INTERPRETATION

第155回 Brexit、ついに交渉がまとまる!

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。今月も色々と大きなニュースが流れましたが、本コラムで取り上げるべきトピックはやはりBrexitでしょう。EU離脱決定の国民投票から2年半近く経ち、正式離脱の日が刻々と迫り、「交渉が難航(impasse)」「合意なき離脱 (no deal Brexit)」という言葉もよく聞かれていましたが、ついに11月25日欧州連合首脳会談にて離脱協定が正式に承認されました。

欧州委員会のユンカー委員長は、「喜んだり、祝福したりするようなことではなく、悲しく、つらいことだ(It’s not a moment for jubilation nor celebration, it’s a sad and tragic moment)」とコメント。Brexitはよく離婚(divorce)に例えられますが、やはり離婚を突き付けられて渋々離婚届に調印した夫のように聞こえます。もう一人の夫(?)、トゥスク議長は、「これから色々と大変だけど、ずっと、ずっと友達だからね(A head of us is a difficult time …(中略), but we will remain friends until the end of days, and one day longer)」。一方、英国のメイ首相のほうは、「あなたのことを嫌いになったわけではないのですが、考え方の違いもありますし、他の人ともお付き合いをしたいので婚姻関係は解消させていただきます。もっとましな離婚条件を望んでいましたが、時間切れなのでもうこれでいいです。ずるずるするのもどうかと思いますし、お望みの手切れ金も支払います。はい、お友達関係だけならこちらこそ、ぜひよろしく」(すみません、グリーンの創作です。引用ではありません)という感じで合意をしました。

関連用語を挙げると。。。

1.離脱協定・離脱案: 短くはBrexit dealやthe EU withdrawal agreementなどと言われますが、 the UK’s withdrawal agreement from the European Unionとも。この文書は585ページに及ぶそうです!

2.承認する・合意する:endorse,  give it one’s backing, sign offなども使われていますが、approve (名詞:approval) がよく使われています。

3.合意なき離脱:上記のno deal Brexit以外にも、leave the EU with no dealのように動詞を使っても表現できます。今回、EU首脳により離脱協定が承認されましたが、これでno deal Brexitの可能性がなくなったのではなく、イギリスの議会と欧州議会での承認というハードルが残されています。

4.backstop(バックストップ):交渉が難航している一番の理由は、本コラムで何度か取り上げているアイルランド共和国と北アイルランド(イギリスの一部)の国境問題。アイルランドは別の国ですが、1998年のベルファスト合意(Good Friday Agreement)以降、北アイルランドとの国境は事実上なくなり、人やモノが自由に行き来しています。この状態を続けること(no hard border)が両アイルランドの人々にとってとても大事。そこで北アイルランドだけはEU規則に従わせるという英・EU の折衷案。

5.People’s Vote:EU離脱に関して再投票を求める残留派の市民団体。10月に70万人規模の市民デモを実施。ただし、イギリス政府は再投票に関して一貫して否定しています。

以上、Brexitのアップデートでした。クリスマス休暇に入る前には英国議会の承認を得る予定。根強い残留派(Remainers)や不満を抱える強硬離脱派(Hard Brexiteers)がどう出るのか、来月も注目のニュースです。

ところで、ヨーロッパの通訳市場ではイギリス以外の国々でも英日通訳の需要がかなりあります。それぞれの国には現地語の通訳者(フランスなら日仏)はいても英日通訳をする人の数は限られているので、イギリス在住の英日通訳者が出張することになります。私の場合ロンドンで通訳する日数に比べると出張のほうが圧倒的に多く、今年は恐らく1対10くらいでした。今月は、ウィーン、ブリュッセル、パリでの仕事が続き、本コラムをしばらくお休みさせていただき失礼しました。

パリの滞在中にはカルロス・ゴーン氏の逮捕や、観光名所のシャンゼリゼ通りで抗議デモの暴徒化2025年大阪万博開催決定など、パリ発信のニュースが多く流れましたが、中でも、2025年万博に関しては、昨年4月に立候補を表明して以来、誘致活動にかかわってきたので開催が決定して感激しました! 関西でも国際的な会議が増えるチャンスにもつながり、翻訳・通訳の需要も増えることでしょう。ラグビーW杯、東京五輪に続く国際イベント。今から楽しみです。

2018年11月25日

(2025年の万博開催地が決定した夜、抗議活動が行われるほんの12時間前のシャンゼリゼ通り)

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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