INTERPRETATION

第692回 通訳スクール、どう選ぶ?

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

紙アイテムが好きな私が愛用するのは12カ月がすべて見渡せる一枚カレンダー。冷蔵庫脇に貼りつけて、一日が終わると日付に赤で斜線を入れています。1年丸ごとが一目でわかるので、「もう1カ月過ぎた」「あと少しで3分の1が終わる」など視覚的に認識可能。今日は8月2週目。そろそろ秋が気になりますよね。

そこで本日は「学びの秋」に向けて、通訳スクールの選び方をテーマにいたします。

1 まずは自分の学習スタイルを把握する
スクールに入る前に考えるべきこと。それは「自分がどのような学習スタイルを好むか」です。一人で自由な時間に学びたいなら、今は動画サイトに通訳訓練法がたくさんアップされています。一方、テストや課題がある方がモチベーションにつながるなら、やはりスクールがオススメ。ペースメーカーになりますし、進級の目標も励みになります。スクールの多くがエージェントを併設していますので、通訳者として登録することにもつながりますよね。

2 体験レッスンに参加する
多くのスクールは年に2回開講しています。そろそろ体験レッスンの告知も出る頃。無料の場合が多いので、ぜひ参加してみてください。レベル別にレッスンが設けられていますので、自分に近いレベルの申し込みを。スクール側がOKしてくれるのであれば、少し背伸びして上級クラスを受けてみるのも良いでしょう。講師によって指導法も異なりますので、複数の先生のレッスンを受けてみると、相性もわかります

3 教材をチェック
スクールによっては事前にサンプル教材を公開してくれます。自分の目指す通訳ジャンルがあるか、テキストの構成やわかりやすさなど、あらかじめチェックするのも良いでしょう。

4 オンライン?通学?
コロナ禍を機に多くのスクールがオンライン講座も設けるようになりました。遠方の方にとってはありがたいですよね。ただ、ご自身がオンラインを好むのか、対面のシナジーから刺激を受けたいのか、改めて考えてみることも大事です。どちらにも長所・短所があります。自宅という空間ではない第三の場所に出かけて学ぶことは、良い切り替えにもなるのですよね。

5 講師との相性
通いやすさや費用、教材内容、デビューへの道のりなど、スクール選びには様々な要素があります。でも、私自身がかつてスクールに通っていた頃に一番重視していたのは「講師との相性」でした。多少教材が難しくても、あるいは自分にとっては関心のない分野でも、講師との波長が合うと授業は楽しく感じられます。それがヤル気につながるのですよね。体験レッスンで「この先生の授業を受けたい」と思えたら、その先生がどのクラスを教えているのかスクールに尋ねてみるのも良いでしょう。

いかがでしたか?今日は通訳スクールの選び方を取り上げてみました。せっかく受講するのですから、自分が納得のいくスクールや講師・教材を選びたいですよね。参考になれば幸いです。

(2025年8月5日)

【今週の一冊】

「ふしぎで美しい水の図鑑:水のさまざまな表情をたのしむ」武田康男著、緑書房、2022年

今回取り上げる書籍の発行元は「緑書房」。実は最近注目しています。そのきっかけとなったのが、以前本稿でご紹介した「教えて!クラゲのほんと」という一冊。

https://www.hicareer.jp/inter/hiyoko/26885.html

ニッチなテーマを取り上げ、子どもにもわかりやすく解説しているのが緑書房の特徴。これからも応援していきたい出版社です。

さて、本日ご紹介するのは水に関する一冊。著者の武田氏は千葉県立高校で教鞭をとり、南極観測隊員も経験されています。本書はオールカラーで水を様々な角度から解説しているのが特徴です。

私たちにとってあまりにも身近な水ですが、その一方で世界では温暖化により湖が枯渇したり、水不足に陥ったりしています。どのようにすれば水と共存できるのか、ページをめくりながら考えさせられました。

中でも印象的だったのが15ページの「霧雨の水滴」という写真。クモの巣に付着した水滴はまるで宝石のようにきらきらと輝いています。一方、山形県蔵王連峰の「アイスモンスター」も見ごたえ大。これは樹木に氷が付着することで、怪物のように見える名物です。タイやのミシュランマンのようにも見えます(笑)。

嬉しかったのは、先日見学した埼玉県春日部市・首都圏外郭放水路の写真が掲載されていたこと。地下神殿のような地下放水路は見る者を圧倒させます。写真だけでもその規模を感じられますが、やはり百聞は一見にしかず。本書で紹介されている場所を訪ねてみるのも楽しそうです。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。

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