第333回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート76
出版翻訳家デビューサポート企画第2期生のレポートをお届けします。第309回に引き続き、海外在住のMさんの進捗状況をお伝えしていきます。
Mさんは、「推し」の著者の作品4冊と、民話を中心にした絵本パック4冊の計8冊(!)を△社の編集者さんに見ていただくことになりました。
検討後にご連絡があり、どれも一定の水準をクリアしているとの評価をいただきました。イラストの見応えもお話の面白さも、想像以上だったとのこと。Mさんの翻訳も、天性のリズムがあると高く評価されました。訳文の書体や工夫を凝らしたレイアウトも好評でした。
絵本パックのうち1冊の民話が、話の吸引力や絵の魅力から、編集者さんの印象に残ったようです。いかにも「民話」という感じではないところも、プラスに働いたように見受けられました。
また、Mさんの推しの著者の作品の中からは、2冊目が関心を引いたようです。切り口やテーマの扱い方が目新しく、子どもの注意を引きつけると言います。
ただ、どちらもかなり魅力を感じているものの、すぐに出したいというところまでは至っていないとのこと。3月末からボローニャでブックフェアがあるので、そこでいろいろな作品を見て検討したうえで判断したいとのお返事でした。
Mさんは絵本を評価していただけたことをとても喜びましたが、ボローニャのブックフェアの後に検討となると、4月末まではかかることが気がかりでした。こういう場合でも、待っている間に他の出版社に持ち込むのはやはりNGなのか、他社へ持ち込んでいいかお伺いするのも失礼にあたるのか、Mさんからご質問がありました。
また、推しの著者の絵本をまとめて出したいという希望が叶わなくなってしまうことも、Mさんは心配していました。
感触は良いようなので、評価が高かった作品については、待ってみてもいいのではとアドバイスしました。推しの作品については、「では、2冊目については、お返事お待ちしておりますね」とお伝えして、他の作品は待たないことをほのめかす(?)感じです。そして、4冊目から動かしながら、もし反応がよければその持ち込み先でシリーズとして打診します。その際には現在他社で1作品をご検討中の旨をお伝えして、そのお返事次第で△社にご連絡することになるでしょう。
そこで、Mさんは以前から推しの作品を持ち込んできたA社に4冊目を打診しました。しばらくしてお返事があり、残念ながら、結果はお断りでした。どのような内容の翻訳作品を重視していくかについての、社内の方針変更が主な理由です。
お断りそのものはある程度覚悟していたので、比較的冷静に受け止められたというMさん。ただ、今後はしばらくの間、商業出版経験者に限って持ち込みを受け付ける方針に変わるとのことで、持ち込みが難しくなってしまったことがショックだったと言います。
こういう方針変更はショックですが、何事にも例外はあります。せっかくこれまで編集者さんとのご縁をつないできたので、長い目で今後のことを考えて、関係性を継続していただけたらと思います。
そうして待つ間、△社からはまだお返事がありません。そこでGW明けにMさんがリマインドをしたところ……次回に続きます!
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