第334回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート77
GW明けにMさんが△社の編集者さんにリマインドのメールを送ったところ、お返事をいただきました。
ボローニャのブックフェアで数多くのタイトルを見て、そこでオファーした作品もあったものの、Mさんの持ち込んだ民話が依然として心に残っているとのこと。そのため、編集部の企画会議にかけたいとのお話でした。
企画が通るためには、2回の会議を通過する必要があります。そこでは「なぜ、今、この絵本を出すべきなのか」が問われことになります。編集者さん自身も考えるけれども、Mさんがこの絵本のどこに特に惹かれるのか、日本の子どもたちにどういうメッセージが届けられるのかについて、考えを聞かせてほしいというリクエストがありました。
てっきり他の作品に埋もれてお断りのお返事になると思っていたMさんは、正直なところとても驚いたと言います。同時に、企画会議にかけてもらえることがうれしく、原書の魅力をいちばん理解しているはずの訳者として、悔いのないように精いっぱいアピールする機会をいただけたと感じたそうです。
メールを受け取ってすぐにリサーチを開始し、企画会議にそのまま出せるようにパワーポイント資料と補足資料を作成したMさん。ところが、ふと、不安がよぎったそうです。
「編集者さん自身のやり方があるのに、あまり出しゃばらないほうがいいのでは」
「編集者さんは、あくまでメールで少し意見が聞きたいだけなのかもしれない」
なのに、「こんなにがっつり資料をお送りしてもいいのか」と……。
作成された資料を拝見すると、パワーポイントでは、「なぜ、今、この絵本を出すべきなのか」が見やすくまとめられています。社会的背景や本書の教育的価値に加え、販促についても具体的に言及されています。この資料をそのまま使えば編集者さんが企画会議でプレゼンできるよう、万端に準備されているのです。補足資料では、パワーポイントの内容がさらに詳しくまとめられており、読めば理解が深まる構成になっています。
ここまでしっかり準備されていれば、Mさんの思いは十分に伝わりますし、編集者さんにとっても助けになるはず。2回の企画会議を通すには、情報が多いほうがありがたいはずですし……。企画フォーマットなどは編集者さんご自身のスタイルがあるでしょうから、「叩き台としてお使いください」というスタンスで資料を提供するよう、Mさんにはアドバイスしました。
6月下旬をめどに結果が出るので、それまで待っていてほしいという編集者さんのご意向ですが、並行して他社に持ち込んでも構わないとのことでした。
Mさんとしては、6月下旬に結果が出るのであれば、基本的にはそのまま待ちたいという考えです。ただし、そのことにあえて触れるべきかどうか、迷っているとのこと。
そこで私は、「待っていますアピール」をしてもいいのでは、とお伝えしました。コミットしている姿勢を見せることで、編集者さんもより企画に力を注いでくださるのではと思ったからです。
5月末の時点では、△社の編集者さんから追加のご連絡はありませんでした。その間にも何かできることがあるのではないかと、Mさんは気になってしまったそうです。たとえば、販売促進案のような追加資料をもう一度送るべきか。あるいは、動きがあったタイミングで必要に応じて用意するほうがいいのか……と、落ち着かずそわそわしてしまうとのことでした。
すでに立派な資料をお送りしているので、もう十分なのではないかと私はお伝えしました。もし必要があれば先方からリクエストがあるでしょうから、その時に対応すればいいいでしょう。熱意はしっかり伝わっていますし、あとはもうお任せして、忘れて過ごすくらいの感じがちょうどいいのでは、と。あまり念を送りすぎても物事が滞ってしまうものなので、何か他のことに熱中しつつ、ほどよく忘れて過ごすほうがいいでしょう。
また追ってレポートしますね!
※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。電子書籍でもお求めいただけますので、あわせてご活用くださいね。
※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。