INTERPRETATION

やるからにはやる。けれど完璧はめざさない

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 9月も終盤戦に入り、今年も残すところ3か月強となりました。ついこの間、年が明けたと思ったら、もう世の中はハロウィーン準備。それが終わればクリスマスの装飾が街をにぎわせることでしょう。

 私は今年初めに3つのことを目標にしました。「フランス語学習」「一日一万歩突破を100回達成」「ジョギングを100回達成」の3点です。1月ごろは気合も入っており、フランス語の勉強も辞書をたくさん引いたりノートを作ったりと工夫して時間をかけていましたが、忙しくなったり、興味が冷めてしまったりして少々手を抜くようになったのは、先週このコラムで書いた通りです。

 一方の一万歩とジョギングに関しては、100回をすでに達成し、現在ラウンド2の80回目に差し掛かっています。つまり毎日ではないものの、数日に一回の割合で達成してきたお陰で、何とかここまで来られたのだと思います。

 私の場合、ジョギングと一万歩突破は「健康」という副次的な効果をもたらしてくれました。当初はダイエットの意味合いが濃かったのですが、体重減少以上に「疲れにくい体」を手に入れることができたのです。これは通訳業という体力が問われる仕事において、大いに助けになりました。また、栄養に対する関心も高まり、体が何を欲しているのか、どういう食べ物を口にすればスタミナ切れせずに済むかも考えるようになっています。今まで仕事中に集中力が急に途切れてしまったり、やたらと疲れやすくてやる気が出なかったりというケースが何度もあったのですが、それを少しずつ是正できるようになったと感じています。

 私が新年の3つの目標を実施する上で心がけたのは、「やるからにはやる。けれども完璧はめざさない」ということでした。たとえばフランス語学習においては辞書を引く機会が最近はめっきり減ったものの、とりあえずラジオ講座だけは毎日聞くという最低ラインは維持するようにしています。また、1万歩については、達成できない日があれば翌日少し多めに歩くよう心がけ、ジョギングにいたっては「5分でも走ったら、それは1回としてカウントする」と決めました。厳しいルールを設けるのではなく、「ゆるやかな縛り」を設けたことにより、かろうじて行動を続けることができたのだと思います。

 何かを新しく始めるということは、それまでの自分の生活を見直す必要があります。今までの24時間に、いわば新規プロジェクトを割り込ませるわけですから、何かが犠牲になるのは仕方ありません。けれども決めた以上はやり続ける。ただし厳しくしすぎないという自分なりの最低ラインを決めておくことが、継続においてはカギを握るのではないかなと私は考えています。

 (2009年9月28日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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