INTERPRETATION

すべては道具をそろえてから

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 忙しい日々が続いていると、人間というのは何か非日常的なものを求めるのでしょうね。私の場合、部屋の模様替え、家具の買い替え、日ごろは買い控えていたお惣菜を購入するなど、色々なことを日常生活に取り入れてみました。そうしたことをやってみるとかなりの気分転換になります。

 その一環としてチャレンジしたのが料理教室の参加。普段は自分でレシピを集めて献立を決めて作っているので、料理教室にわざわざお金を払っていかなくても、という気持ちがありました。けれどもなぜか突然「参加してみよう!」と思い立ったのです。幸い自宅の近くに全国チェーンのオシャレなクッキングスクールがあり、早速ネットで申し込んでみました。「初参加者は500円」というお得なコースです。

 レッスンはブルーベリーチーズケーキを2時間で作るというもの。参加前は「ホントに時間内に全部できるのかな?」と半信半疑でした。日ごろケーキは自分でも作っており、材料をそろえたり調理したりしているとなんだかんだで結構時間がかかっているからです。けれども実際に参加してみたところ、私にとって目からうろこでした。

 そのポイントとは「材料を全部そろえておく」ということ。言われてみればシンプルなことですが、実は大切なことです。今回のレッスンでは、スタッフの方にキッチンに案内されるや、目の前にはすべての材料や調理道具がそろっていました。しかも材料には使う順番に番号がシールで貼られていたのです。

 早速レッスン開始。担当講師が材料の順番に的確な指示を与えてくださいます。あとは指示通り混ぜるだけ。実にスムーズです。写真で見るレシピはパティシエが作るような本格スイーツですが、実際にやってみるとあっけないほど簡単にできました。しかも所要時間は2時間どころか、1時間半で完成です。

 必要なものをそろえておく。実はこれこそが物事をスムーズに進めてくれるのですよね。これはお料理に限らず、勉強でも使えます。たとえば「通訳学校の勉強をする」のであれば、開始前に辞書や筆記用具、関連資料やスクリプト、音声再生用のPCなどをすべて使える状態にしておくのです。そして机の前に座ったら、あとは学習を進めるのみ。「あ、辞書出さなきゃ!」「この関連資料は確かこの本棚にしまったっけ?」といちいち立ったり座ったりして取りに行くのでは集中力が途切れてしまいますが、あらかじめ準備しておけばあとはひたすら意識を勉強に持っていって集中できます。

「やらなきゃいけないのはわかっているけれど、つい・・・」と先延ばしにしてしまうタイプの方。ぜひ一度「すべてをそろえてみる」ことをやってみてください。それだけでハードルはグンと下がると思います。

 (2010年6月7日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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