BLOG&NEWS

徒然に医療関連

トナカイ

通訳・翻訳者リレーブログ

先週末まで「暑い!」という感じだったヘルシンキ、週明けからは気温もすっかり落ち着き、最近は朝夕20度をきっています。
そして、ちょっとここのところフィンランド礼賛ぎみの投稿だったのですが、それに輪をかけるかのように(?)この月曜日(16日)に発売されたニューズウィーク国際版の特集「The Best Country in the World Is…」でフィンランドが総合第1位となり、国内でもメジャーなメディアで報道されて話題になりました。
このランクは教育、健康、生活の質、経済的ダイナミズム、政治的環境という5つの項目から構成されているもので、ニューズウィークのウェブサイトでは紙面より細かく、インタラクティブに各国の状況が比較できます。
http://www.newsweek.com/2010/08/15/interactive-infographic-of-the-worlds-best-countries.html

ランクづけで一喜一憂するのは危険なことではありますが、フィンランド人自身は、意外な高ランクにおおむね喜んでいる模様。筆者の周囲では「ニューズウィークが書くんだから、これって結構オフィシャルな評価だよね?」「こういうところで取り上げてもらわなきゃ、私たちなんて小国だし〜。ちょっと誇りに思ってもいいよね?」「へ〜、どこが?」という声が聞こえてきています。

そして、リンク先で確認していただけるように、フィンランドが全項目で1位だったわけでもありません(教育はやはり1位でしたが・・・)。ちなみに、健康部門では日本が第1位(フィンランドは17位)。国内ではいろいろ課題もあるのでしょうが、海外に住む者からすれば日本は確かに食事が健康的だし、医療の面でも、技術的に優れているだけでなくアクセスがよく、誰でも比較的気軽に病院を訪れ、簡単に診察を受けられるシステムはすばらしいと思います。そして、医療関係者の方も人命第一という姿勢で親身になってくださることが多いのもありがたいことだと思います。

詳しい説明は省きますが、フィンランドでは、日本ほど気軽にはお医者さんにかかることができません。近年、医療福祉の世界では「予防的」、つまり、初めから医者にかかるリスクを軽減する健康的な生活づくりに焦点が当たっているのですが、実際に医者の治療を受けなければならなくなった時の対応はといえば・・・
高い料金を払って私立のクリニックに行けば診察は早いですが、それでは経済的には気軽な話ではなくなってしまいます。公立の医療機関では医者のストライキ(!)もありますし、大人の場合、医者に見てもらうのに長い列を作らなければなりません(子供やお年寄りは比較的早く見てもらえます)。また、公立の医療機関にかかりたければ、患者のコミュニケーションスキル、自分の症状に関する図々しいくらいのプレゼン能力はとても重要です。日本人的に謙遜していては、門前払いされてしまうことも・・・筆者にも、それで記事が一本書けるくらい、幾多の苦い経験があります・・・

さらに、これはフィンランドで暮らすにあたって不安に思うことの一つでもありますが、何か「一刻も早く手当てしなければ手遅れになる」ような緊急事態になったときに、おそらくフィンランドでは、日本よりも助からない確率が高いのではないか。これは、腕が悪いということではなく、とにかく自分たちの都合優先で対応が遅いというのが理由です。自分の健康は自分で守らないと・・・とこちらに来て切に思うようになりました。

ニューズウィークから話がそれてしまいましたが、今回本当に書きたかったことは、今週させていただいた医療通訳のことです。これは、日本からわざわざ手術を受けに来る方がいるというかなり特殊な神経関連の外科手術に伴うものでした。
執刀(内視鏡手術なので『執刀』とは言わないかもしれません)するのは65歳の外科医で「この先あと何年手術ができるかわからないから、日本の人たちにこの手術のことを宣伝してほしい」といった要望まで出てきました。ただ、通翻訳者の守秘義務の立場と倫理上、たとえドクターがいいと言ったからといって、実際の情報開示には慎重にならざるを得ません。とりあえず「先生、ご自分のウェブサイトに日本語のページを作ればいいのでは?」と持ちかけてみました。

何だか今回は取りとめのない記事になってしまいました。
申し訳ありません。よい週末を!

Written by

記事を書いた人

トナカイ

フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。

END