INTERPRETATION

サッカーでの応急処置

木内 裕也

Written from the mitten

 昨年10月に私が審判をしていた試合で選手が呼吸停止になったことを以前に書きました。先日の試合ではかなり大きな怪我が発生して、処置をすることがありました。

 冬のミシガンは氷点下で常に積雪ですから、公式の試合はゼロです。しかし室内型のサッカー競技場(通常のサッカー場のサイズです)が複数あり、そこでは試合が行われています。私も体力維持などの目的で月に何試合か審判をしています。先日も審判仲間を数人集め、週末を利用して運動をしてきました。その中の1試合で、選手が転倒したときに手のひらを突いてしまったために、完全に手首から先が外れてしまい、かなりの確立で骨折と思われる状況になってしまいました。

 通常、審判員は怪我をした選手がいても選手に触れることはありません。各チームにトレーナーがいますし、そうでなくても医療従事者のレフェリーは少ないからです。優しさのつもりで手伝っても、何かあった場合には裁判につながりますし、その場合サッカー協会などは一切そのレフェリーをサポートすることはできません。例外なのは医師や看護師、救急救命士などの資格を持つ一部のレフェリーです。私は救命士の資格がありますから、救急車が到着する前に処置を行うことができました。

 骨折や脱臼については、そのままの状況を維持して安定させることが第一です。私の車の中には救命士用のキットが入っていますので、一緒に審判をしていた友人に、それを取りに行ってもらいました。同時に救急車も呼び、その到着までに救急キットの中にあったSam Splintと呼ばれる道具などを利用して固定しました。

 救急車にはより高度な道具がもちろん積んであります。その救急車で来た救命士2人と一緒に点滴を行い、モルヒネを注射しました。その後患部をより固定した頃には、選手の顔がモルヒネの影響で赤らんできたので、その効果が現れ始め、痛みを感じないようになってきたようでした。

 かなりのスピードで選手は走っていましたし、倒れる勢いも大きかったので、手首には相当の衝撃が掛かったのでしょう。長い間に渡って患部の固定が必要になると思います。サッカーなどの競技には大きな怪我が付き物とはいえ、数ヶ月前の呼吸停止や今回の件など、救急車を呼んでその場で処置が必要なケースが続いたのには驚きました。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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