第326回 祝・企画通過! その理由分析と応用
今回は、企画通過のご報告です。といってもデビューサポート企画の話ではなく、長い道のりとなっている翻訳絵本でもなく、私の著書の企画です。おかげさまで、先週企画が通り、新しい本を出すことになりました。
そんな企画通りたてほやほやの段階で、どうして企画が通ったのか、その理由を分析して、翻訳書の場合にどう応用できるかを考えてみましょう。
まず、私には「こういう本を出したい」という思いがありました。一冊書けるくらいの知見がここ数年で得られたと判断して、ある程度の構成を考えて企画書をまとめ、サンプル原稿も数十ページ用意しました。
準備が整ったところで、A社の編集者Aさんに相談しました。A社から刊行するのが合っていると思ったのですが、読者層が違うので難しいとのことでした。
私の中ではA社でイメージが固まっていたものの、このお返事を受けて、他社を探すことにしました。とはいえ、持ち込みにはどうしても時間もエネルギーもかかります。翻訳書のほうも腰を据えないといけない時期なので、集中できる態勢を整えないといけません。
そこで、フリー編集者のBさんに相談しました。企画書で取り上げているテーマにもなじみがある方なので、Bさんから伝手のある出版社に持ち込んでもらうことにしたのです。Bさんには企画書と関連資料をお預けしました。
早速、BさんがC社に持ち込んだところ、編集者Cさんが興味を持ってくださいました。ただ、この企画そのままではなく、もっと広い意味でのテーマにおいてでした。そのため、どういう形ですり合わせができるか、Bさんが取りまとめ役になってメールでのやり取りが続きました。
その間にメディア掲載もあったので、参考資料としてBさんとCさんに共有していました。すると、その記事に興味を持ってくださったCさんから、新しい形での企画のご提案がありました。元の私の企画とはかなり違う内容になりますが、「こういう切り口があるのか」と思うとともに、興味をそそられる内容でした。
関心のある旨をお伝えし、Bさん、Cさんと3人でお会いすることになりました。当日、おふたりとも関連書籍を多く読み込んで持参してくださっていて、信頼できる出版人という印象を強く受けました。さらにCさんは、企画書もすでに用意してくださっていました。
2時間ほどお話をして意識のすり合わせをし、その内容を基にCさんが社内での企画会議にかけてくれることになりました。そしてCさんのプレゼンの結果、企画が通ったのです。
今回は自分ががんばって企画を通したというよりも、流れに乗る中で企画が通ったという感覚です。では、どうして企画が通ったのか、どう翻訳書に応用できるかを考えてみましょう。
・企画を持ち込んだこと
持ち込まなければ、存在を知られることもなかったわけです。だから、まずは持ち込むこと。これは翻訳書の場合でも同じですね。
・伝手を頼ったこと
Bさんに頼らなければ、Cさんにつながることはありませんでした。これも翻訳書の場合でも同じです。伝手がない場合にどうするかは、第20回 7つの魔法⑦~出版社に持ち込むを参考にしてくださいね。
・メディア掲載
メディア掲載があると信頼につながりますし、世間の注目を集めている話題なのだと捉えていただけます。翻訳書の場合なら、原書の著者や、取り上げているテーマの記事があるといいでしょう。
・編集者さんの興味・関心
Cさんが個人的に興味を持ってくださったことが大きかったと思います。それが単なる個人的なものにとどまらず、多くの方が抱く興味に通じるものだったので、企画に説得力が生まれました。翻訳書の場合も、編集者さんが個人的なご経験から興味を持ってくれて、それが多くの方にも訴求するようなものであれば、強いですよね。
・柔軟な対応ができたこと
もし私が元の企画にこだわって、「この企画でなければやらない」という態度でいたら、このお話はなかったかもしれません。「そういう視点もあるんだ」「そういう切り口もあるんだ」と思って臨んだことで、最終的に企画通過につながったのだと思います。翻訳書の場合で言えば、文体など、訳し方を大きく変えたり、対象読者を変えたり、というケースに該当するでしょうか。
持ち込みを進めるうえで、ヒントになればうれしいです!
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