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人との縁に感謝する

パンの笛

通訳・翻訳者リレーブログ

 以前に、友人のつてで依頼されて、自主制作映画の字幕の翻訳を請け負ったことがありました。字幕翻訳というのはとても人気の高いジャンルなので、未経験の私に声をかけていただけたのは本当に幸運なことだったと思います。それから約一年たった現在、アメリカ在住の監督さんが来日されています。依頼をいただいた当時は国をまたいでいたため、専ら電話やメールでやり取りをしていましたが、この絶好の機会を逃すまじ、と直接お会いすることができました。翻訳の大きな魅力の一つに、まったく異なる業界の人たちと密にやり取りをして、深く入り込む機会に恵まれる、というものが挙げられます。かくいう私も映画作りというジャンルはまったくの未知の世界でしたが、この監督さんが穏やかに、でもはっきりと自分の制作にかける意気込みや、作品に込めた思いを語るのを聞いていたら、あっという間にそのディープな世界に引き込まれて、つい魅了されてしまいました。そして、最初はちょっとしたご縁で紹介していただいたこの仕事が、どんどん花開いて、また次の新たな仕事へとつながってきているのです。本当に、仕事で大事なのは、第一に地道な努力、第二に仕事に対する誠意、そして第三に周囲の人々を大事にし、もたらされる縁に感謝の念を忘れない、ということなのではないかと改めて思わされます。あとはそれぞれの仕事のタイミングが良いことを祈るだけです。多少の無理をすれば請けられる場合も結構あるにはあるのですが、そうしていい結果が出ることはあまりありません。最近になってようやく、自分の実力の程を知って、どうしても無理だとわかっている場合にはご依頼を断る、という勇気と、現実に対する認識を得られるようになりました。…それにしても、普段郊外の自宅に蟄居しているのに、たまに張り切って都心に外出してご依頼主に会ったりすると、慣れない都心の人ごみにすっかりノックアウトされてしまい、その夜はぐったりとしてしまいます。そこで自宅に安心を求めるのが正しいのかどうか、迷うところもありますが、先日フリーランスの先輩から、「最初の10年くらいまでは在宅稼業も快適に感じられるけど、またそれ以降は刺激が足りなくなって、外に出たくなるよ」と言われたのです。私はと言えば、まだ在宅稼業2年目の入り口に立ったばかり。10年という期間を満了するにはまだまだ先は長そうです。もっとも、最近の時間の経過の感覚の速さから行けば、後8年ちょっとなんてあっという間でしょうか。周囲の皆様、在宅稼業10年目に差し掛かったときの私の様子を、どうぞご期待くださいませ。

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記事を書いた人

パンの笛

幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。

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