INTERPRETATION

第48回 マネジメント用語 その3

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。先週はパリで国際会議の同通をしていたのですが、帰ってからセーヌ川増水でルーブル美術館が休館になったというニュースを知って驚きました。すぐ近くを通ったのにぜんぜん気が付きませんでした。週末は天気が回復したようでよかったです。

今週も引き続き、マネジメント関連の用語を紹介します。前回、M&Aにおいて原材料の調達力強化などを狙って行う「川上統合」と、販売機能や市場管理の強化を狙う「川下統合」について説明しましたが、このようにバリューチェーン*(後述)の上下に展開することを「垂直統合 (vertical integration)」言います。

一方、同じような製品やサービスを提供している企業(ライバル会社)との統合は「水平統合 (horizontal integration)」と呼ばれ、こちらはシェアを拡大し、規模の経済*(後述)のメリットを享受することが目的です。自動車(ルノーと日産)、携帯電話(ソフトバンクと米スプリント)、製薬、金融などの業界で広く行われています。

また逆にそれまで開発から販売までの上流から下流までを一貫して行っていた業務を分けて委託することを「水平分業 (horizontal specialization) 」と言います。こちらはそれぞれの専門分野に特化するようなイメージです。

バリューチェーン (value chain)とは、原材料の調達から生産、物流を通して製品・サービスが顧客に届くまでの企業活動を一連の価値(Value)の連鎖(Chain)としてとらえ、それぞれの段階で付加価値が生み出されているという考え方です。また昨今のグローバル化により、企業が生産工程の最適化を図るために、複数国にまたがって財やサービスの供給・調達を行うことをグローバル・バリューチェーン(global value chain, GVC)と言います。

規模の経済(規模の経済性、スケールメリットとも)とは、生産規模を拡大すると生産物の単位当たりのコストが下がり、効率が上昇すること。英語ではeconomies of scale。

今シリーズで紹介しているbackward/forward integration, vertical/horizontal integration, economies of scaleなどはすべてイギリスの高校レベルの経済学の教科書に出ている表現で、ビジネスでもよく使われるので覚えておくと役立つ日が来ることでしょう。

ところで北海道の大和君。無事見つかってよかったですね。BBCでも行方不明になったときから連日報道されていました。前回helicopter parentingで子育てについて少し触れましたが、私自身二人の息子の子育てで色々と悩み、試行錯誤を繰り返したこともあります。でもある段階から「しかる」よりも「ほめる」に重点を置き、可能な限りNoと言わないようにすると好循環が生まれることに気が付きました。自分自身、しかられるよりほめられるほうがずっとやる気が出るので、なるべくほめて、小さな喜びを積み重ねていくことを意識しています。このアプローチは講師業にも取り入れています。日本ではどちらかというと「しかって育てる」アプローチのほうが一般的なように思いますが、私は経験上「ほめて育てる」方が良い結果が出ると信じています。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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