第341回 連載再開! 7年越しの一冊を出版しました
読者のみなさま、お久しぶりです。ハイキャリアのサイトが復活し、またこうして連載を再開することができ、とてもうれしく思っています。これからも、翻訳の現場で起きていることや出版の裏側を、みなさまにお届けしていきますね。
閲覧できなかった期間にも、たくさんのうれしいニュースがありました。デビューサポート企画参加者のよしとみあやさんは次々と企画を前に進められていて、頼もしいばかり。4月には翻訳された『デュポン書店の奇妙な事件』の読書会を開催させていただく機会もありました。国枝成美さんも『巨富を築いたビリオネアの思考法』を出版され、着実に出版翻訳家としてのキャリアを確立されています。
さらには、新しい企画通過者も誕生しました! こちらの件については、後日インタビュー記事として詳しくお伝えしていきますね。企画を通して出版を実現させた方のお話は、大きな励みになるのではないでしょうか。
そして私自身も、前回の記事で翻訳を終えた本を、無事出版することができました。校正もかなり大変で、念校を出した後に念念校(?)まで出して文字通り念には念を入れて、お届けした一冊です。それがこちら、『認知症と性とウェルビーイング ―パーソンセンタードケアの視点から』です。

出版に先立ち、「訳者あとがき」を全文公開しました。冒頭は、こう始まります。
“本書は、私にとって「執念の翻訳書」です。
原書を読んでぜひ日本語版を出したいと思い、2019年から翻訳書企画の持ち込みを始めました。ブリコラージュでの出版が決まるまで10社に断られ、長い時間がかかりましたが、ようやくこうして読者の皆さまにお届けできることとなりました。”
なぜ「執念の翻訳書」と呼ぶのか。この本にどれほどの価値と必要性を感じてきたのか。その背景も含めて、あとがきの中で詳しくお伝えしています。長文ですが、よかったらこちらの記事から全文をご覧ください。
帯文は上野千鶴子さんがお寄せくださいました。
“認知症の親が性的な存在だと、
あなたは認めたくないかもしれない。
だが性と親密さとは、
人生の最後まで大切なものだと、
本書は教えてくれる。”
この帯に目を留めてくださる方も多いのではと思います。本書は、認知症ケアに関わる方だけでなく、人文書が好きな読者層にも響く内容です。そこにアプローチすることで読者層を広げていきたいと考えているのですが、そんな読者にも訴求力のある帯文をいただくことができました。
企画持ち込みの段階で、フェミニズムの文脈からも読者層を広げられるのではないかと考え、ご相談したのが上野さんでした。15年ほど前に一度お会いしたことがあるだけで、ほとんど面識はなかったのですが、思い切ってお便りを差し上げたところご相談に乗ってくださり、帯文を書いていただくことにつながりました。
日本語版序文は認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子さんがお寄せくださいました。長年、認知症の当事者の方々に寄り添う活動を続けてこられ、絶大な信頼を得ている専門家です。「NHKで認知症の特集をするときに解説をする先生」といえば、イメージしていただきやすいでしょうか。
日本語版ではさらに、現場の実践者の方々の寄稿も特別付録としてつけることで、日本の読者との橋渡しができるように試みました。
こうして、いわば万全の布陣で出版することができました。持ち込みを始めてから、実に7年。こういう形で世に送り出せたことで、長年の地道な努力が報われる思いがします……が、まだまだです! 本は出すだけで終わりではありません。本当の意味で報われるのは、読者のもとにお届けできてからのこと。
というわけで、次回は発売後にどんなことに取り組んでいるのかをお伝えします。
※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。
※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。
※雑誌『セラピスト』で「寺田真理子さんと作る セラピストの本棚」を連載しています。最新号の8月号は「怒り」をテーマに、感情との向き合い方やおすすめの本をご紹介しています。ご覧いただけたらうれしいです。