りの意味になります。

まず、ただサイズとして小さいのではないので、「小鳥」でも「小さな鳥」とも言えません。

ここでは、特別な配慮を必要とする相手ではなく、取るに足らない存在であるということになります。だからと言って、「取るに足らない鳥」だと説明的すぎるし、「鳥のやつ」とすると少し強すぎる気もします。

そこで、ふと気づきます。取るに足らず、特別な配慮を必要としないのならば、ぶっきらぼうに言ってあげればいいのだと。

つまり、「鳥」とだけ言えばいいのだと!

英語で意味することを、日本語として一番伝わるように訳そうと思ったら、訳さないという結果になりましたが、いかがでしょう。

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOでの経理・人事やプロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーションにて英語・日本語学習プログラムの開発・管理に従事。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学したり、2500冊の蔵書をもとに読書会を主宰したり、言葉が大好き。
現在は、NPOで障害や難病を抱える当事者やその家族とともに「誰でもビーチ」という活動を運営しつつ、フォトグラファーとしても活動し、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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