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メモ魔

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 2週間前のこと。某テレビ局主催のアナウンス研修に参加した。私はこれまで10年ほど放送通訳業に携わってきたが、本格的な研修は特に受けてこなかった。前の職場でOJTをしながら先輩に教えていただいたのと、外部の講師の方に1時間ほど手ほどきを受けたぐらいで、徹底的な訓練はしないまま現在に至っている。そのため、一度根本からきちんと学びたいという思いがずっと続いており、申し込むことにした。
 現役プロ向けということだが、プログラムを見ると、カメラを使ってスタジオでのトレーニングなどもある。うーん、私は放送通訳現場でマイクは使うが、カメラの前に立ったことは一度もない。多少不安な気持ちを抱きつつも、何とかなるかなと思って参加した。
 いざ会場に入ると、周りは何と若い人ばかり!入社2、3年目の現役女性アナウンサーばかりだったのである。ちょっと年齢的に場違いだなあと思いながらも、少人数クラスだったのですぐに皆とも仲良くなり、クラスは和気藹々とした雰囲気だった。
 セミナーそのものは、元アナウンサーによる徹底指導。参加者は皆、現場で経験を積んでいるので、アナウンス力など非常に高度だ。それでも先生は、ちょっとしたアクセントやイントネーションの間違いを聞き逃さず、すかさずチェックを入れる。時に厳しいコメントもあり、できるまで何度もやり直すよう言われた。私は幼少期から朗読が好きで、今の放送通訳業にも思い入れがあるため、「これぐらいで大丈夫かな?」という自分なりの目安はあった。しかし、知らず知らずのうちに自分のクセというのが染み付いていたこともわかったのである。
 たとえば数字の読み方。「9億4千万円」を「きゅうおく・よんせんまんえん」と自然に読んだつもりが、「よんせんまんえん」だけを妙に強調していたのである。感じとしては、「まいど〜、おなじみの〜、ちりがみこうか〜ん」の「ちりがみこうかん」が強調されるのと似ていたのだ。
 他にも発声法やのどの疲労感を軽減するやり方など、先生からは貴重なお話を伺うことができた。また、若い仲間からも刺激を受けることができ、私にとっては非常に有意義な二日間だった。
 ところで、久しぶりに「生徒」になって気づいたこと。それは「メモ魔」の人はデキる、ということであった。今回のセミナーでも一番優秀だった参加者は講師のコメントをすかさずノートに記入していた。自分の番のときも、改善点を講師に指摘されるとすぐに言い直してみて、講師のコメントを仰いでいたのである。
 これは私自身、通訳学校で教えていて同じことを感じる。やはり「力を伸ばしたい」という受講生は常に集中しており、こちらが「メモしてください」と言わなくても、素早くノートをとっている。「実力をつけたい」という気持ちは、メモの頻度にあらわれることを感じた二日間であった。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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