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A lover’s quarrel: The original, the translator, and the lose-lose situation

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 久しぶりに、オークランド大学のキャンパスに行ってきました(2009年に1年間翻訳コースに通っていました)。3月17日に開催された、上記のタイトルの講演会を聴講するためです。

 講師のCharles Shiro Inouye氏は日系人で、泉鏡花の英訳で世界的に有名だそうです。講義の中で、アメリカのファームで生まれ育った、とおっしゃっていました。現在は、アメリカのTufts Universityで教鞭をとられています。英語の講義だったので、日本語をどのように話されるのかは分かりませんでしたが、講義中に日本語の単語を発音された時の感じでは、日本語もネイティブスピーカーなのかな、という印象でした(ちなみに私の周囲では、たとえ両親が日本人でも、日本語教育を重視していない親御さんの場合、お子さんの第一言語は英語になって、日本語がぎこちないことが多いです)。

 講義のテーマは、原文と翻訳の狭間で苦しみ、もがく翻訳者が何を心がけ、目指しているか。印象に残ったキーワードをご紹介します。

–  How to become an award-winning translator?
ステージ1:読む
ステージ2:ドラフトを作成する
ステージ3:テキストをnaturalizeする
ステージ4:原文と突合せをする
ステージ5:修正・校正をする

これは、泉鏡花の小説を訳したほどの第一人者の翻訳者でも、工程としては私と同じだなあ(順序は違う)と、なんだか親近感を持ってしまいました。

– The problem: Not what you don’t know, but what you know
思い込み、決め込みがだめ。「Don’t trust yourself anymore」とおっしゃっていました。

確かに私も、この熟語はこの意味、と決めてかかっていると、まったく違うことを言っていた、ということは、何度も経験しています。とにかく、少しでも違和感(翻訳者の本能?)を感じたら、どんなに簡単に思える単語でも辞書なり、ネットなりで調べること。さらに、身近な単語ほど、それぞれの国や文化によって異なる意味を持っていることが多いので、要注意だと感じています。

 ということで、翻訳者として、いかにして原文の意味をきちんと伝えていくかの努力、苦労、心がけていることについて、ご自分の体験談を織り交ぜて、分かりやすく、ユーモアを交えながら、美しいイメージを織り込んだプレゼンテーションだったので、興味深く拝聴しました。

 1時間という短い時間でしたが、5年ぶりに大学のキャンパスに赴き、講義を受けて、当時のクラスメイトにも会えて、いい刺激になりました。

ついでに、オークランド大学のキャンパスの様子をちょっとご紹介。

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今回の講義は、Business School(日本でいう経済・経営学部)の立派なビルで開催されました。

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お金持ちのスポンサーがいっぱいのBusiness Schoolと対照的なビルは、我が学び舎のFaculty of Arts(文学部)。いつ見ても、なんだか中華風の不思議な雰囲気。

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でも、古びたこんな建物は、クラシックで素敵な雰囲気を漂わせています(木漏れ日でちょっと分かりにくいですが)。

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Symonds Streetという通りをはさんで、両側に大学関係の建物がずらりと並んでいます。
この交差点は、行きかう大学生でいつもにぎわっています。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

END