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EROレポート

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 今月はなんだか、ニュージーランドのクライアントからの直接依頼の翻訳業務が多い。戸籍謄本や就業証明書、源泉徴収票などの英訳、ニュージーランド企業から依頼のビジネス文書の和訳などなど。その中に、とある学校からの「EROレポートの和訳」があった。
 EROとはEducation Review Officeの略で、ニュージーランドにあるすべての幼稚園〜高校までの学校を審査する役所のこと。このEROが発表するレポートは、学校にとって通信簿みたいなものである。
 レポートは、各学校の基本情報(地区、人数、人種の構成など)、各学校の重点項目への取り組み、国全体の課題(マオリ・パシフィック系の学生への対応、留学生への対応)への取り組み、今後の課題などで構成されている。
 EROは基本的に3年に1回、評価対象の学校を訪問し、先生やBoard of Trusteesと話し合いながら、レポートを作成していく。だから一方的に、EROが判断してレポートを作るわけではない。それでも、EROの審査官が訪問している時期は、親の私でも分かるぐらい、やっぱり先生たちはぴりぴりしている。また、もし3年に1回ではなく、1年や2年後に再びレポートが発表されている場合、その学校になんらかの問題があって、対応策をチェックする必要があった、ということになる。
 今回の依頼は、「EROレポートがとっても良かったから、ぜひ翻訳して、留学生にアピールしたい」という学校側からの依頼であった。
 翻訳していて、たしかに、この学校に対する評価は素晴らしかった。まず、校長・教頭を始めとする管理職と先生たちの連係、業務の引き継ぎ体制が非常にスムーズにいっている。このため、学校の理念に基づいた一貫した教育計画が立てられている。
 また、生徒の成績については、国平均はもちろん、この学校と同等経済レベルの学校平均よりも抜きんでている。また生徒個人を見ても、学年が進むにつれて、成績が上がっている。
 なお、経済レベルは、レポートの中にある、各学校のDecileレートという10段階の数字で分かる。Decileレートとは、EROレポートの注釈によると、「Decile 1 schools draw their students from areas of greatest socio-economic disadvantage, Decile 10 from areas of least socio-economic disadvantage.」。要するに、Decile1は貧乏なエリアで、Decile10は金持ちのエリアということ。Decileが低い学校には国からの補助金がたくさん支給され、Decileが高い学校は国からの補助金が低いかわりに親からの寄付金がたくさん入る、という仕組み。
 Decileが高い学校は教育レベルが高い、という前提があるので、レポートの中にも、「…success rates in national qualifications have continued to exceed national averages for schools of similar and higher decile ratings.」といった表現がぽんぽんと出てくる。
 じゃあDecile10の学校で高い教育を子供に受けさせてやればいい、と思うかもしれないが、お金持ちが住むエリアにある学校ということなので、このエリアの不動産は高い! 公立の学校はたとえ高校であっても入試はなく、そのエリアに住んでいれば無条件で入学できる。だから、人気校があるエリアの不動産は、この不景気をものともせず、高値を維持している(ひところのバブル的な動きはなくなっているみたいだけれど)。ニュージーランドにいると、教育と医療はほんとうにお金次第だなーと思えてくる。
 日本人ならDecile1や2の地域の学校は、いたたまれないと思う。こういった学校でまずやらなければいけないことは、子供たちの歯ブラシの指導や食事をきちんととらせることである。日本に比べて、貧富の差は明確であり、激しいと思う。ただし、Decileが高いからといって、成績レベルが高い学校とは限らない。私が知っているのはオークランドの学校だけだが、Decileが8〜10なのにものすごくレベルが低く、評判が悪い学校も数校あるから興味深い。
 ちなみにこの国では、留学生が落とす学費が重要な収入源である。日本のように「文化交流」が目的ではなく、留学生を受け入れることは重要なビジネス。先日、娘が通う公立中学校のニュースレターを読んでいたら、今年の学校予算のうち、25%は留学生からのものだった。
 留学生は学校にとっての「金づる」になっているわけだが、だからこそ、留学生に対する体制は国を挙げてかなり充実されている。もし、NZへ留学を考えている場合は、このEROレポートで学校についての情報を得ることが情報収集の第一歩といえる。EROのサイトで、自分が知りたい学校名を検索すれば、それぞれのレポートを読むことができる。
 EROレポートの英語自体はシンプルで、お役所が発行している文書にしては読みやすいと思うが、当然ながら、ニュージーランドの教育制度を理解しているという前提で書かれている。あまりにも日本と仕組みが違うので、いきなりEROレポートを読んでも、言っていることがピンと来ない、という可能性がある。次回はこの制度について、ちょっと説明してみようかと思う。

Written by

記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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