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あるハリネズミの死

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 水曜日の昼下がり、ぎらぎら照りつけるお日様の下、帰宅して、車から降りると、ガレージ前の花壇の側で、ハリネズミ(英語ではhedgehog)がじっとしていました。ハリネズミを見かけることはそんなに珍しいことではありませんが、お昼に人前でじっとしているということは、相当弱っている、ということです。外傷は見当たりませんでしたが、ぐったりと横たわっています。
 かんかん照りのお日様の下で気の毒だったので、軍手をはめて木陰に寄せて、バスタオルでくるんでやりました。水を鼻先に与えてみましたが、飲むそぶりは見せません。
 しばらくして様子を見ると、バスタオルから抜け出し、数メートル先のフェンスまで移動しています。我が家の庭に入りたいのかと思って、庭に入れ、日陰に置いてみました。そして、水と、今度は冷蔵庫から薄切りの牛肉を置いてみましたが(虫はどうやって手に入れればいいのか分からなくて・・・)、一切、ほしがりません。むしろ、このにおいからのがれようと、必死で動こうとするのです。
 ここで、ようやく気づきました。このハリネズミは私にかまってほしくないのです。野生動物として、最後の力を振り絞って、人間の介入を拒否しようとしているのです。
 夜になると、さらに移動して、すみっこの花壇の前にうずくまっていました。ただ、私がキッチンの窓からのぞくと、気配を感じるのか、ちょっとじたばたします。なので、なるべく私の姿が見えないようにしていました。
 翌朝、様子を見に行くと、まだ呼吸をしています。ただ、前日に比べて確実に呼吸の周期が遅くなっており、生きるために戦っている苦しさがこちらにまで伝わってきました。
 お昼ごろに見に行くと、最後の力を振りしぼって移動したのでしょう、花壇の中に体を隠していました。なるべくそっとしてやろうと思ったのですが、雨が降ってきたので、雨がかからないように(その方が良かったかは分かりませんが)、ピクニックシートで屋根を作りました。夕方、雨も上がり、シートがあると暑いかも、と見に行くと、息をしていませんでした。
 こうして、クリスマスイブに我が家の庭で一つの命が消えました。翌日のクリスマスの朝、夫が庭の片隅を掘り起こし、小さな遺骸を埋めました。さようなら、ハリネズミ。あなたの一生がどんなものだったのか私には分からないけれど、楽しいこともいっぱいあったことを祈ります。
 2010年もあと数日で終わろうとしています。今年1年、穏やかに過ごせたことに感謝。そして来年も平凡でいいから、楽しく、家族仲良く過ごせていけたら、と思います。
 では皆さん、どうか良いお年をお過ごしください。真夏のオークランドより

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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