第94回 ハイ・イールド債見通し①
こんにちは。今年はこれまで、マクロ経済に関する割と平易な文章を取り上げてきましたので、ここでがっつり「金融」に取り組んでみましょう。ある運用会社が作成した「ハイ・イールド債」の見通しに関する文章です。
最初にまず、ハイ・イールド債(high-yield bonds)について復習しておきます。ハイ・イールド債は、格付けが低く、経営破綻の可能性が他より高いとされる企業が発行する債券(社債)の総称です。企業が資金繰りに行き詰まる可能性が高ければ、当然ながら社債が正常に償還されない、つまり債務不履行(default)に陥るリスクが大きくなります。ただし、投資家がそういった高いリスクを負うかわりに、比較的高い利回り(yields)を提供するのがこの債券の特徴で、この点、リスクは低いが利回りも低い国債(government bonds)等とは大きく異なります。
またリスクだけで言いますと、国債とハイ・イールド債の中間的な存在として、債務不履行の可能性が低いとされる優良企業の社債があります。格付会社がこれらの社債や企業に「投資適格」の格付けを付与していることから、「投資適格社債(investment-grade corporate bonds)」と呼ばれます。
今回は、以下の前半太字の部分を見て行きます(2025年1月に公表された文章です)。
【本日の課題】
2024 proved to be another strong year for risk-asset returns, and U.S. high yield was no exception with the ICE BofA U.S. High Yield Constrained Index returning 8.2%, led by CCCs returning 16.4%. A similar story played out in the bank loan space with the Morningstar LSTA U.S. Leveraged Loan Index slightly edging out high yield bonds at 9.0%. The start to 2024 still exhibited some investors’ residual concerns around a delayed impact of the Fed’s hiking campaign on economic growth, despite the December 2023 pivot. But flash forward to today, and credit spreads across investment grade and high yield are optically once again near multi-year tights, and supportive growth ahead is now the consensus, even as the Fed is now poised to be less dovish than most expected this time last year.
●proved to be
辞書には「~であることが判明する」「~であることが分かる/明らかとなる」などと載っており、確かにそのニュアンスはあるのですが、といってこの日本語のまま使うと大袈裟すぎ…のケースが多いように思います。今回も無理に入れ込む必要はなさそうです。
※「2024年は〜のような年であることが予想されていた」という感じの前置きがあるならば、「しかし結局、〜の年となった」などとする手もあります。
●risk-asset returns
「リスク資産のリターン(運用益)」。元本がほぼ保証されている預貯金や国債などがrisk-free assets(無リスク資産)、一方で株式や社債など値動きがあり、元本割れする可能性がある(=リスクがある)のがrisk assetsです。
●U.S. high yield
「米国ハイ・イールド債」。bondsが略されています。米国で投資適格の格付けをもらえない企業が発行する債券です。
●ICE BofA U.S. High Yield Constrained Index
取引所全体や特定分野の銘柄の株価の動きを表す指標として「株価指数」があるように、債券にも様々な指数があります。
訳し方はあまり一定しておらず、例えば代表的な株価指数であるMSCI World Indexの場合、「MSCI世界株価指数」「MSCIワールド株価指数」「MSCI世界株式インデックス」「MSCIワールドインデックス」などと様々なので、クライアントの指示に従います。
すぐ後ろにあるMorningstar LSTA U.S. Leveraged Loan Indexも同じです。loanに関しては“bank loan”の説明をご覧ください。
●CCCs
CCCは企業の信用度を示す「格付け(rating)」の一つ。多くの場合、A→B→C、AAA→AA→Aの順で信用度が低くなって行きます。よってAAAが最も高く、Cが最低です。アルファベットに+や-がつくこともあります。
米国の格付会社S&P Global Ratingsの場合、AAAからBBB-までが「投資適格」、BB+以下が「投機的格付」とされます。CCCs(CCC bonds)は、格付けCCCの投資不適格債、つまりハイ・イールド債に分類されます。
●bank loan
「バンク・ローン」。「債券(社債)」は企業自身が発行し、投資家に買ってもらうものですが、バンク・ローンは、銀行などの金融機関が企業向けに行ういわゆる「融資」のことを言います。中でも借入金が多く(レバレッジが高く)信用力が低い企業向けのローンは、特に「レバレッジド・ローン」と呼ばれることもあります(そのためインデックス名がMorningstar LSTA U.S. Leveraged Loan Indexとなっています)。
今回は説明だけで長くなってしまったので、訳出は次回にしましょう。専門用語の意味合いが今一つ分からなくても、英語自体は難しくありませんので、「金融分野らしい」言い回しを心がけて訳してみてください。