INTERPRETATION

キティちゃんとカチューシャとミニスカート

上谷覚志

やりなおし!英語道場

通訳という仕事の醍醐味の一つにいろいろな人に会えることが挙げられると思います。と書くと、芸能人や政治家と言ったいわゆる有名人を連想されるかもしれませんが、実際に普段通訳をするのは一般の人に対してがほとんどです。そういう“普通の一般人”の中にもいろいろな意味で凄い人がいます。私の場合、通訳のほとんどがビジネス関連ですので、商談の通訳も多くあります。今日は最近出会った強者のお話を。今回はファッション編です。

半年ほど前に小さなアメリカのIT企業がある技術を日本のメーカーに売り込みにやってきました。商談当日、事前ブリーフィングをするために担当者というアメリカ人女性とホテルロビーで待ち合わせました。会った瞬間「何か変?」と思いましたが、すぐにはわからずよく見たら、服装が!!ニットのコートに、メイドカフェ風のカチューシャ、胸元がかなりあいたシャツ(←ちょっと叶姉妹入ってます)で登場。上司は同席できないので、後で参加するということでブリーフィング開始。ブリーフィング自体は非常に丁寧にしていただきました。とてもきれいな人だったので、素敵ではありましたが、これから商談にいくことを考えるとどうかな・・・彼女の上司はこの格好でもいいんだろうか・・・いろいろと考えながら一時間ほど話をして、いよいよ上司登場。

今度も女性で、しかも白いコートにミニスカートを履いたバービー人形のような女性。なぜが靴はクロックスのサンダル。私はクロックスのサンダルを見ると、ビーチやトイレを連想してしまうので、スーツと合わせる斬新なコーディネートについていけず、ヒールと勘違いしているのはと・・・注意した方がいいのだろうか??と通訳内容そっちのけで余計な心配ばかりしてしまいました。

最初にブリーフィングをしてくれた女性はどうもキティちゃんが好きらしく、商談に行く途中でKIDDY LANDのショップを発見し、興奮気味に“キティちゃん福袋を買いたいけど、それを客先に持っていったらどう思われるだろう”と聞いてきました。キティちゃん福袋にも驚きましたが、それ以上に客先に持っていったら問題かもしれないということに気付いていたことにさらに驚きを感じました。上司は“いいんじゃない〜”と軽く返事し、私も(今さらね・・・)買いたかったら買ったらというと、いきなり走り出し、帰ってきた両手には大きなピンクのキティちゃん福袋。

この三人でいくつかのメーカーを回り、プレゼンをしてきましたが、やはり無名の会社ということで次へのステップが見えないまま商談を終えました。二人のアメリカ人はしきりに“やっぱり日本の市場は参入が難しい”と話していましたが、それを横で聞いていて、“そうかもしれないけど、まずその格好では向こうも真面目にビジネスするとは思ってもらえないと思うけど・・・・”と思う気持ちを抑え、聞こえない振りをして遠くを見ていました。

通訳として入っているので、クライアントの服装にまでコメントすることはできないですし、人それぞれビジネスに必要なものに対する考え方もさまざまなので、基本的には黙っていますが、ビジネスシーンに合わない服装の人って案外たくさんいますよね。男性だと、ノータイで胸元全開とか、スーツのパンツが異常に短くて白靴下(時折、ピンクもあり)丸見えとか・・・。もちろん人柄や話の中身の方が大事だとは思いますが、TPOや相手を気遣った服装をすることもビジネスをしていく上で重要ではないかなと最近よく感じます。

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上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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