第332回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート75
第330回に引き続き、医師のYさんの進捗をレポートしていきましょう。
翻訳書の出版のために、自著の出版を目指すことにしたYさん。ZOOMでのフィードバックを受けて、企画書を修正しました。章構成を変更するだけでなく、ウクライナやガザ、現代アメリカの問題を中心にした内容に大幅に変更したのです。読者の関心に応える方向に舵を切ったと言えます。
全体は4章の構成で、各章は6節から構成されています。Yさんはすべての章の第1節をすでに執筆していました。A4で16ページ分ですので、ある程度読みごたえのある分量のサンプル原稿です。
実際に拝読してみると、これがとても読みやすく、面白いのです。Yさんは、「一見難しそうな問題も、こういうふうに考えたらわかるよ」と図解を交えて解説しているのですが、読み進めていくと頭の中がきれいに整理されていく感覚があります。これなら一読者としても先を読みたいと思いますし、一般の読者にも受け容れられるのではないでしょうか。
Yさんはきっと、こういう文章を書くのが向いていらっしゃるのだと思います。翻訳書として挑戦しているのは小説でジャンルが違うため、その試訳では見えにくかった文章力が、自著のサンプル原稿ではしっかり発揮されているように感じました。本業の傍ら、硬派なジャンルの本を定期的に書いていかれるといいのでは、と。
企画書とサンプル原稿への細かい修正点はありましたが、大きく手を入れなければいけない部分はありませんでした。ひとつ気になったのは、どの程度Yさんの専門を生かした形にするかということですが、この点については編集者さんとご相談しながら練り上げていけるのではないかと考えました。フィードバックをお伝えし、修正後すぐに編集者さんにお送りするようにお伝えしました。
早速Yさんがお送りすると、編集者さんからお返事がありました。提案へのお礼と、これから目を通す旨のご連絡でした。企画自体はとても興味深く、ご自身も読んでみたいテーマとのことでした。
こうやってすぐにお返事がいただけるのも、Yさんがていねいに編集者さんとの関係性を築いてきたからこそでしょう。留学後も、折に触れて、企画のリマインドを兼ねてご自身の近況報告を続けてこられたのです。
編集者さんが懸念点として挙げていたのは、やはりYさんの肩書でした。ウクライナ、ガザといった話になると、Yさんの専門とは離れてしまうからです。どうやってYさんの専門分野と擦り合わせて、著者として納得感のある立ち位置を提示していくかという問題になるのでしょう。だけどこの点についてはきっと擦り合わせていけるでしょうし、まずはいい感触を得られたのではと思います。
また追ってレポートしていきますね!
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