INTERPRETATION

Football Scholars Forum

木内 裕也

Written from the mitten

 ミシガン州立大学の友人と一緒に、昨年末にFootball Scholars Forumという組織を立ち上げました(インターネットのサイトも立ち上げました。http://scholars.footy-forum.net/)。これは大学院生や教職員でサッカー好きの人が集まり、ブッククラブのような形式で月に1度集まるものです。毎月「今月の本」を指定し(もちろんサッカーに関する学術書です)、それを集会までに読みます。筆者や世界中でリサーチをしている研究仲間もインターネット上の会議システムで結んで、90分(サッカーの1試合の長さ)に渡ってディスカッションを行います。1月に第1回を行い、5月の第5回の会議まで、無事に終了しました。

 第1回目は、ロシアのサッカー事情を社会情勢と結びつけた本がテーマでした。それ以降、南米に関する本、ヨーロッパに関する本などを読み、5月にはFSFのメンバーであるPeter Alegiという歴史学者の最新書籍を読みました。これはアフリカのサッカーに関する本で、丁度1週間ちょっとに迫ったワールドカップに合う内容でした。African Soccerscapesという本で、Ohio University Pressが出版しました。

 AdobeやSkypeのオンライン会議システムを使うことで、Peterはアフリカで研究を継続中でしたし、他のメンバーはカナダにいたりしましたが、問題なくFSFの会議を行うことが出来ました。1度は全員がオンラインで会議に参加し、会議室を利用せずにディスカッションを行いました。

 非常に興味深いのは、立ち上げメンバーの5名の全員が外国人(イタリア人、イギリス人、ロシア人、メキシコ人、そして私)で、今では10数名のメンバーがいますが、アメリカ人は2名か3名しかいないことです。2022年のワールドカップをアメリカで開催しようという動きもあるのですが、1994年のW杯後も相変わらずサッカー人気は高まりません。ユース年代のサッカー人口は非常に多いのですが、どうしても他のスポーツに負けてしまう現状が、FSFに参加している人を見ても分かります。

 もうすぐワールドカップが始まります。FSFのメンバーは大学が夏休みのために自分たちの研究でキャンパスにいないことが多いですが、ミシガンにいる仲間だけでも、観戦の予定を立てています。アメリカでは午前7時にスタートする試合もあるので、「仕事を終えてからバーに繰り出してサッカー観戦」というわけには行きませんが、4年に1度の楽しい1ヶ月になりそうです。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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