INTERPRETATION

「モバイル通信」

木内 裕也

Written from the mitten

 「いつでも、どこにいてもつながっている」というのは携帯電話やインターネットの普及率が高まっている現代社会を反映するキーフレーズといえるでしょう。私はアメリカに引っ越した当時は携帯電話を持たない生活を楽しんでいましたが、2006年に携帯電話を購入し、昨年にはブラックベリーと呼ばれる、Eメールやインターネット、そしてパソコンの機能の一部を兼ね備えた携帯電話を購入しました。また最近ではこれまで以上にラップトップパソコンを持ち運んで作業を行うことが増えています。自分の生活を振り返ってみると、どこにいても、いつでも連絡を受ける、そして誰かと連絡を取ることのできる状況に身をおいていると感じます。

 例えば携帯電話を考えてみると、携帯電話用アンテナから遠く離れた場所に行かない限り、友人や知り合いと連絡を取ることができます。アメリカの携帯メールと、日本の携帯メールはややその社会的意義に違いがあるように感じますが、それでも私の場合毎月2000通から3000通の携帯メールのやり取りがあります。これには大学関係や審判関係の仕事に関わるものから、友人とのやり取りなどプライベートなものまで様々です。しかし1日に平均して数十から百通のメールというのはかなりの数です(しかし必ずしもそれが、周囲と比較してものすごく多いというわけではありません)。

 Eメールとして考えてみると、5つのアカウントで連絡のやり取りがあります。Amazon.comなどオンラインで何かを買うときに使うアドレス。通訳や翻訳関係のアドレス。友人に教えてあるアドレス。大学関連のアドレス。そして審判ならびに数名の近い友人だけに知らせてあるアドレスです。これらのメールはパソコンが閉じてある時には全て携帯電話に転送されます(最後のアカウント以外は転送されるだけで、着信音は鳴らないように設定されています。そうでないと、本当にメールに追い回される生活になってしまうので)。この例からも、やはり場所と時間に関わらず、連絡の取れる状況に自らの身をおいていることが分かります。

 転送メールは5つのうち1つ以外は着信音が鳴らないようにしたり、数名の友人から届く携帯メールの着信音を変えてそれ以外はたとえ寝ているときに届いても見ないようにするなど、文明の利器(そして仕事)に追い回されないようにする努力をしていますが、先日、必要に迫られて携帯電話会社を通してインターネット用の契約を行いました。これは携帯の電波が届く限り、どこでもインターネットを使用することのできるもので、出張でホテルにいたり、審判でどこかのスタジアムにいたりしても、常にオンラインになることのできるサービスです。日本でも多くの人が類似のサービスを利用していると思いますが、私もその流れになることになりました。アメリカではホテルでインターネットを使用する際、24時間で約10ドルが相場です。しかし携帯電話会社のサービスは5GB まで一律60ドル。ホテルに6日滞在すれば元が取れる計算です。私は通訳や審判で月の半分は自宅にいませんから、十分に価値のあるサービスです。また、試合会場でインターネットが使えるのは非常に便利です。携帯電話にメールが転送されるとはいえ、やはりパソコン上で作業するほうが効率は高いです。

 これだけ「どこにいても、いつでも連絡が取れる」状況になると、自制が重要です。よく昼食や夕食を一緒に食べに行く友人がいますが、その様な場合には大抵携帯電話の電源を落としてしまうか、サイレントモードにしてしまいます。転送されるメールのうち、近い友人と重要な審判関係のメール以外は着信音が鳴らないようにしているのも、同じ意図があります。利便性を高めると同時に、目の前にいる人とのコミュニケーションを楽しむことのバランスが非常に重要なのでしょう。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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