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さようなら、地元の本屋さん

パンの笛

通訳・翻訳者リレーブログ

 本日、久しぶりに最寄りの駅のごひいきの本屋さんの前を通ったら、何と本日限りで閉店になっていました。これには本屋さん好きの私は大ショック! 最寄りの駅には駅の手前側と向こう側とに本屋さんがあり、今回閉店に至った手前側はいかにも個人経営の本屋さんで、向こう側は鉄道会社の系列の比較的大きな本屋さんです。品揃えは圧倒的に駅の向こう側の方が良く、買い物の際に鉄道会社系列で統一されたポイントカードも使えるため、お客さんはあちらに流れていたのかもしれません。その上、確かに最近は手前側の本屋さんは営業時間を夜の12時までとするなど、傍目にも「普通の時間に閉店していたのでは採算が合わないのかしら」と思わせる雰囲気もありました。でも、かくいう私も、飲みに行った帰りに本屋さんが開いていたりすると、ついついふらふらと吸い込まれるように入っていって、普段だったら買わないような本まで椀飯振舞で買ってしまったりするのも事実です。だからこそ、営業時間を延長させた分売上が上がってるといいなと思っていたのですが…。その努力には追いつかなかった、ということでしょうか。
 本の小売業界は、Amazonに代表されるネット通販業者が台頭するようになってから随分と趨勢が大きく変わった、と先日読んだ本にも書かれており、その感覚は客観的に見てもわかるような気がします。私自身も、本屋さんが好きと言いながらも、必要な本を早く、確実に入手できる魅力に惹かれてAmazonのかなりのヘビーユーザーになってしまいました。ただ、どの本を買いたいのかがはっきりしている場合にはネット通販は有効ですが、「最近はどんな本が出てるのかしら」と漠然と本が見たいときには使い勝手が悪いものです。中には本の中身の一部を見せるサービスを行っているサイトもありますが、どうもピンと来ません。やはり、本の装丁や、帯に書かれたうたい文句、本の厚さ、文字の雰囲気、そしてざっと内容を見ることで初めて「よし、買おう」と思えるものです。その点、今回閉店してしまった駅の手前側の本屋さんは、個人経営ながらも流行の本はいち早く入手して平積みにし、それでもちょっと奥に行くと流行モノ以外の新書なども比較的豊富に取り揃えていたりして、「ぶらっと寄って一冊・二冊買って帰る」にはうってつけの条件だったため、それだけに今回の閉店が残念でなりません。閉まったシャッターには、お知らせの紙が一枚貼ってあり、そこにはこう書かれていました。『長らく地元の文化発信の場所として営業してまいりましたが、諸般の事情により閉店することになりました。長年のご愛顧ありがとうございました。』書店経営者の情熱と長年の経験が、ビッグビジネスの影で苦心の末に消えてゆくのは、いたたまれない気持ちです。さらに今回苦々しく思ったのは、その本屋さんの隣に新しく牛丼チェーン店が建設されていること。我が家の近辺のような郊外地域はどんどん合理化の波に飲み込まれて、個性ある魅力的なお店が淘汰されつつあります。せめて愛着のあるお店には足しげく通って、ニーズがあることを訴えなくては!と考えさせられる今日の出来事でした。

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記事を書いた人

パンの笛

幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。

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