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合宿

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

昨日から、T&Iの1年生と2年生を引き連れて、八王子のセミナーハウスで合宿。今回は通訳コンテストの準備も兼ねている。全員を9つのチームに分け、それぞれサブトピックを一つ割り当て、レポート1枚と単語リストの提出を指示しておいた。

「この忙しいのに……」とか「私が出るわけじゃないから、関係ない」などという声も漏れ伝わって来て、落胆したり立腹したり忙しかったのだが、結論から言うと「なかなかやるじゃん、みんな」という感じだった。

レポートも、良くまとまっているものが多い。参加者も2名の欠席を除いて、ほぼ全力出撃に近い33名。それで初日は6時間近く、今日も2時間の勉強をみっちりやり通した。

1チームは1年生2年生の混成で、それぞれ
・トピックについての説明担当
・通訳訓練時の日本語発言担当
・通訳訓練時の英語発言担当
の役割を決めさせた。

まずは土曜日の11時に集合して、セミナーハウスの方々にご挨拶。その後レポートなどの資料を印刷する。実際には前日に大学でコピーを終えたものを僕が持ち込んでいたのだが、1チームのレポートが遅れたのでその分を追加してホチキス止めした。

12時から昼食を取って、13時から会議室で勉強開始。まずは各チームの説明担当役が前に出てトピックの内容について説明を行ない、それについて皆から質問。最後に僕からの突っ込みと補足解説。全員真面目にノートを取っている。前日のサッカーの試合などで夜更かしして、居眠りをするような学生もいるかと思ったのだが、梅雨の晴れ間で美しい緑があふれる窓外の風景に癒されたのか、みんな真剣だ。

15時にチェックイン。今回選んだのは、会議室の周りが宿泊室という面白いつくりの宿舎で、荷物の移動なども兼ねて30分ほど休憩。お茶を入れている時間はなかったので、僕が買ってきたチョコレートを配って一服させる。

その後、都合により宿泊しないで帰るメンバーがいるチームがいくつかあったので、他のチームのトピックの説明を後回しにして、早退メンバーがいるチームの通訳練習を行なった。が、出場者のO君の調子が今ひとつ。どうやらかなり緊張しているらしい。彼だけではなく、他の学生にも訳出訓練をさせたので、かなり緊張感に満ちたセッションとなった。

17時半から夕食。昼食を食べてから動いていないので、あまり食欲もないのかと思いきや、女性陣も結構な人数がお代わりをしていた。若さですなあ。ここの食事は味も良くボリュームもあるので、男子学生にも女子学生にも評判が良い。

休憩をして19時半から練習再開。トピックの説明をすべて終了した。学生たちは、サッカーのオランダ戦が気になって仕方ない様子。そりゃ見たかったろうなあ。しかも、ここは研修に特化した施設なので、部屋にテレビもないし(個人的には、そういうところが気に入っているのだが)。どうするのかなあと思っていたら、みんなおもむろに携帯を取り出して、サッカー観戦を始めたので「へえ」と思った。そういう手があるのか。

夕食を終えた後、みんながロビーに設置されたアイスをチラチラ見ていたのを思い出した。頑張っていたご褒美に買ってあげることにして、代表にお金を渡す。みんなでアイスを舐めながら、ラウンジのテレビでサッカーを見たらしい。

帰宅する女子学生を、バス停まで送ってから、部屋に戻ってシャワー。セミナーハウス側が気を使ってくれて、講師用に一番新しい宿泊施設の1人部屋をあてがってくれたのだが、なんだか寂しくもある。

再び学生たちの宿泊施設兼会議室に戻って、懇親会。さっきまで真面目に勉強していた姿とは打って変わってはしゃぎまわる学生たちを見ながら、おしゃべりをしたり、ウノをしたり。

20歳になったばかりのO君は「先生、飲みましょう!」と嬉しそうに湯飲みに入ったウイスキーのロックを渡してくれた。普段はビール一本槍なのだが、敬意を表して口をつける。バカ話をしたり、大学でやりたい教育について暴走気味に話したりしているうちに、学生が2人ばかり相談に来る。いろいろ悩んでいることがあったらしく、話を聞いているうちに涙をこぼしていた。それだけ彼女たちが真剣だということだろうなあ。そんなシリアスな一幕もあったのだが、基本的に深夜まで楽しいひと時を過ごした。

開けて日曜日。6時ごろから起き出してシャワーを浴び、7時過ぎに学生たちの宿舎へ電話をかける。感心にもかなりの学生が起きていたので、部屋をざっと片づけて、床に落ちたお菓子のかけらなどは踏み潰す前に拾って捨てるように指示。O君は酒を呑みなれていないのか、二日酔いで苦しんでいるらしい。はっはっは。それも経験だ。水でも飲ませて寝かせておくように言う(それでもしっかり朝食には顔を出して、ヨーグルトを食べていた。若さですなあ)。

7時45分から朝食を取り、9時から練習再開。二日酔いで青い顔のO君だが、訳出をさせてみると、なんだか調子が良い。気分が悪くて余計な色気を出す余裕がないため、彼の悪癖である「勧進帳読み」がなりを潜め、なかなか良い訳出だった。後半になってまた余計なことを言い出したので、「あれ、酒が抜けてきた?」などと軽口を叩いて皆で笑いながら練習を続けた。

11時過ぎにすべての練習・勉強を終了。フロントに戻って支払いを済ませ、全員で記念撮影を取って解散した。帰りの車中は昨日のデイリー・ヨミウリの捕鯨問題特集を読みつつ、途中から意識がなくなる。大分ヨレヨレになって帰宅した。

夜になってみると、早速O君からT&Iの全員に向けたメールがあり、「やる気のある人はぜひ勉強会へ」といざなっていた。さらにO君と共同で勉強会を主催しているN君は、なんと合宿で出た関連用語をすべて一つにまとめたワードファイルを作成して全員に添付ファイルで送っている。全部で230個ほどあったらしい。嬉しいことをやってくれるじゃないか二人とも、とモニターの前で笑みを浮かべた。

開催までいろいろあったけれど、これもまた一歩前進、ということだ。僕も教え子に負けないように頑張らねば。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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