INTERPRETATION

Vol.27 ベナッシ 友子さん「環境とチャンスは自分で作るもの」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
ベナッシ 友子さん Yuko Benassi
共立女子大学家政学部被服学科卒業。ISTITUTO CARLO SECOLIミラノ校にて服飾技術を勉強し、卒業後帰国。イタリア服飾メーカーにてインハウス通訳・翻訳経験を積む。ご結婚されドイツに移住され、現在もフリーランス通訳者として国内外にてご活躍中。

Q.語学との出会いはいつですか?
私は昔からアメリカのドラマが好きで、父の影響で洋画もよく見ていました。また父の友人で航海士の方がいて、その方からアメリカナイズされたお土産を頂いたりした事もあり、生まれも育ちも日本ですが幼い頃から常にアメリカ/外国への憧れがありました。英語を習い始めた中学校の頃から英会話学校に通わせてもらったり、スピーチコンテストに出場したり。またコンテストで賞をもらった時にはますます力が入って(笑)その頃から英語が大好きでした。
そのまま勢いで高校も英語科に入りました。
pro-3-100511.jpg

Q.ではイタリアとの出会いはいつですか?
うちは実家が昔から服飾業を営んでいまして、自然と私も服飾の道にいくものだと思っていました。それで大学からは服飾の道に進みました。ただ、やっぱり英語の勉強もしたかったので、当時からその業界では有名だったイギリスの服飾学校に行きたいな〜と考えるようになりました。そのためにはまず、一旦社会経験を積もうと思い卸売会社に入社しました。その会社で初めてイタリアに出会いました。ネクタイなど、イタリアの生地を扱っていて、バイヤーの方がアシスタントとしてよく展示会に連れて行ってくれたんです。その頃からイタリアの服飾文化などに興味を持ち始めました。

丁度同時期に友達がイタリア語を習い始めるからと誘われ、一緒に語学学校の説明会にいき、あくまで趣味としてイタリア語を習い始めました。その学校でイタリア人の方からファッションに興味があるなら、イタリアにも良い服飾学校があると教えてくれたんです。イタリアには大好きなデザーナーの方々がたくさんいましたし、自分の興味と条件がうまく重なり、イギリスではなくイタリアの学校に行く事にしました。

3年半くらいイタリアで暮らしまして、最後の方は仕事をしながら学校に通っていました。あくまで自分の生活の主は大好きなデザイン・服飾でしたが、イタリア語を使いながらの生活をして行きたいとは考えていました。

Q なぜ通訳者を目指されたんですか?
実は初めて通訳経験をしたのがイタリアにいた時で、私の通っていた学校の日本の姉妹校から先生方が一カ月に及ぶ講義を受講する研修に来られた際、校長先生に講義通訳を頼まれたんです。私は実際に学校で服飾の勉強をしていたので専門用語にも慣れていて、どうにか通訳ができましたが、ただイタリア語を話すのとは違い、こんなに疲れるものなんだ〜と思いました。凄く頭も使うし、外国語もさることながら、高度な日本語力が問われる仕事なんだと実感しました。ただ、視察に来た講師の方々も凄く暖かく迎えてくれて、とても楽しくいい経験になりました。それがきっかけで通訳者を目指し始めたんです。

帰国後、すぐに(財)日伊協会の通訳コースを受験し通い始め、経験を積むためにインハウス通訳・翻訳者として仕事を始めました。幸いにも大好きな服飾分野の会社でしたので、そのなかでFAX・メール・電話でのやり取りなど本格的にイタリア語を使い、また勉強してきた専門用語なども大いに活かせて、すごく充実した経験を積むことができました。
pro-2-100511.jpg

Q.通訳の魅力はなんですか?
普通の仕事ではなかなか見ることのできない世界を見る事ができるのが魅力ですね。大好きなブランドの工業視察に行って、職人さんが作業している場面を見せていただいたり、通訳をしてなかったら出会えなかった人たちに出会えるのもまた、大きな魅力です。

ただ、当たり前の事ですが、イタリア人と日本人では言語だけでなくメンタリティーも全く違うので、そこをくみ取った上で言葉を訳さないといけません。また、自分の得意な服飾業界だけ!と絞るわけにはいかないので、案件ごとに事前資料や情報をもらい、それを基に幅広く勉強しるのは大変ですけど(笑)。同じ仕事は二度とないので、常に勉強してそれが一つづつ蓄積され自分の力になっていくのでとても遣り甲斐のある仕事です。

Q.今でも記憶に残る失敗談はありますか?
大きな失敗はお陰様でありませんが、小さい失敗はしょっちゅうですね。
一度、ミラノで研修の通訳をした際、スピーカーの方々の資料は事前に頂き幅広く勉強していたので問題なく(我ながら上手くいったな)なんて思っていたんですが(笑)、一名スピーカーが遅刻して急遽マーケティングの方が講演されることとなったんです。原稿もないし打合せの時間もなかったので本当にひ汗をかきながらの通訳でした。終わった後は、もっとかみ砕いた言い方があったな〜とか、もっと違う言い回しがあったな〜と夢に見るくらい後悔しましたね。自分的に納得のいかない、クオリティーの低い通訳になったので今でも思い出すと悔しいですね。いつどんな状況になっても対応できるように、もっと幅広く勉強する必要があると、つくづく実感しました。
pro-5-100511.jpg

Q.ご趣味は何ですか?
昔から何かを作る事が好きで、今は趣味でバック作りの勉強をしています。ミシンを買ってバックを作ってはプレゼントしたり、コンテストに出したりしています。家族や知り合いなど、手作りのバックをプレゼントするととても喜ばれるんです。ただ、ハンマーを使ったり、ミシンを使うので、ドイツの家で作っていると騒音で近所迷惑になり、いつクレームが出るか分からないのでハラハラしながら作業をしていますが・・(笑)。

Q.将来の目標は何ですか?
今ドイツに住んでいる事もあり、ドイツ国内での伊⇔日通訳の需要は少ないんです。日本国内でのお仕事のご依頼があっても帰国日と合わず、お断りせざるを得ない状況なので、お受け出来るお仕事が限られてしまいます。そのため、機会の幅を広げる為に、今後はイタリア語翻訳も視野に入れて行こうと考えています。また最近は、イタリア語だけでなく伊⇔英通訳を求められることも多くなったので、毎日通信講座で英語通訳の勉強をしています。来月からは隣国のルクセンブルグでビジネス英語講座に通う予定です。はやり自分の英語力に自信がないとお仕事としては勿論お受けできないので、将来的には日⇔伊⇔英通訳として仕事ができるようになりたいと思い勉強を始めたばかりです。
pro-4-100511.jpg

Q.通訳を目指されている方へのアドバイスをお願いします。
私もまだ勉強中ですので、アドバイスできる立場ではありませんが、私は家で暇さえあれはニュースをシャドーイングするようにしていました。また、日本語の本を沢山読んでいると、自然といい文章、訳がすらっと出てきたりするんですね。ですので、日本語力を鍛える為に多くの本を読んで、言い回し、言葉などこつこつストックするようにしています。

今インターネットでイタリア語の国営放送も見れますし、世界中どこにいても勉強できる時代ですからね。実際にイタリアに留学経験のないイタリア語通訳者にもお会いした事があります。イタリアにいなくても、本当に勉強しようと思えば、どれだけでも勉強できる環境は自分で作れるんです。

編集者後記:
とっても気さくで明るくて、素敵な方でした。アメリカへの興味から始まり語学が好きになり、服飾から始まりイタリアの文化に興味を持ち、そしてそれがうまく組み合わさりイタリア語通訳者となり大好きな服飾分野でもご活躍されている。(そして旦那さまとドイツで生活)本当にうっとりする様な素敵なお話を聞くことが出来ました。何でも一所懸命に頑張れば結果が出て、そしてそれがうまく結びついたりするんだな〜と思いました。貴重なお時間・お話を本当に有難うございました。

Written by

記事を書いた人

ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

END