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色合い2

仙人

通訳・翻訳者リレーブログ

前回の続きです。さて、髪よりやっかいなのが瞳の色。最近はやりなのか、grayと呼ばれる色によくあたるのですが、日本語で瞳が「灰色」とかって、白内障でも患っているのか、はたまたアルコールなどで濁っているのか、みたいな感じになりませんか? grayといわれる瞳の色って、私には限りなく薄い色の水色にしか思えません。
かなり前からよく話していたのに、ただ青っぽい色の瞳という認識しかない知り合いがいたのですが、あるときバーベキューがあって、戸外でとうもろこしを食べながら、その色のあまりに澄みきった美しさに、何だか吸い寄せられるように見入ってしまったことがありました。すごく失礼だったかしらと、「私の故郷の空の色に似ているのでみとれちゃった」と、とっさに取り繕うと、「そうなんだー。晴れあがったりしないところなのね。grayな天気が続くのね」と返事されました。それで、え? この色はgrayと呼ぶのか? と思ったのです。ものすごく薄い色合いで、モノトーンにしか見えない色、そういうのをgrayと呼ぶようです。私は「薄い水色」と訳すことが多いです。
「黒目」のところが、「黒」じゃないのも困ります。虹彩だけではなくて、瞳の中のいろんな部分がすべて異なる色で、grayの瞳に茶色い虹彩、その虹彩が光を浴びて黄色に輝き、それを縁取る線がsilverって……。
gun-metal blueというのも悩みました。なんとなくわかる気もするけど……「銃身のような冷たい金属の光を帯びた深い紺」。長い! でも本当は茶色が混じっている感じも出したい。初出だけはこれで、ルビをふって、あとはガンメタル・ブルーにするつもりが、銃を撃つタイミングとか、「冷たい金属の光」と関連する内容が出てきて、しかたなく、ずっとこの長い言葉を使ってしまいました。
自分の「色」にこだわらなくてすむのはやっぱり楽ですよね。

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記事を書いた人

仙人

大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」

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