INTERPRETATION

「アメリカ人大学生のインターンシップ」

木内 裕也

Written from the mitten

 今回はアメリカの大学生にとって大きな悩みとなるインターンシップの話です。ミシガン州は全米の中で一番失業率が高く、ミシガン州トップレベルの成績を残している学生であっても、卒業後にきちんと仕事が見つけられるよう、学生時代から夏休みなどは必死にインターンシップを行っています。機械工学を専攻している友人は大学2年生が終わったところですが、今年の夏にインターンシップを行わないと、就職の可能性が減ってしまうと心配しています。非常に優秀な学生ですから、「そんな心配はないよ」というのですが、私とはあまりに分野が違いますから、あまり無責任なことも言えません。

 しかし先日はインターンシップに向けた面接に行ってきたようです。ミシガン州立大学から車で30分くらい南に向ったジャクソンという街で面接が行われたと言っていました。なかなか面接は得意になれないそうですが、まあまあの感触を得たようです。また同じ会社の別の部署のインターンシップに向けた面接も取り付けたようで、どちらかがうまく行けば嬉しい、と言っていました。

 学部や分野によって大きな違いはあるようですが、大学1年生や2年生の終わりにインターンシップを捜し求め、それが卒業後の就職を左右するというのを聞き、また親しい友人がそれを経験しているのを見ると、アメリカ社会の変化を反映しているようにも思えます。

 大学に入学して1年後や2年後のうちにインターンシップを見つけるということは、それまでに自分の専攻だけではなく、将来つきたい仕事の大体のイメージを持っていなければなりません。もちろん途中で考えを変えることも十分にできますが、専攻を持たずに大学を受験して合格し、2年次や3年次に専攻を決めることが珍しくないアメリカにおいて、私の友人のようなプレッシャーを感じるというのは、これまで可能だったその様なアメリカの大学生活を間接的に難しくしているといえます。

 彼女の場合、機械工学が専門ですが将来は人工関節などをデザインする医療関係の道に進みたいといっています。毎日のようにこなしている宿題を見ると、生理学や物理学など私とは縁の無い分野を勉強しています。もしもこの夏にインターンシップを行うことができれば、冬や春にも同じ会社で経験を積むことができる可能性が出るそうです。その経験がもちろん就職を左右するわけですから、彼女だけではなくほかの学生も必死です。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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