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震災以降の日々

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

今回の地震で被災された方々に、謹んでお見舞い申し上げます。

地震以来、いったい自分の立ち位置から何が出来るのだろうとひたすら考えていました。

直接的には大してお役にたてそうもないだろう、ということはすぐに分かりました。私には救出活動に生かせる特殊な技能も何もないですし、ポンと大金を寄付できるほど裕福ではありません。しかし、間接的にはどうか。社会を回していく動力源になり、社会を安定させていくということを通して、間接的に貢献できるのではないかと思い至ったのです。月並みな結論ですが、それぞれがそれぞれの立場でやるべきことをしっかりやる、ということに尽きるのではないかと思います。

3月11日の地震が発生した時、私は大学でコーディネーターをしている課程の学生(通訳や翻訳を学ぶ課程です)を引率して、合宿を行っていました。12日までの予定だったので、そのまま続行して帰宅しています。自分の思考の軌跡をたどる意味で、それから3週間ほどのメールを時系列順に並べてみました。(文中に出てくる「T&I」というのはその課程のことです)

***

3月13日

T&Iの皆さん

昨日は、無事帰れましたか?また、合宿に参加しなかった人たちも大丈夫でしたか?

一点、気がかりなことがあるのですが、誰かO君と連絡がとれましたか?昨日夕方の時点で連絡が取れず、心配しています。

何か情報が入ったら、教えてください。

その他、何か相談したいことなどあれば、何でもメールしてください。何か力になれればと思います。

いぬ

***

3月14日

> こんにちは。
> Nです。
>
> Sさんから連絡があったのですが、O君は無事だそうです!!
>
> 彼が使っているauの基地局が完璧に破壊されていてしまい、Docomoの携帯を誰か
からかりて
> メールを送ってくれたそうです。
> 無事だから心配しないでとのことです。
>
> とりあえず安心しました。

N君

連絡ありがとう!とにかく、よかった!本当に良かった!

O君、これを読めるのはずいぶん先のことになるだろうけれど、何か出来ることがあったら、遠慮なく言ってください。

本当に大変だと思うけれど、頑張ってください。

関東の我々も、計画停電が始まりますが、こんなもの被災地の人々の苦労に比べたら、the least we can doですよ!

前に進み続けていれば、いずれトンネルは必ず抜けます。みんな、ファイトです!

いぬ

***

3月15日

N君
皆さん

O君の件もHさんの件も、本当によかったですね。このような緊急事態にこそ、人間の真価が問われると思います。

「どうやって自分が生き残るか」

ではなくて、

「どうやってみんなで生き残るか」

を考えていきたいですね。もちろんハッキリ言って人間自分が一番かわいいですから、ギリギリの場合は最初の方の考えになるのが当然ですが、現在我々がおかれている状況は、そんなに逼迫していないと思います。

昨日あたりはスーパーに買い物に行っても、「ちょ、おま、それ一人で食うんかい!?」という量のパックご飯を買い物かごに積み上げている人がいましたが、まあ、きっと子供が20人ぐらいいて、居候も5人ぐらいいるとか、そういう事情があるんだと信じたいです。そうでなければ、あまりにもさもしすぎる。

N君が今回合宿で学んだ単語リストを作ってくれましたが、彼がこうやって大変な労力を注ぎ込んでリストを作ってくれたのは、これが最初ではありません。

自分一人の力が伸びれば良い、と考えているなら、こういうことは出来ないはずです。

だから、N君がこうして単語リストを作ってくれたというのは、単に便利で役立つものを入手できたというだけではなく、教員としてはN君のaltruismが嬉しいんですよ(もちろんリストを作ること自体も、N君にとっては勉強になったでしょうけれど)。

人間と動物を分けるものは、altruismのあるなしなのではないでしょうか。

合宿に参加していない人も、ぜひよく読んで、何かを感じ取ってくれればと思います。

……で、合宿のプレゼンで「調べます」と言ったことはちゃんと調べてMLで流してくださいね。

これからも一山もふた山もあるでしょう。地震からの復旧も、私たちの勉強もね。

でも、前に進んでいくしかないです。立ち止まることがあっても良いですが、最終的にはまた歩き出すしかないんですよ。その時に、けがをしたりへたり込んだりした友人がいたら、肩を貸したり荷物を持ってあげたり出来る存在でありたいものですね。

さあ、今日も一日、頑張りましょう!

いぬ

3月15日(その2)

T&Iの皆さん

まだ余震などもありますが、懸念材料は次第に地震そのものから、原発関連の話に移ってきました。

調べてみたところ、問題の原発は加圧水型ではなく「沸騰水型の軽水炉」とのことです。以下はウィキのページです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B8%E9%A8%B0%E6%B0%B4%E5%9E%8B%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89

サプレッション・プールが破れたようだとのことですが、これは私が説明を聞いて判断した限りでは、下の方の図にあるcondenser(復水器)に問題が生じたということらしいです。

詳しくは分かりません。あくまで私個人の考えということです。

図をよく見ると分かるのですが、発電所の構造は水力でも火力でも原子力でも一緒で、タービンと言う羽根車(風車みたいなもの)を回して、それで発電機を回して発電します。

火力と原子力の場合は、水を熱して高温高圧の蒸気を作り、それをタービンに吹き付けて回すわけです。

そして、原子力発電の場合、その蒸気は当然放射能汚染されますから、それを外に出さないようになっています。

図をよく見てみると分かるのですが、原子炉から蒸気としてタービンを回した水(1次冷却水)は、復水器で海水を使った2次冷却水によって「間接的に」冷やされます(それで「水に戻る」ので、「復水器」と言います)。これによって周囲の環境が放射能汚染を起こさないようにしているのです。

しかしどうやら、この復水器が破れるかなにかしたようです。

原子炉が直接解放されたわけではないですが、放射性物質が出てきてしまっている可能性はある、と。そういうことなのではと理解しています。

繰り返しますが、あくまで素人の判断ですから、詳しくは専門家の解説を待って

ください。

また、周辺の放射能レベルは一時的に8000マイクロシーベルト余りにあがったとのことですが、別の資料によると、人体への放射能の影響は次の通りです。

http://getnews.jp/archives/103732

1000マイクロシーベルトが1ミリシーベルトですから、これは8ミリシーベルトあまり。自然に生活して1年間に浴びる量が2.4ミリシーベルトですから、そのおよそ3倍ちょっとを一度に浴びる計算になります。

そう考えると重大な事態にも思えますが(もちろん重大な事態には違いないのですが)、次の資料を見てください。

http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/anshin_level.html

私の見間違いかもしれませんが、これで見る限りまだまだ「安心レベル」なのではないでしょうか。

重大な事態は重大な事態でも、どのぐらい重大なのかを客観的に判断して、冷静に対処したいと思います。

テロリストに原子炉を爆破されるのとは、わけが違いますし、いわんや核兵器の使用と同レベルで考えるのは完全に誤りです。

そうだ、ついでにdirty bombという言葉も覚えておいてください。あれなどとは全然レベルの異なる話です。

「流言飛語」という言葉がありますが、少なくともT&I生のみなさんは、それに惑わされないように。

そして絶対に、それを作り出す側にまわらないようにしてください。

被ばくした広島や長崎だって、今では見事に復活しています。今回の放射能漏れは、それとは桁が違うレベルです。いたずらに「大変だ!」と騒ぐのではなく、「何がどの程度大変」なのかを、しっかりと把握するようにしてください。

今回、石原都知事が東電の計画停電の対応を「許せない」と語ったりしています。

計画停電に関しても、インタビューされた女子高生が「無計画停電だ!」と憤っていたと聞きました。

都知事にしても女子高生にしても、要は「やると言っていたのに、やらない」つまり、「日常生活が今までどおり出来ないと言っていたのに、そうならなかった」ことに文句を言っているわけですが、電車の運行ぐらい、乱れても文句が言える状況ではないと思うのですけれども。

確かに近所のスーパーからは、牛乳も卵も電池もろうそくも消えました。

私のラジオ講座のテキストも、4月号は昨日店頭に並びましたが、5月号に関しては、石巻の紙倉庫にあった印刷用紙が全滅し、有明の倉庫にストックしてあった予備の用紙も、液状化現象が起きたために取り出せないため、このままでは出版が出来ない恐れがあるそうです。

しかし、しかしですよ。この状況がずっと続くわけではありません。西日本は無事なんですから、東日本の住民の命を支えることぐらいは出来るはずです。

被災しなかった牛たちは、今日も元気にお乳をだしているでしょうし、被災しなかった酪農家の方々は、それを一生懸命絞って出荷しているはずです。

外食産業も、一部営業を停止しているところはありますが、まだまだ普通に食べることができますし、いたずらにパニックに陥らないで、冷静に事態を把握して動くべきだろうと思います。

我々は今、「歴史の目撃者」になっているんです。今回の事態を後世に語り継ぎ、よりよい未来につなげるためにも、しっかりしなければなりません。

背筋を伸ばして、凛として日々を送ろうじゃないですか。

いや、何だか最後は演説になっちゃいましたが、リンク先の資料、参考にしてください。「現代用語の基礎知識」などを持っている人は、分かりやすい解説があると思うので読んでおいてください。

取り急ぎ

いぬ

3月15日(その3)

今回の合宿では八王子セミナーハウスのみなさんには本当にお世話になりました。ぜひお礼のメールを出してください。

地震があった後、すぐに一番新しいさくら館に宿舎を移して頂いたことはもちろんのこと、予定外の宿泊者(帰宅困難者となって宿泊することになった方々)の宿泊料は無料にして下さったのです。また、さくら館に移ったことで、本来ならセミナールームのレンタル料が発生するはずですが、そちらも無料にしていただいております。

11日の夕食時には、直前にも関わらず、7名分の食事を追加で作っていただき、さらに松井先生には別にご用意いただくなど、大変きめ細かく対応していただきました。

また、拡声器や懐中電灯もすぐに貸し出して下さり、ラジカセも無料で(本来はレンタル料がかかります)貸し出して下さったので、最新情報を刻々とつかむことができたのです。

食事がとれ、入浴もでき、明るく暖かい部屋で勉強でき、さらに清潔なベッドもトイレも完備した状況での「被災」でした。

余震はあったものの、あのシチュエーションでは最高レベルの安心感を持って過ごすことが出来たのではないでしょうか。

出来れば大学からも感謝のお手紙を出していただければと思っているぐらいですが、まずは皆さんから直接お礼を申し上げるのが良いと思います。私からはすでにお礼のメールを差し上げました。なお、一応お礼メールは私にもCCしていただけますでしょうか。

いぬ

3月15日(その4)
T&Iの皆さん

ブックマークしている英語教育関連のブログで、先日面白いエントリーがありましたので、ご紹介します。ちょっと笑いが必要ですよね。

<引用ここから>

■[教育] もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、ギターを第1言語としない日本では、学校でのギター教育が課題に。以下、いろいろな試行錯誤を繰り返す。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、中学校では楽譜をタブ譜に置き換える「訳読」が授業の中心になる。授業中、ギターはあまり弾かない。小学校でピアノとかやってて楽譜読めるヤツが神。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、訳読ばかりでギターを使ってないという批判から、徹底したパタンプラクティスが全盛になる。みんなひたすらいろんなパタンでコードチェンジ。ちょっと退屈。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、実際に使わないと弾けるようにならないよね、ということで、とにかく好き勝手にギターを鳴らす授業が増える。ちょっとくらいコードが違ってもいいじゃん。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、6年間中高でギターを習ったのにバンド組んでも全然即興でジャムれないという産業界からの批判が起こる。ギター教育改革が

まる。「ギターが弾ける日本人」の育成を目指す。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、ついに小学校ギター活動がスタート。でもコードを教えたり、アルペジオを教えちゃいけません。ただかき鳴らして親しむことで素地を作る授業。エアギターもブームに。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、エレキ派とアコースティック派の対立が深刻になる。他にもアルペジオ至上主義派や、ギターソロ原理主義と、いろんな流派が生まれる。学校外でのギター教室も隆盛。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、「もうギターは国際語ですから、コードなんかだいたいでいいんです。AでもAマイナーでも通じるから大丈夫」と主張する人も。Fはどの国の人も苦手だから、使われなくなる。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、高校ではギターはギターで教えることを原則とする、ようになる。勘違いして授業中ひたすらギターソロを生徒に聴かせる教師も現れる。結果として生徒はギターをあまり弾かなくなる。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、教室にいる40人の生徒を1人の教師とネイティブのミュージシャンで指導するのが基本。実技指導のフィードバックなんて難しいよね。一方でグルグルと個別に指遣いをチェックする指導法も登場。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、教員のギター演奏力不足が問題になり、生徒がギターを弾けないのは、教師がCD並みのプレーができていないからだ、という批判が巻き起こる。免許更新講習はじまる。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、TOGIC(Test Of Guitar for International Communication)がやたら人気になり、企業の採用や昇進にスコアが利用されるようになる。でもこのテスト、実際にギターは弾かない。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、Yahoo!知恵袋に「この楽譜をタブ譜に書き換えて下さい」という投稿が大学入試中になされ、話題に。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、経済格差により小さい頃からギター教室に通う子が有利になったり、ギターを買えない家庭なども出てきて社会問題に。「子ども手当」としてギターが現物支給される。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、ギター以外の楽器はどうなるんだ!と「ギター帝国主義」を嘆く言説も。マンドリンだって、バイオリンだって、ウクレレだって、縦笛だっていいじゃないか。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、ギターを通しての人間教育こそが大切ということになり、意欲関心態度が何より重要視される。ギターに触れた数を数えたり、ストロークの数で意欲をカウントする教師も。

 もしも世界のポピュラーな言語がギターだったら、日本のギター教育のさらなる充実を目指して、一人の男がブログを立ち上げる。その名も「ギター教育2.0」 現在は大学院でピコピコされながらギター授業道の修行に励む。

 

 と、勝手にいろいろ妄想してみましたが、みなさんの方がもっと面白い喩えが思い浮かぶかも。いいのがあったら、コメント欄にどうぞ。あ、あとで思いついたら随時加筆予定です。予めご了承ください。

 もしギターが言語だとしたら、「ギターを弾ける」というのは、何が出来ることなのか? 何かの曲をコピーできること? 楽譜を見ればすぐにどんな曲でも弾けるようになること? 自分で自由に簡単な曲が即興で弾けること? 相手の出したリズムやコードに合わせて、ジャムれること? いろいろ考えてしまいます。

 個人的には、「コピーする能力」と「作曲できる能力」あるいは「ジャムれる能力」はまた違ったスキルだと思います。作曲と言っても、もちろん別に名曲である必要はないでしょう。どっかで聞いたことのあるリフをうまくつなげて、心地よい響きにできればいいわけで、基本的なコード進行(ディスコース)を理解して演奏できることが求められます。

 とはいえ、下の英文の記事でも書きましたが、「一曲も完璧にコピーはできないけど、ギターで作曲できる」という人はいないでしょう。そう考えると、もっとしっかりとコピーさせる練習をさせるべきだな、と感じています。実際、一曲をマスターする中で、基本的なコードの押さえ方、コードチェンジのパタンなどをずいぶんメタに学べています。そういういい教材を、生徒に与えて行かなくちゃなぁ、とも考えています。

 実際のミュージシャン達は、音楽が好きで勝手にバンドを始めて、好きな曲をコピーしているうちにimplicitにコードを覚えて、オリジナルを書くようになる。でもこれは意欲も能力も適性もあったからこそなわけで、これが公教育で「全員が弾けるように」ということを求められると、どう指導すべきか悩むところです。当然、ある程explicitに教え込むことも大切でしょう。中学時代はしっかりとコピーに励み、高校で作曲や即興演奏って流れが自然に思います。

 もちろん、ギターと本来の言語の異なる点はたくさんあるのはわかっているんですが、最近この喩えにハマっていて、なんでもこれに置き換えてしまうのです。まぁ、ご愛敬ということで。

<引用ここまで>

どうですか?僕はすごく面白かったのですが。

「英語教育2.0」というブログです。興味があれば、リンクをたどってください。いろいろ深く考えられていらっしゃって、非常に参考になります。

http://d.hatena.ne.jp/anfieldroad/

ではでは。

いぬ

***

3月16日

埼玉県で放射能の濃度が上がったと大騒ぎしていますが、昨日お送りした資料を見れば、いかに微々たるものかわかりますね。

「黒い雨」と同列で語るなんて、勘違いも甚だしいですよ。あれで外出を控えるぐらいなら、レントゲン撮影がある健康診断は誰も受けないということになりますがねえ……。

だいたい、僕なんか高校生の時にチェルノブイリ事故を経験してますけど、日本上空まで放射能を含むチリが飛んできたというのに、普通に自転車通学で思い切り雨に降られてましたよ。

でも、この通り、立派に(?)生きてます。

とにかく、不安を感じやすいときほど、知識をもとに冷静に、冷静に。

そして、本当に危なくなったときこそ、知識をもとに判断して、避難です。その時は、迅速に、迅速にね。

いぬ

***

3月17日

T&Iの皆さん

昨日、教授会のために大学に出勤してきました

海浜幕張の駅前は液状化がひどく、あちこちで地面が盛り上がったり凹んだりしています。

しかし、それでもさっそく復旧作業が進んでいてその迅速さには感心しました。

あのあたりだと、埋め立て地の多い浦安が非常に大変なことになっているようですね。断水はもちろんのこと、下水も流れなくなっているとのことで、Y先生は昨日も出勤されませんでした。

大学内もあちこちで凸凹がありますが、それでも建物そのものはまったく問題ありません。しかし、あれで今週末の卒業式をやるというのだから思い切ったものです。

何でも、「せっかく晴着を用意したのだから、キャンセルしないで欲しい」という女子学生からの強い希望だとのことです……が、そんなもんなのですか?女性陣の皆様。うーむ、おしゃれにかける心意気って、すごいのですね。

さて、パンドラの箱を開ける気分で開いた研究室の扉ですが、それほどの惨状でもありませんでした。

入ってすぐ右の文庫本と新書を入れていた棚の本は3分の2ほど、左側の書棚に平積みしていた本と資料のファイルなどが3分の1ほど落ちていて、机の引き出しが「泥棒が入ったのか?」という感じに開いていたぐらいです。30分ほどで復旧できました。

街の様子と研究室の様子を写真にとってアップしましたので、興味がある方は見てください。

誰だ!「普段の研究室とあまり変わらない」って言う奴は!(笑)

ああ、しかし、話はかわりますが、社内吊りの週刊誌の見出しの醜悪なこと!見たくはないのですが混雑した車内では目のやり場もなく、つい見てしまいます。

見るたびに嫌な気分になりますよ。完全に震災を食い物にしてます。ああいうのが、「イエロー・ジャーナリズム」って言うんです。

不買運動ぐらい起こせばいいのに、と思ってしまいますよ。

皆さんも気を付けて、どうぞ良い一日を。

いぬ

3月17日(その2)

> T&Iの皆さん、お騒がせしましたOです。
>
> 昨日ようやく電気が復旧し、本日ネットが繋がりました。
>
> 皆さんからのメールを読み、ご心配お掛けしたことを深くお詫び申し上げます。
>
> 僕の住んでる地域は、宮城県でも南部の山間部なので、地震や津波の被害が甚大

> 北部、沿岸部のような深刻な被害は免れました。
>
> それでもライフラインは寸断され、連絡を取ろうにも携帯が繋がらず、充電も尽

> たため、心配され連絡をくれた方にも一報差し上げるのに時間がかかりました。
>
> 自宅がプロパンガスだったのでガスが使え、また灯油ストーブで暖を取れたのが

> 幸中の幸いで。食料も蓄えだけで飢えは凌げましたし、汲んできた水で最低限生

> ができました。本当運が良かったとしか言えません。
>
> 家族や親族も無事で、今ではニュースで被災状況を見守っており、少しずつです

> ほっとし、胸を撫で下ろしています。
>
> しかし阪神淡路大震災などと違い、今回の地震は確実に自分の身に起こったこと

> す。見覚えのある町が倒壊し、瓦礫の山と化す。どこか遠い国の出来事ではあり

> せん。死傷者は増え続け、今でも救助を待ち続けている人がいます。いぬ先生の

> うように今自分が出来ることを考え、利他の精神で望むことが僕たちに出来るこ

> だと思います。被爆を省みず原発の処理にあたっている職員たちは本当に凄いと

> います。今回の震災は当事者として何が起きても他人事の傍観の姿勢を見直す機

> になったのではないでしょうか。
>
> T&Iの皆さんも無事で安心しました。ですが余震や放射能漏れも予断を許さ

> い状況なのでくれぐれも気を抜かず生活を送って下さい。また学校で再開できる

> とを心から祈っております。

皆さん
O君

メールをありがとうございます。O君からのメッセージを直接受け取って、ようやく「ああ、本当に大丈夫だったんだ」と実感がわきました。本当に良かったです。

当面の課題は、被災地への物流の確保と、原発の対策ですね。

仙台空港が部分的に使えることになりましたから、物流の方は徐々に改善していくでしょう。

C-130輸送機が使えるようになれば、道路状況にもよりますが、事態はかなり改善されると思います。

原発の方も、対応にあたっている方々には本当に頭が下がります。よく言われることですが、こういうことは「悲観的に予想し、楽観的に構える」ことがポイントだそうです。

最悪、燃料棒から核燃料が漏れだしたとしても、放射性物質をまき散らす核兵器のような形にはならないはずです。

外野はいろいろ騒がしいですが、何しろ初めてのことですから、東電も政府も機動隊も自衛隊も、手探りで作業を進めているはずです。全力で行っても思うような成果が上がらないこともあるでしょうが、だからと言って一概に非難は出来ないと思います。

今日NHKからの帰りに、夕刊紙などは何を根拠にしているのか「あと3日」などと不安をあおっていましたが、ああいう無責任な報道には首をかしげざるを得ません。

今日は妻がCNNを通訳していて、非常に抵抗を感じたと言っていました。CNNなどは、「日本の対策がいけない」「政府も東電も隠蔽体質」というシナリオがあって、基本的に「日本は信用できない。きっとひどいことになるぞ」というスタンスでの報道だそうですよ。

で、アメリカの核物理学者がゲストに来たのですが、番組のプレゼンターがあれこれ不安をあおるような質問を浴びせても「騒ぎ過ぎ」の一点張りで、最後にはプレゼンターも絶句していたとのこと。妻は通訳をしながら、内心「よくぞ言ってくれた!」と思ったそうです。

しかし皆さん、そういうことも含めて、いったい何が起こったのかを、良く覚えておきましょう。我々「生き残った人間」には、それを次世代に伝えていく責務があると思いますよ。

とにかく、そんなに簡単に最悪の事態になることはないはずです。じっくり構えて、しっかり観察して、日記などに記録しておきましょう。

O君、まだまだ大変だと思いますが、何とか踏ん張ってください!T&I全員が応援しています。

おお、余震が続きますねえ。これを書いている間にも揺れてますよ。

そうそう、今日は初めて停電を経験しました。これが被災地ではずっと続くのですね……。

しかし、子供た

ちには何度も「今日は停電があるよ」と言って空振り、ということが続いたので、これで「狼中年」にならないで済みましたよ。(笑)

いぬ

***
3月20日

T&Iの皆さん

このところ地震の報道に隠れていたので気になっていたのですが、ついに英米がリビアに対する攻撃を始めました…。

これはまずいです。戦火が一気に拡大する恐れもあります。

地震も確かに重大な事態ですが、今後の展開が心配と言う意味では、原発以上に気がかりです。

情報を継続して入れてください。日本のメディアは地震一色でしょうから、英字新聞や、英語のウェブサイトなどが使えます。

ただ、英米のサイトだけではなく、アルジャジーラなど、別の立場からの情報も入れてください。

こんな話をしたあとでなんですが、停電もないようですし、どうぞ良い週末をお過ごしください。

取り急ぎ

いぬ

PS
これからお墓参りです。伯父も先日亡くなったばかりですし、しばし静かに話をしてこようと思います。

***

3月21日

T&Iの皆さん

冷たい雨が降っていますね。被災地はどうなっているかなと思います。

さて、今日は学業継続支援についてみなさんと考えてみようと思ってメールしました。

先日の教授会では、被災した(らしく連絡が取れない)学生が多数いると聞きました。

ある意味4年生は卒業するだけなのでまだ良いのですが、問題は3年生以下の皆さんです。大きな被害を被った人は、たとえ生活は何とかなっても、経済的に大学に通い続けるのが難しいのではないでしょうか。

現在教職員に向けて、被災地への義援金の呼びかけが行われていますが、私個人としては、そういう義援金ももちろん大切ですが、大学側として在学生の学業継続を可能にする措置を講じることが重要だと思います。

別の言い方をすれば、まず足元から固めていく必要があるということです。

大学側にはOB・OG会を通じて学業継続のための寄付金などを集めてはどうか、というメールを送ってあります。

さて、問題はT&Iとしてどう動くか、です。

T&Iの被災者は、私の知る限りO君だけですが、ほかにはいるでしょうか?

O君の事情を聴くのが先だと思いますが、万が一O君自身も大学に通い続けるのが経済的に大変だということであれば、大学側の公式な対応とは別に、T&I全員でサポートに回りたいと思います。いかがですか?

私も出来る限りのことをしていきたいと思います。とりあえず、手持ちのお金から1万円をサポート用に取っておきました。皆さんの場合は私と違って働いているわけではありませんから、気持ちで構いません。お金が無理なら、何かを手伝ってあげるとか、お弁当を作ってあげるとか、そういうことでも良いのではないでしょうか。

O君が幸いサポートなしでも大丈夫というのであれば、O君以外の被災学生のサポートが、少しでも出来ないでしょうか。

例えば私を含む通翻生全員でお金を出し合って、文具(ルーズリーフとか、シャープペンやボールペン)などを買って被災した学生に寄付することはどうでしょう?他に良い考えがありますか?

実際に被災したわけではないので、被災した学生さんが学ぶために何を一番必要としているのかは分かりませんが、それはO君と連絡が取れれば、徐々に分かってくると思いますから、なるべく一番欲しがっているものを少しでも寄付できればと思います。

こんな時だからこそ、学べる人は、さらに「大学生」という「学ばなくてはいけない立場にいる人」は、学び続けなければいけません。

それが日本の社会全体を支えることになり、間接的に被災地を支えることになるのではないでしょうか。

いつもながら説教くさいメールで恐縮ですが、こんな時だからこそ、ちょっとでも余裕のある側が、大変な人をサポートできないかなと思います。

私の家の最寄駅でも、埼玉大の学生さんがずっと募金活動をやっています。うちの大学でも、私たちが先陣を切って、そんな活動を始めてみませんか。きっと後に続々と続いてくれる人が出ると思います。

取り急ぎ

いぬ

***

3月22日

T&Iの皆さん

学業支援に関してですが、今朝教務部長よりご連絡があり、すでにOB・OG会に話を下ろす方向でアクションがとられているそうです。

また、Sさんからありました、教科書購入支援の話、良いですね。

図書券……は、もうないのか(歳がばれますな)。今は、「図書カード」でしたっけ。そんなものを使って、たとえ500円でも支援できれば良いですね。

いぬ

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4月1日

T&Iの皆さん

本日発売のThe Daily Yomiuri、買える人はすぐに買ってください。

そして、1面と最終面の記事を、じっくり読んでください。

我々にはただ、遠くから見守るしかできませんが、この子が伸び伸びと暮らせる社会を、何とか我々の手で作り上げていかねば、と強く思いました。

そのための勉強、そのための教育です。もちろんそのため「だけ」では、ないですけれどね。

取り急ぎ

いぬ

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振り返ってみると、学生に「落ち着け」と呼びかけることで自分自身を落ち着かせていた部分がかなりあったなと思います。

被災地の一日も早い復旧を、そして被害にあわれた方々の心が一日も早く癒えることを、心からお祈りしております。

Written by

記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

END