INTERPRETATION

学校で学ぶ3つのメリット

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 先日、メイクの体験セミナーに参加してきました。普段まとまった時間がなかなかとれないので、1回完結の有料講座です。

 最近つくづく思うのは、これからの時代、どのような職業であっても「商品価値としての自分」を高めることが大切になるという点です。つまり、自分の本業である部分を伸ばすのはもちろんのこと、総合的な力を上げる必要があると思うのです。このため私自身、語学力に加えてどうすればトータルな力をつけられるか試行錯誤しており、メイク講座もその一環として参加しました。

 では、なぜ商品価値を高めるべきなのでしょうか?それには世の中の仕組みを見る必要があります。たとえば通訳業の場合、エージェントとクライアントがあり、エージェントは自らの商品である通訳者を提供しています。そう考えると、通訳者の商品価値が高ければ高いほど、顧客にとっては費用対効果が出ることになり、企業側にとっても利益につながるというわけです。

 今回、そのような観点からセミナーに参加してみたところ、学校で学ぶことによる3つのメリットを感じました。

 まず一つ目は、講師の実演が見られること。今回はメイクの前に洗顔法の基礎を学んだのですが、講師が実際に顔を洗うプロセスを見せてくださったことにより、正しい洗い方が実によくわかりました。講師の手の動き、洗う順序、洗顔オイルの量など、本で読むよりも目の前で見てみた方がすぐに理解できたのです。また、私たち受講生も実際にやってみたのですが、その際に講師が一人一人の洗顔法をチェックしてくれたおかげで、自分の欠点や改善点などを具体的に知ることができました。

 2点目の長所は、仲間の存在です。隣に座った人と一緒にメイク方法について話し合えましたし、講師が別の受講生に述べるアドバイスなども聞くことができ、非常に参考になりました。マンツーマンだと自分一人への助言で終わってしまいますが、他の人へのアドバイスから学べることもたくさんあったのです。

 学校で学ぶメリットの3つ目。それは「やる気が出ること」です。人間というのはお金を払うと、元をとらなければという気持ちになります。するとできる限りのことを吸収すべく、集中するようになるのです。もしこれが無料のインターネットセミナーであれば、聞き流してしまったり、あるいは見るだけで満足して終わったりすることもあるでしょう。一方、実際に受講料を払い、学校まで出向くということは、自分の資金・時間・体力の提供を意味します。それが集中力を生み出す源となり、モチベーションを抱かせるきっかけとなるのです。

 これは通訳学校に関しても同じです。もちろん、資金的な事情やスケジュールの都合などで通うことが難しい方もいらっしゃるでしょう。でも通学のメリットは独学のそれを上回ると私は思います。長期的なコミットメントが無理であれば、単発講座を探すなど、ぜひ学校へ行くことをお勧めします。

(2008年5月12日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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